昼寝ネコの雑記帳

カテゴリ:創作への道( 297 )

創作短編「晩年で失い、そして得たもの」


Astor Piazzolla - Viaje de Bodas

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 男は、中堅規模の企業のオーナー経営者で、ときどき事務所内を巡回し、現場の雰囲気を確認するのが日課になっていた。20数年前に、数人規模で始めた仕事だったが、当時と比較すると社員数も100人を超えている。そんな光景を目にすることで、ある種の自信と安堵感に浸るのも目的のひとつだった。細部にわたるまで、自らが手がけ工夫を重ねてきたので、非効率な流れになっていないかを確認し、必要であれば手を貸そうという考えもあった。

 最近、途中入社した中年女性の動きに注目したが、人間関係も円滑そうだし、テキパキとした仕事ぶりに感心した。周りの人たちに向ける笑顔や表情も、好感を持てるものだった。そんなことが何度か続いたある日、彼は人事部に指示して、その女性の経歴書の写しを手にし、目を通した。さらには、面接を担当した人間に、その時の様子を聞くことにした。

 面接担当者によれば、彼女は自営業の夫を手伝い、小規模企業の経営を支えていたらしい。ところが夫に深刻な病が見つかり、短期間のうちに他界してしまったという。亡夫の技術力でなんとか成り立っていた会社だったので、すぐに存続を諦め、会社を閉鎖したと説明を受けた。子どもたちは皆、結婚して独立していたため、彼女は自分自身の生活のために、職を得たという背景が理解できた。

 経営者である彼自身には離婚歴があった。会社を創業し、なかなか思うように業績が上がらず、資金繰りにも窮していた時期に、彼の妻は耐えきれず実家に帰り、そのまま離婚となってしまった。その後、妻と二人の子どもたちとは音信不通になってしまってる。そんな経験があったせいか、彼は中途採用したその女性が、最後まで夫と共に戦線を離脱しなかったことを知り、興味を持つようになった。

 男は、それまで以上に彼女に対して注意を向けるようになり、仕事にかこつけては彼女の同僚や上司達に対し、彼女についてのあれこれを質問した。自分でも、一体何をしようとしているのか、内心では苦笑しながらだった。しかし、今では、年間売り上げも30億円を超える企業に成長したため、以前と比べると仕事一色ではなくなり、自分自身の人生についても考える視点を持つようになっているのだと自覚していた。

 医療測定器に不可欠な、独創的な商品を開発したものの、中国製の安価な類似商品にシェアを奪われ、辛酸を舐めた年月のことがつい最近のことのように思い出された。やがて、その中国製品がいくつものアメリカの特許を侵害していることが判明し、局面が一気に変化した。その結果、海外からの引き合いも増え、売り上げも急上昇することになった。積年の苦労が報われた瞬間だった。そして今は、経営者としてだけでなく、人間個人としても大きな分岐点にさしかかっていると認識していた。

 最近、離婚した元妻の代理人という弁護士から連絡があった。事業が軌道に乗ったようなので、この際、別れたままの家族との関係を修復する気はないか、子どもの養育費について話し合うことはできないか、という内容だった、弁護士によれば、別れた妻子にも相続権があるので、それを侵害するようなことはしてほしくない、など、彼にとっては決して愉快な申し出ではなかった。

   *   *   *   *   *

 社内の彼女を見ていると、身なりがいつも質素で地味であることに気づいた。その理由については、彼なりに思い巡らし想像もしていた。何度か逡巡した挙げ句、金曜日の午後になって彼は衝動的な行動に出た。彼女に仕事を中断して同行するよう求めたのだ。行き先は、銀座の著名な婦人服の店だった。

 不思議がり、躊躇する彼女に対し、彼は仕事場を華やかな雰囲気にしたいので、協力してほしい、という訳の分からない理由を述べ、結局は3着のワンピースを買い与えた。

 精算を済ませると、「仕事について確認したいことがある」という名目で、彼は銀座通りに面したビルの地下にあるフランス料理のレストランに彼女を誘った。経営者からの業務命令のように受け取った彼女は、素直に後に従った。
 
 最初は、仕事に関する話題に終始した。そのうち彼は、彼女の反応を注意深く観察しながら、少しずつ自分の個人的な話題を口にしてみた。時々、小さく頷きながら耳を傾ける彼女の寛容な表情を目にして安心感が拡がり、これからも時々、会って話をしたいと伝えた。彼女は困惑した表情を見せず、笑顔で「有難うございます」とだけ答えた。

   *   *   *   *   *

 週末のほとんどの時間を、彼は、彼女とのこれからの展開をあれこれ思い巡らせることに費やした。人生の締めくくりをどのようにすべきか、離婚した元妻や子どもたちの相続問題に、どのように対応すべきかなど、考えることは多かった。

 月曜日は、朝一番で取引先との打ち合わせがあったので、午後から出社した。部屋に入ると、デスクの上に宅配会社から届いた荷物が置かれていた。差出人の名前を確認すると、彼女からだった。何か不吉な予感を感じつつ、開封した。

 中には、先日銀座で買い与えたワンピース3着が入っていた。何が起きているのか判断がつかなかった。間に封書が入っているのが目に入ったので、開封しようとした。そのとき、ドアがノックされ、人事担当者が現れた。報告したいことがあるという。先を促すと、今朝、彼女から電話があり、体調が悪いため、念のために病院で検査を受けたという。検査の結果、厄介な病気であることが分かり、速やかに入院するよう勧められたので、急で申し訳ないが、本日付で退職させていただきたいという内容だった。すでに辞表は速達で届き保管しているという。

 報告を終えると、担当者はすぐに退室した。彼は混乱したまま、封書を開封した。A4サイズの用紙に、このように書かれていた。

 「先日は、ご親切にも高額な洋服を買い与えてくださり、改めてお礼を申し上げます。
 その後、レストランでは、これまでの人生でご苦労された、いろいろなことについてお話ししてくださり、有難うございました。お仕事だけでなく、私生活の面でも、いくつもの大きな課題を乗り越えて来られたお姿に、感銘を受けました。また、私に対して雇用関係を超えた領域までの信頼感をお持ちくださり、とても恐縮しています。経営者としての大切なお立場で、心身のご負担が大きい毎日と想像しております。

 またこの度は、いろいろなお申し出をいただき、身に余る光栄だと感じています。しかしながら、私自身の感じ方や生き方をお伝えさせていただくべき状況だと思いましたので、大変に身勝手な選択をさせていただきますことを、お許しください。

 私事で恐縮ですが、亡くなった主人と一緒に小さな会社を切り盛りしていた当時のことを思い出しています。売り上げが足りず、資金繰りに四苦八苦する毎月でした。金融機関からの支援を受けられず、知人や友人に頭を下げて金策のお願いすることを繰り返していました。そのような時でも、いつもより多少売り上げが多いと、主人は駅前のデパートの婦人服売り場を隅々まで回り、私のためにバーゲン品を探してくれました。あるとき、嬉しそうな顔で帰ってくると、ギフト用にきれいにラッピングされた包みを私に差し出しました。半額セールで、しかもタイムセールでさらに30%引きだったので買うことができたと、まるで子どものように嬉しそうに言いました。自分自身の物は何も買わず、女性は数が必要だからと言って、資金繰りが大変な時でも、何度もバーゲン品を買ってくれたのを、今でも鮮明に憶えています。

 この度の高額なワンピースは、会社の制服として買い与えてくださったのではなく、個人的なご厚意からだと受け取らせていただきました。道半ばで他界した主人が示してくれた、私に対する深い愛情を考えますと、このような形で高額なワンピースを3着も頂戴することには、正直に申し上げて大きな抵抗感を感じています。これまで、私自身に生きる力と希望を与えてくれたのは、他界してもなお主人が私のことを心配し、いつも見守ってくれていると感じているからです。不思議なことですが、いつかきっと主人とはまた会えるという強い思いも持っています。大変失礼な対応であることは重々承知していますが、私の感じていること、そして生き方をご理解いただければ、とても有難く思います。従いまして、頂戴したワンピースには一度も袖を通さず、このままお返しさせていただきます。

 これから先、社内で私を目にされることがあると、厭な思いをされると思いますので、会社に辞表をお送りしました。理由は、厄介な病気であることが発見され、早急に入院するよう勧められたから、ということにしました。

 短い期間でしたが、大変お世話になりました。今後ますます社業が発展し、ご自身も壮健でお過ごしになれますよう、心より祈念しております。

 改めて、私ごときにお示しくださったご厚意に感謝し、また、身勝手な選択を心よりお詫び申し上げます。」


 彼は大きな溜息をついた。貴重な可能性を失ったという喪失感を感じていた。しかし同時に、気高く崇高な生き方と人格が実在することを目の当たりにすることもできた。自分の心の中で、失ったものと得たものが、切なく交錯するのを感じた。

 いつもの社内見回りの時間になった。彼女が存在しない事務所を正視できるだろうかと考えた。同時に、自分自身の中にも感傷的な空間が残っているのだと、妙に懐かしく感じた。

【創作メモ】
 まずは最後までお読みくださり、お礼を申し上げる。昨日のウォーキング中に思い浮かんだイメージを、なんとかまとめることができてほっとしているところだ。久しぶりの創作だったが、改めて自分に最も合っている仕事だと思う。出来不出来はともかく、何かを感じ取っていただき、疑似体験としてくださる方が一人でもいらっっしゃれば、それで私は満足である。・・・「男の身勝手な願望の女性像だ」という女性からの反論が聞こえるようにも思う。しかし、この主人公の女性の切なる生き方は尊重していただきたい。


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by hirune-neko | 2018-08-19 22:23 | 創作への道 | Comments(0)

なんとか足先の激痛としびれは治まったようだ

The Elegance of Pachelbel - Serenade

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 ブログ読者の鶴と亀さんから、1曲の音楽を推薦していただいた。標題のパッヘルベルのセレナーデである。初めて聴く曲だったが、心を洗われる神聖な曲想だと思う。佳き作品との出会いは至福の思いである。鶴と亀さんには、改めてお礼申し上げたい。

 昨晩は、右足先に断続的な激痛が走り、久しぶりに不安な時間を過ごした。床についても、忘れた頃に激痛が襲い、思わず声を上げてしまう。なんとか眠りについたものの、足のしびれが朝になっても残っていた。

 昼食は、次男夫婦と三男家族が参加してくれて、バイキングでの会食となった。長男と長女は都合で参加できなかった。帰宅したが体調が悪く、起きているのが辛くなってしまったので、数時間仮眠した。目が覚めて、なんとしても8000歩は歩こうと決意し、外出した。なんとか激痛が治まり、しびれも改善されてほっとしている。

 歩いている最中に、あるストーリーが思い浮かんだ。書き始めると、また遅い時間までかかりそうなので、ためらいがある。そんなに長いストーリーではなく、ちょっとした心理描写である。


 ある中堅規模の企業のオーナー経営者は、ときどき事務所内を巡回し、現場の雰囲気を確認するのが習慣となっていた。最近途中入社した中年女性の仕事ぶりに感心し、その笑顔や表情に好感を持っていた。そんなことが何度か続き、彼は人事部に指示して、その女性の経歴書の写しを手にし、目を通した。

 彼女は自営業の夫を手伝い、小規模企業の経営を支えていた。ところが夫に深刻な病が見つかり、短期間のうちに故人となってしまった。亡夫の技術力でなんとか成り立っていた会社だったので、存続を諦め、会社を閉鎖した。子どもたちは皆、結婚して独立していたため、彼女は自分自身の生活のために、職を得たと記されていた。

 彼自身には離婚歴があった。会社を創業し、なかなか思うように業績が上がらず、資金繰りにも窮していた時期に、妻は耐えきれず実家に帰り、そのまま離婚となってしまった。そんな経緯があったせいか、彼は中途採用した彼女に対して興味を持つようになった。今では、年間売り上げも10億円を超える企業に成長したため、以前と比べると仕事一色ではなく、自分の人生のことも考えるようになっていた。

 彼女を見ていると、身なりはいつも質素で地味だった。ある日、彼は意を決して彼女に仕事を中断して同行するよう求めた。行き先は、銀座の著名な婦人服の店だった。

 ・・・本当は最後まで書きたいところなのだが、まだ体調が完全ではないので、調子に乗って書き続けてしまい、体調を崩すと本末転倒になってしまうと思い至った。大変申し訳ないのだが、改めて完結させるので今日はここまでとさせていただく。


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by hirune-neko | 2018-08-19 00:12 | 創作への道 | Comments(2)

食が進まず、考えが進まず、筆が進まない三重苦だった

Ksenija Sidorova: Oblivion (Stars von Morgen)

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 夏の疲れが出たのだろうと思うが、全てに停滞感がある一日だった。健康や体力に不安を感じると、連鎖的に消極性が増すのを感じる。普通なら、人生の整理を考えるような年齢になっているのに、まだ新たな挑戦をしようという気持ちが強い。無謀で非常識なのかもしれない。こんなときに一番困るのは、自分の余命年数が読めないことだ。

 しかし、視線を広く社会に転じてみると、60歳代の後半は、まだまだ現役だぞといわんばかりに、とくに政治の世界では市長選、知事選、果ては総裁選の候補者には、私と同年代の人たちが多い。ある意味では、人間として60年や70年を生きて、ようやく何かの分野でプロになれるのかもしれない。

 では、私は一体何かのプロになっているのだろうか。多少、何かの技術があったとしても、そんなものは専門家から見たら、初心者に毛の生えた程度だと思う。うむ・・・妄想のプロ?確かに、あれこれと妄想は際限なく拡がるので、普通の人よりは妄想度が高いかもしれない。写真を見ても音楽を聴いても、いつの間にかストーリーが思い浮かぶ。特定の人をじっと観察していると、その人の生い立ちや過去の人生のシーンが思い浮かぶことがある。もちろん常にではない。そんなことが常だったら、神経が保たないだろうと思う。

 その半面、とても気楽なことがある。考えてみると、執着する対象がごく僅かで、極端に少ないのではないかと思う。あれこれに惑わされたり、振り回されたりすることがとても少ないと思う。昨日の妄想ブログにも書いたが、どこぞの国の工作員が資金提供を申し出ても、名誉や地位や賞を目の前にぶら下げられても、へえ、と思うだけで微動だにしないだろうと思う。

 では、私は何かに執着しているのだろうか。改めて考えてみた。

 目に見える「物」だと、パソコンと周辺機器、通信機器、そして携帯デバイスだ。それらは、あくまでも機能性の高い便利な仕事上のツールとして、執着を持ってる。車はなんでもいいし、他に取り立ててほしいものはない。

 目に見えない「物」で執着しているのは、なんだろうか。観念的な領域になってしまうので、どうしても具体的に目に見える形で表現することはできない。「知」と名の付く物だろうか。知識、知恵、知性、知力。そんなところだろうか。

 その他、心に結びついている領域にも、ある種の執着を持っていると思う。感性、感覚、洞察力、感動、癒し、平安、信念、理念、使命感、責任感、達成感、慈悲、寛容、いたわり、人格、徳性などだろうか。これらは決して物体のように手で触ったり、実際に目で見たりすることはできない。人の発する言葉や言動、表情によって伝えることのできるものなので、受け取る側の感性や感覚に大きく依存するものだとも思う。

 人間関係にも執着はない方だろう。来る者拒まず、去る者追わず、の主義である。もちろん、私とて人間なので、合う人も合わないと感じる人もいる。しかし、基本的には人に対し、強い拒否感や嫌悪感は持たない方だと思う。周りから避けられているような人とも、不思議と親しくなることができる方だと思う。

 執着というかこだわりは、創作作品を書き続けたいという所にあるようだ。読み手にとって、物語はある種の疑似体験である。つまり、人間を表面だけで判断せず、裏面に隠れているその人の苦しみや悲しみを垣間見ることができれば、その人に対する見方が変わり、思いやりや寛大な気持ちを持つことができる。何か言葉をかけたり行動に移すことで、相手の心を開き自分自身の心にもプラスの変化を与える。

 そんなきっかけにしていただける、創作作品を書けるようになればいいなと、おそらくは一生涯にわたって執着し、こだわり続けるのではないだろうか。

 私は古今東西の文学全集を読破してはいない。その意味で、いろいろな文学作品を改めて読んでみたいと思う。今頃になって発見したのだが、Kindle本は色を反転したり、フォントを明朝体からゴシック体に変えたり、ずいぶんいろいろな機能があるようだ。視力が低下している私でも、割と速いスピードで読むことができる。まさに文明の利器である。

 日本国内に限定せず、他国の人々、他国での経験、それらを現実の社会、歴史、政治、経済、文化、市民運動、諜報活動など、立体的に描写できるよう、私自身が少しでも理解を深められるよう、脳内に蓄積していきたい。おそらくだが、パソコンに外付けのハードディスクがあるように、人間の脳と生体同期させることのできる、数テラバイト容量の有機ディスクが、近い将来に開発されるのではないだろうか。

 さらに言えば、MacOSに「創作Siri」なる機能が開発され、思い浮かぶまま、アットランダムにストーリーの概要や、登場人物のプロフィール、過去の人生などを語りかけると音声認識機能と創作機能で、あっという間に推敲の必要の無い作品を、その「創作Siri」がテキストデータ化してくれる日が訪れそうな気がしている。もちろんこの「創作Siri」は、同時並行して世界の主要言語数十カ国語に自動翻訳し。電子書籍として配信までできるようになる。そうなれば、なんて素晴らしいだろう。

 もしスティーブ・ジョブズが生きていて、私のブログ記事を自動翻訳機能で読んでくれたら、おそらく私をApple社の新規商品開発プロジェクトの、特別顧問として招聘してくれたのではないだろうか。

 ・・・おっと、このまま書き続けていると、妄想が果てしなく、際限なく拡大しそうなので、ここで止めておく。今晩は体調不良で将棋のレッスンをお休みしたが、こうしてブログ記事に夢中になっているうちに、どうやらクシャミも鼻水もすっかり治ってしまったようだ。こうして文章を書くだけでも、しつこい鼻炎が治るのだから、私の作品を読むと難病が快復したという実例が増えるのではないだろうか。

 ・・・あらら、本当にもう止めないと、とんでもない異常な妄想世界を招来しそうなので、心を鬼にして、ここまででアップさせていただく。

 冒頭の演奏は、最近知ったクセーニャ・シドロヴァで、ピアソラの曲を何曲か演奏していることが分かった。調べてはいないが、ロシア人だろうか。今日はピアソラのオブリヴィオンの演奏を選んでみた。


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by hirune-neko | 2018-08-17 00:13 | 創作への道 | Comments(2)

大富豪のビジネスマンから、巨額の資産を託されてしまった

Ksenija Sidorova: Arte Lounge 2015 IV Revelation (720p, HD)

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 タイトルだけお読みになり、私がとんでもない資産家になったなどと早合点しないでいただきたい。いつもの妄想なので、笑いながら呆れてスルーしていただきたい。

 月曜日から今日まで、夕方5時過ぎまでは事務所にいて、電話に出られるよう待機した。案の定、午前中にある産婦人科から電話があり、今日は一カ月健診日だが絵本が届かないという。送り状を確認したら11日に発送しており、着日を13日に指定していた。なんのことはない。配達営業所の担当者が、お盆休みだろうと勝手に解釈し、保留していたことが分かった。当方の責任ではないが、間に合わなかった患者さんには産婦人科が直送することになるため、送料を教えてもらい次回の請求から控除する旨を申し出た。院長に相談します、と言われたので、実際に請求が来るかどうかは分からない。

 どんな企業も団体も、人員を増やせば増やすほど、確実な対応を維持するのには、相当の管理システムとトレーニングを実施しなければ、なかなか難しいだろうと思う。

 今朝、血糖値を測ったらとんでもないことが起きてしまった。最初は数値の表示板に「Hi」という文字が表示された。えっ?測定できないほどの高血糖値なのだろうかと、不安になった。再度測り直したら、これまでに見たこともないような数字だった。20や30程度上昇するのはよくあることだが、なんと368と表示された。通常の2倍以上である。前日の夕食の内容を考えても、あり得ない。朝食後、再度測定してみたら、上がってもおかしくないのに、ほぼ同じ数値だった。

 この測定庫は、おそらく20年程度は使い続けている。寿命で誤作動しているかもしれないと考え、地元の灰吹き屋ドラッグという薬局に電話して相談した。夕方、マルイの地下にあるその薬局を訪れた。メーカーのサイトでいろいろ調べてくれたのだが手間取り、かなり時間がかかってしまった。

 ベンチに座って待っていたとき、ある情景が脳内に思い浮かんだ。私はニューヨークに滞在しており、大成功を収めた大資産家のビジネスマンの事務所にいた。彼は、私の方針をなんとか曲げさせようと、いろいろなオファーをした。彼の要求を受け入れれば、つまり私がファミリー・インテリジェンスなどという、ある意味で社会に保守的な影響を及ぼすであろう行動を止めれば、100万ドル(約1億円)を贈呈する、というのだ。私は笑顔で何も言わず、黙殺した。すると彼は間をおかずに言った。

 私の短編作品集を英語で出版し、全米最大の書店チェーンであるなバーンズ&ノーブルに全面的な販売協力させるし、ニューヨークタイムズ始め主要な新聞が好意的な書評を掲載させることもできる。さらにはCNNに、古代イスラエル生まれと自称する東洋人作家が世界デビューした、という番組を制作させよう、と申し出た。私はまた笑顔になり、そのような方法で数十万人の新たな読者を確保するより、今現在の数百人の読者を大事にしたいと述べ、彼の申し出を辞退した。

 さすがに百戦錬磨の老獪なビジネスマンである。今度はなんと、来年のノーベル文学賞に私をノミネートさせそのまま受賞させる力が、彼にはあると言ったのである。さすがに驚いたが、私はまた笑顔になって言った。「ノーベル文学賞がそのような裏工作で受賞できるものなら、私はそのような賞をいただいても、決して名誉だと思えません。貴重なお時間をいただき、お礼申し上げます。」

 私は立ち上がって握手を求め、別れを告げた。彼は鋭い視線を私に向け、本当に辞退する気なのか、オファーしたすべてを贈呈するが、それでもまだ足りないのか?と念を押してきた。私はSee you somedayと言い、そのままオフィスの出口に向かった。

 5番街に面したビルの1階に下り、出口に向かったのだが、警備員らしい屈強な男性が私の前に立ち塞がり、進むのを制止された。なんでも、もう一度オフィスに戻ってほしいという。断るわけにもいかないので、私は再度、最上階のオフィスに向かった。

 ・・・ん〜、何か段々リアルになってきて、すっかり小説っぽくなってしまった感じがするのは気のせいだろうか・・・。

 彼は、私に椅子を勧め、彼自身もデスクの反対側の椅子に身体を沈めた。デスクには、割と大きめのジュラルミン製の書類カバンが置かれてた。

 少しの間、沈黙が流れた。その後のことを克明に書き残そうとすると、とんでもなく時間がかかってしまうので、要点だけを述べたいと思う。

 彼はそのジュラルミン製の書類カバンを示し、何も言わずに受け取ってほしいと言う。決して戻しに来ないと約束してほしいとも言った。私としても、自分の考えをはっきり伝えた後なので、その上でのことならば素直に受け取ろうと思った。

 ビルの出口で待機していた彼の専用車に乗せられ、初老の男性秘書が同乗して行った先は銀行だった。入口で出迎えていたのは支配人であり、私たちは特別のエレベーターで地下3階の大金庫室まで案内された。厳重なロックを解除し、思い扉がゆっくりと開けられた。その途中で私は我が目を疑った。そこにはとんでもない量の金塊が保管されていたのだ。総量は3トンだと説明を受けた。一体、どのような意味があって私に見せているのか、訝しく思った。

 その後、最上階のマネージャーのオフィスに案内され、例のジュラルミン製の書類カバンを開けて、中を確認するよう促された。

 ・・・あらら、どうしても小説タッチになってしまう。困ったものだ。

 告げられたのは、かの大富豪のビジネスマンは、世界平和のための莫大な資産を託されているという内容だった。金塊だけでなく、預金、国債、株券などがあり、時価総額数百億ドル(数兆円)だという。さらに驚いたのは、アメリカ政府を中心に、西側の主要政府が毎年基金を拠出しており、その額は年間30億ドル(約3千億円)だという。私はすっかり驚いてしまった。

 それ以上に驚いたのは、大富豪のビジネスマンは自分の引退時期の到来を悟り、取り決めに従って自ら後継者を選定することにしたらしい。そこで私は笑い転げてしまった。私を彼の後継者として決めたというのだ。

 確かに、日本の繁栄と平和は世界に対しても好影響を及ぼすだろうと思う。しかし、ファミリー・インテリジェンスだけなら、乏しい予算でもなんとか機能させられると考えているのに、いきなり巨額な予算を与えられても、一体何をどうすれば日本や世界の平和に資することができるといのだろうか。私の能力の範囲を遙かに超えているではないか。と、おそらくは呆れ顔になって辞退しようと考える私の心中を見抜いたのか、初老の男性秘書は言った。会長との約束を忘れたのか、引き受けると約束したではないか、と言われてしまった。

 ストーリーはますます飛躍してしまう。敵側の工作や攻撃を防ぐため、専任のSPが常に同行する、一般旅客機は危険なので、今後は会長専用の自家用ジェット機を使っていただく、ホワイトハウスで大統領や国務長官と会ってもらう、CIAに行き今後のセキュリティのために必要な種々の生体認識登録をしてもらう、などなどである。

 「大変お待たせしました。最新の血糖値測定器セットと、チップ、針一箱ずつで、このお値段になります、明日の昼には入荷します。」

 灰吹き屋ドラッグの男性店員の声に、私は我に返り妄想世界から現実世界に引き戻された。やれやれの世界からの生還である。しかし、年間3千億円の予算をもらえたら、どのようなカウンターインテリジェンス機能を構築できるだろうかと、妄想世界の中で興味深く思い巡らしていたので、ある意味では未練タラタラでの、現実世界への生還である。

 ひょっとして最後までお読みになった方は、お疲れ様である。アホな妄想話にお付き合いくださり、お礼を申し上げる。私に暇な時間を与えたら、妄想は際限なく、果てしなく、どこまでも拡がってしまう。なので、ほどほどに忙しいのが身のためだと思って折る。


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by hirune-neko | 2018-08-16 00:51 | 創作への道 | Comments(0)

過去の創作作品を読み返してみた

María Callas - Puccini "Vissi d'arte" (Tosca)

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 数日前、ある団体が世界中から短編小説を公募し、コンテストをしているという情報を目にした。日本語のまま投稿してもいいといいうことだが、ファイナリスト作品は英語で審査されると書かれている。元々Kindle本による外国語での出版に興味を持っていたので、英訳してくれる人物も探してみた。

 このブログを始めてから今までに書いた短編作品をリスト化してみた。2007年からになるが、22作品だった。1年間に2作品程度ということになる。連日仕事に追われているので、そんなに量産できる訳はない。

 ついでにブログを読み返してみると、ここ数年は、しきりに創作作品だけを収録した単行本を出版したいと、繰り返し書いている。意気込みだけはあるのだなと自覚した。しかし、それにしても、少し作品数が少ないなと思った。検索に引っかからない作品があるかもしれない。

 Evernoteに一作ずつノートを作成してブログからコピーし、文字数を自動計算してタイトルの横に記載した。さらに、段落替えの規則がバラバラだったので統一した。1作品、短いのもので2千数百字、長いのだと1万字ちょっとだった。応募は一人3作品までなので、とりあえずは公募団体の主旨に合いそうな作品を5点に絞り込み、改めて読み返してみた。自画自賛になってしまうが、そんなに悪くないと思った。自分で書いた作品なのに、すっかり感動してしまった。

 作品の舞台は、どういう訳か日本は数えるほどしかなく、北米、北極圏、東欧の架空の国がほとんどだ。決して和風味ではなく、完全に国際的な枠組みで書かれているので、国際的にどの程度通用するか、試してみたいと思う。そこで、とりああえずは英語で出版してみて、反応を確認してみたいと考えている。その前哨戦で、上記の世界相手の公募コンクールに応募しようと思っている。

 国際的な出版の経験はないが、国内での出版とてそんなに楽観視はできない。一定数の固定読者が存在すれば、ある程度の販売部数は読めると思う。出してみなかれば分からないというのが、無名作家の実情である。

 およそ10年前に出版した「昼寝ネコの雑記帳」の装丁は気に入っている。しかし、その装丁家が病死してしまい、デザイン事務所も閉鎖されている。幸いに当時、企画やイラストで協力してくれた皆さんは健在なので、装丁家さえ確保すれば、あとは自分で編集製作をすることができる。その装丁家にも心当たりがあるので、あとは金銭的なリスク計算となるだろう。

 遅延案件も徐々に片付きつつあるので、改めて短編小説家としての側面を意識し、作品数のノルマを課したいと思っている。大それたことは何も考えていないが、不特定多数の読者の皆さんの心に届く、そしてできれば感動と平安を感じていたける作品を、書き続けたいと希望している。

 いずれは中編や長編作品にもトライしてみたい。興味を感じている分野は、現実世界に馴染めず、重い過去を背負った主人公が、色々な国々との関わりの中で葛藤しながら、結末を迎えるというストーリーをイメージしている。結末はできれば、平安な心象を与えて終わらせたい。なんとなくだが、知らず知らず、国際的な陰謀に巻き込まれるような、まるで情報部員もどきのストーリーの方が書きやすいと感じている。それも、あくまでも見え隠れする程度に留め、あくまでも一般人を主人公にするつもりだ・・・今はまだ、言うだけの世界である。

 今年こそは、続・昼寝ネコの雑記帳出版の、メドをつけたいと願っている。


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by hirune-neko | 2018-08-15 00:06 | 創作への道 | Comments(0)

突風に煽られ、傘の柄が折れてしまった

S'il vous plaît. A.Piazzolla. Yuri Medianik Юрий Медяник

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 少々年代物の傘ではあったが、突風が吹き、必死で傘を支えたら、ポキンと柄が折れてしまった。こんなことは初めてだった。

 冗談抜きで、最近は人の名前を思い出せないことがある。今朝はなんと、アンドリュー・マーシャルの名前を思い出すのに四苦八苦した。

 正確な来歴は忘れたが、ランド研究所に属し、米国の軍事顧問としてニクソン時代からオバマ時代まで仕え、数年前に92歳で現役引退した人物だ。確か統計学を駆使し、ソ連の崩壊を予測したと記憶している、そんなことよりも何よりも、興味を持ったのは、92歳まで現役で軍事顧問という激務をこなしたという点だ。

 同居中の義母は現在95歳で、92歳頃には屋内で転倒して骨折し、しばらく寝たきりだった。今でも、一日中ベッドの中で過ごす時間が長くなってしまっている。たまに起きると、ぬり絵か習字をする程度だ。あとは、ぼんやりとラジオを聴いている。

 アンドリュー・マーシャルの驚異的な職歴を知り、どのような健康法で心身を健常に維持したのか、いや心身だけではなく、頭脳までをも明晰な状態に維持したのかを知りたいと思った。

 私自身は早世の家系に生まれたので、自分自身も長くは生きられないだろうという、漠然とした諦観で生きてきた。現在も、だらだらと長生きすることには、意味を見出せないと思っている。読んではいないが、サルトルの作品「嘔吐」はまさに、何もせずただそこに存在するだけの老木の「生き方」に嫌悪感を覚え、嘔吐を催した・・・そのように、ただ存在するだけの老木のようになってまで、生きていたくはないと思っていた。

 しかし、最近の私はもう少し生き永らえ、ある程度まで仕事環境を創り上げるのを、見届けたいと思うようになっている。さらには、人間として60数年、妄想ネコとしては3千年以上を生きてきたが、これまでに見聞した様々な人生や人間模様をモチーフにして、短編作品を書きたいという意欲が湧いてきている。実際には、これまでに10数編は書いていると思う。

 仕事に追われる私にとっては、短編作品が時間的にはちょうど手頃である。ところが、最近はどういう訳か、長編作品を書いてみたいという意欲が生じている。

 現実社会に馴染めず、活路を求めて異国に旅立った主人公。まだ性別や年齢は具体的に設定していない。その主人公が、異国の地から日本という国を客観的に見るようになり、さらには異国の文化・習俗の中で生活して、初めて自分自身のアイデンティティを見出す・・・そして自分の使命を示現として見ることにより、積極的にその後の人生を、新たに生き直すことになる。

 ざっとそのような、孤立した人間の変異をテーマに作品を書いてみたい。そのためには、その異国の歴史や文化、とくに音楽を深く識りたい。そして何よりも、実際にその地に足を踏み入れ、街を行き交う人々の表情を観察し、空気を吸い、匂いを嗅ぎ、主人公をほぼ現実の存在のように描写できるようになりたい。

 実際に、最近の私はそのような構想を、将来に思い描いている。家族の者からは、まずは身体を鍛えなさいね、と馬鹿にされている。確かに10数時間も機内で過ごし、時差の影響を受けてもちゃんと行動できるのだろうかという不安感はある。かつて海外を頻繁に飛び回ったときの感覚で、机上の空論を描いているのではないだろうか、と思うこともある。

 だから正直なところは、アンドリュー・マーシャルに直接コンタクトして、現役状態で長生きする秘訣を教えてもらいたい、などと無謀なことを考えている。

 そんな希望があるものだから、早世の予感を視野の外に追いやり、今まで以上に貪欲に、将来構想の早期実現のため、営業活動にも力を入れたいと、心を新たにしている。

 ちょっと、仕事に対する動機が不純すぎるだろうか。いや、創作意欲のなせる業なので、大目に見ていただけるのではないだろうか。・・・そう期待している。


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by hirune-neko | 2018-08-08 23:43 | 創作への道 | Comments(0)

半世紀ぶりのコルトレーン〜テロリストの憂鬱

John Coltrane Quartet - Say It (Over and Over Again)

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 数日前、Facebook友だちから、ジョン・コルトレーンの未発表曲が発見され、アルバムになるらしいと教えてもらった。へぇ〜とは思ったが、高校を卒業してからコルトレーンはあまり聴かなくなっていたので・・・というよりは聴けなくなっていたので・・・それほど体力と気力を消耗する、まるで呪詛のような曲想なので、聴くこと自体が重荷になっており、無視していた。

 あの夜、寝る前にいつもの習慣でiPad Proを開き、音楽を聴こうとしたら、ジョン・コルトレーンの未発表曲のアルバムが、どういうわけか私へのお薦めとして表示された。iTunesではコルトレーンを一度も聴いていないのに、不思議なこともあるものだ。半世紀前、おそらくは、眉間に皺を寄せながら、忍耐強くコルトレーンの演奏を、受験勉強そっちのけで聴いていた自分の姿が、懐かしく思い起こされた。しかし、コルトレーンは、ジャズにおける最も旧い友だちなので、再会を祝して聴くことにした。

 あの夜は驚愕すべき出来事が起きたので、それを記念して、初めてこのブログでコルトレーンの演奏を紹介しようと思った。しかし、いきなり初めてコルトレーンの演奏をお聴きになると、人によっては気分が悪くなり、船酔いならぬ音楽酔いしてしまう可能性が高いので、最も穏やかで誰にでも聴きやすいバラードを選んだ。この曲はピアノトリオとの協演で、ピアノ:マッコイ・ターナー、ベース:ジミー・ギャリソン、ドラム:エルビン・ジョンズというメンバーと一緒に、コルトレーンがテナーサックスを吹いている。半世紀経っても、彼等の名前をは鮮明に憶えていた。もしかしたら、私がアルツハイマーかもしれないというのは、考えすぎだったかもしれない。

 男性ジャズボーカリストのジョニー・ハートマンとの協演アルバムで、同じく「バラード」というタイトルのアルバムにも、確かこの曲が収録されていたはずだ。懐かしい思い出だ。しかし、ソプラノサックスの演奏は、初めての方はお止めになった方がいい。軽い精神錯乱を起こしてしまう危険性があるから。(コルトレーンがこっちを睨んでいる)

 さて、やっと本題である。私の身に何が起こったかを記録したいと思う。口外しないよう厳しく口止めはされたのだが、書き残してはいけないとは言われていないので、ブログに残すことにする。お読みになった方は呆れ顔で、どうせまたいつもの妄想だろうとスルーされると思う。それでいいのだ。是非そうしていただきたい。

 詳細を記述しようとすると、朝になってしまうと思うので、概要を簡潔に書くことにする。・・・それでも少々長くなってしまうと思うが。

(口止めされた出来事〜書き止めはされていない・・・始まり)

 懐かしいコルトレーンの音色を味わううちに、私はいつしか眠りに落ちてしまったようだ。

 閉じた目にも強烈な眩しさを感じ、我に返った。目を開けると部屋中いっぱいに光が満ち溢れていた。少し目が馴れると、前の前に誰かが立っているのが分かった。何やら微かな金属音がする。その男性は銀色の奇妙なデザインの衣服で、何やら言葉を発した。まったく聞き覚えのない言語だった。怪訝そうな私の表情を察し、男はベルトのダイヤルを回した。すると英語や中国語、韓国語と思われる言語に変わり、ようやく日本語で話し始めた。おそらくは、自動翻訳機を身につけていたのだろう。少々文語調の日本語だったが、十分に理解できた。話の概要は以下の通りだ。

 「こんな深夜に突然現れて、さぞかし驚いたことと思う。私は時空を超越して往き来できる使者である。いよいよこの地球にも悪逆が満ち溢れ、終焉が近づいている。宇宙全体を管理している宇宙評議会で、これから重要な局面にさしかかる地球にとって、献身的に奉仕してくれる人材の人選に当たっていたが、慎重に協議した結果、大和の、いや日本の昼寝ネコが最適だという結論になった。それで、私が送られてきた次第だ。いや、突然のことであり、しかも常軌を逸した申し出なので、言葉が出ないのは当然だ。しかし、地球の多くの尊い人たちの生死に関わることなので、是非協力をお願いしたい。」

 大体このような出だしの話だった。私は夢を見ているのだと確信したが、その割にはとてもリアルで・・・ときどきリアルな夢を見るので、やはり夢だと思ったのだが、なかなか覚めない。もう観念して、訳の分からない話ではあるものの、現実だと受け入れることにした。

 さて、どのように説明すればいいのだろうか。簡潔に説明することは困難だが、なんとか努力したい。
 男は私に、分厚く黒いカードを手渡した。専用の黒いベルトを腰に巻き、そのカードを所定の場所に収納するよう指示された。そのカードは私のIDカードであり、宇宙GPSによって常時所在場所が特定できる。付随したイヤホンと切り替えチャンネルで、地球上の全言語だけでなく、彼等の話す宇宙語?でも、自動翻訳機能で会話できるという。そのカードが、宇宙評議会からの任命書も兼ねているという。さらに驚いたのは、これから瞬間空間移動装置で、一緒にアインシュタインに会いに行き、特殊な兵器であるIVMWの操作方法をマスターしてほしいという。そのIVMWを地球のために使用するのが、私の使命だという。

 質問すると、IVMWというのはどういう訳か英語であり、InVisible & Merciful Weaponの略称だという。直訳すると、「慈悲に満ちた目に見えない兵器」ということになるそうだ。私の頭はますます混乱し、夢ならそろそろ覚めてほしいと切にに願った。しかしやはり、どうやら夢ではなかったようだ。

 ほぼ数秒で、私は地球の建物とは思えない建造物の中にいた。さらに驚いたことに、入口から入って来たのは、本でしか顔写真を見たことのない、アインシュタインそっくりの男性だった。その男性は驚く私を見透かしたように、やはりベルトに固定されたダイヤルを廻し、日本語で話し始めた。彼は正真正銘のアインシュタインだという。

 法律には自然法というのがあることは私でも知っている。アインシュタインの説明によれば、宇宙全体には、摂理と称して一定の規範があるそうだ。その規範によると、地球上の圧政や陰謀・謀略などによって落命する人の許容数が、そろそろ限界に達しているという。これまでの長い歴史で、戦争や自然災害、不慮の事故、事件などで亡くなった人たちはすべて、その命を再生されて宇宙空間に存在するという。しかし、地球ではこれ以上の理不尽な、人命を軽視した実質的「殺人」は、その摂理からは許容されないという。

 そこでアインシュタインは、評議会の要請に応じて、IVMWなる兵器を発明したのだそうだ。Invisible〜なぜ見えないのか。IVMWは小さなドローンのような物体に組み込まれており、特殊な宇宙物質でできているため、レーダーで捕捉することもできないし、肉眼で目にすることもできない、透明体なのだそうだ。

 Merciful〜なぜ慈悲溢れる兵器なのか。アインシュタインによれば、評議会が攻撃対象と認定した要人を、通常兵器によって攻撃し抹殺するのは容易なことだそうだ。しかし宇宙の摂理によれば、どんな悪人であっても命を絶つことは許容されていない。従って、人格や性格、感覚、感性、判断力などを強制的に変質させ、穏やかで柔和な人格者に変貌させるのだそうだ。それでMerciful〜慈悲溢れる、という言葉が使われているという。

 なんとかことの次第は呑み込めた。しかし、一体私に何ができるというのだろうか。そこが一番腑に落ちなかった。

 アインシュタインによれば、地球上の全ての人間の妄想力をスキャン調査した結果、私が最も妄想指数が高かったそうだ。喜んでいいのか悲しむべきなのか・・・私には分からない。しかし、地球上のあらゆる圧政、陰謀、謀略などの全データは評議会が把握しているらしいのだが、目に見えないIVMWは、生体操作といい、機械的に動かせるものではないというのだ。つまり、最終的には妄想力、換言すれば特殊な想像力と洞察力を有する地球人との生体同期ができなければ、この兵器は正常に機能しない可能性が高く、攻撃対象者が逆に、かえって凶暴で残虐な性格になってしまう危険性をはらんでいるという。いかにアインシュタインといえども、そこまでが現時点での限界だとのことだった。

 さらに驚いたのは、評議会が決めた私のコードネームは、「憂鬱なテロリスト」だという。は?テロリストですか?という質問に、アインシュタインは笑うだけで何も答えなかった。地球上で使われるテロリストという言葉と、宇宙評議会のテロリストとでは意味の違いがあるのだろう、きっと。

 最後に、地球から瞬間移動で連れてきてくれた男が、私に質問した。どのような報酬を希望するか、という内容だった。あまりにも非現実的な時間を過ごしたためか、混乱した私は馬鹿なことを言ってしまった。ずっと以前に亡くなったネコのシロに会いたい、と言ってしまった。他に無いのか、と念を押されたが、何も思い浮かばなかったので、黙って頷いた。・・・そのとき、何やら白い小さな生き物が鳴き声を上げながら、足許に駆け寄ってきた。見るとなんと、まだ小さかった頃の姿のシロだった。こんなに嬉しい、感動の再会は無かった。

 そんなこんなで、今私は「憂鬱なテロリスト」として、地球上で待機している。宇宙評議会からの攻撃指令が来たら、生体同期させたIVMWを瞬時にターゲットのすぐそばまで空間移動させ、目視しながらゆっくりとスイッチをオンにするだけだ。

 あとは、翌日の新聞やテレビ、インターネットが発信する情報を確認するだけだ。すべての報道機関は、驚きをもって発信するだろう。多数の人間を銃殺し、暗殺したあの残虐非道な国家元首が、にこやかに微笑み、路上のホームレスを見れば歩み寄って自分の上着を差し出した・・・などなどである。

 私の存在を知る人は、この地球上には一人も存在しない。あの男とアインシュタイン、それと評議会メンバーだけである。・・・いやいや、忘れるところだった、かわゆいかわゆいシロにゃんも、私を遠くから見守ってくれている。

 誰にも明かせない秘密を持ってしまった、本当に憂鬱な私である。

(口止めされた出来事〜書き止めはされていない・・・終わり)

 もし、どこぞの国家元首が真人間の人格者になったとか、あるいは日本国内で政権や国家転覆を企てていると見られていた人たちが、突然憲法改正大賛成、安倍ちゃん大好き、などと言い出したら、それは私の「兵器」の効果だと、密かに思っていただきたい。


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by hirune-neko | 2018-07-22 01:30 | 創作への道 | Comments(0)

久しぶりに「追いつめられた男」になっている

Maria Callas Bohème: Si, mi chiamano Mimì...

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 なかなか予定通りにことが進まない。どうしてこうも、次々と新しい案件が、しかも即対応が必要な案件が湧き出してくるのだろうか。平常心のバランスも崩れそうになってしまう。全ての元凶は、いつもなら手足となって動いてくれているパソコンや周辺機器が、初めて経験する新しい作業環境で立ち往生していることである。

 操作している自分自身の技量不足なので、誰も責められないし焦っても仕方のないことだ。・・・そうはいいつつ、やはり締め切りの期限が迫ってくると、追いつめられた心境になってしまう。

 しかし、こうしてYouTubeで次々と自動的に移り変わる音楽を聴きながら、ブログ記事の内容を考えていると、徐々に気持ちも鎮まってくる。有難いことだ。

 最初はプッチーニのラ・ボエームで歌われる「ムゼッタのワルツ」を選んだのだが、途中から次々とマリア・カラスの歌声が流れ始めた。ボエーム、サムソンとデリラ、トスカなどのアリアが次々と流れる。何度か差し替えたが、冒頭の「私の名はミミ」に最終決定した。

 こうしてこの曲を聴いているうちに、かなり以前の短編作品にこの曲が登場したことを思い出した。・・・タイトルが思い出せないが、設定は覚えている。確か三部作だったと思う。

 恋愛経験がなく、本ばかり読んでいた大学の先生が、自分のクラスに出席していた女学生に好意を寄せる。何も告げられないまま、彼女は卒業してしまう。その後彼女はIT実業家と結婚し、玉の輿としてマスコミで大きく取り上げられ話題になる。しかしやがて離婚してしまう。そんなときに、逗子の高台の高級別荘地に無断で車を乗り入れ、散歩していた先生と彼女の偶然の再会があり、一気に結婚へと進む。しかし彼女は血液の厄介な病気が発見され、あっという間に他界してしまう。

 第二部までは、こんな感じで悲劇的な結末だった。それを読んだ読者の方が、この先生と自分の境遇が似ているので、是非その先を書いて欲しいとリクエストしてきた。ちょっぴり同情した私は、一転してハッピーエンドとなる第三部を書いた。せっかくなので、その第三部をご紹介することにする。まだお読みでない方は、是非お読みいただきたい。確か、「ボクの飼い主はプロフェッサー」というタイトルだったと思う、これから探してみる。

 ・・・比較的すぐに見つかったので、以下にご紹介する。なんと、2012年10月18日の作品だった。タイトルはちょっと違っていた。飼いネコの視点から書かれた作品である。

「完結編・ボクのご主人様はプロフェッサー」

https://hiruneneko.exblog.jp/18578064/


 さて、まだ午前0時ちょっと前である。夜なべ仕事をせずに、今日はこのまま休ませていただく。自然災害だけでなく、国内外が不穏な情勢なので、何かをしなくてはと気ばかり焦っているが、まずは鋭気を養い思考力を高めることを優先させていただく。



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by hirune-neko | 2018-07-08 23:59 | 創作への道 | Comments(0)

国を擬人化した漫画から小説への変異〜国際時事妄想小説

Astor Piazzolla y Roberto Goyeneche - Chiquilin de Bachin

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 過日ご紹介した推奨ブログ「徒然なるままに」で、連日精力的に時事情報を発信している、ブログ主のちはやさんは、時々小説を発表している。国を擬人化した漫画に着想を得て、同様の手法で小説化している。

 今回は、「本作品は『国擬人化漫画・ヘタリア』の二次小説です。」と断り、シンガポールで開催された、トランプ米大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の会談を軸に、日本や英国そしてプロイセン(日本→男性菊の師匠だそうだ)それぞれが、国家としての見解を人間のように人格と個性を与えられて語っている。ちはやさんは、歴史をよく勉強されており、また実態を把握しにくい国際政治の舞台も、深く洞察しているように思える。読むと、国際政治舞台の臨場感が伝わってきて、疑似体験ができるほどだ。複雑な利害と思惑が交錯する国際政治を、複眼的な視点で解明している、なかなか希有な、そして個性的な作者だと思っている。

 当然だが、ちはやさんとは一面識もなく、私にとっては、年齢・性別・容姿ともに不詳の謎の人物である。ただブログに啓示されているプロフィールを読むと、多少のイメージが湧いてくる。知的で鋭利な感性を有し、文章にも独特の表現力と世界がある方だ。・・・ちはやさんは今頃、クシャミを連発しているのではないだろうか。

 プロフィールには以下のように自己紹介されている。
・性 別:女性
・地 域:東京都
・職 業:夢追人
・myブーム:バチカン奇跡調査官 ヘタリア 自A隊擬人化
・自己紹介:バチカン奇跡調査官の二次小説を書いていましたが、一年程で卒業。現在はヘタリアの二次小説を書いています。

 今回の作品のタイトルは「日本アラカルト[時代の行方⑳・米朝首脳会談]」である。予告編代わりに、冒頭の一部をご紹介する。

(転載開始)
【日本アラカルト[時代の行方⑳・米朝首脳会談]by ちはや】

【米朝合意】
1.米朝関係の正常化
2.朝鮮半島の平和体制保障
3.朝鮮半島の完全な非核化、
4.朝鮮戦争の遺骸、遺骨の送還


英:詰めは甘いが、まあ、こんなもんだろうな。

普:『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』から大きく後退しているな。日本の拉致問題も本当に話し合われたのか疑問だな。

英:ああ、日本人拉致については、合意文書には何も約束されていないしな。

日:話をしたとトランプ大統領はおっしゃっています。日本政府はそれを肯定しています。
拉致問題が合意文書に記されないことは承知済みのことです。
 米朝首脳会談なのですから、アメリカが自国の利益や都合を優先するのは当然であり、他国の拉致問題を明記する理由はありません。
 同盟国とはいえ、他国の為に信義を尽くしてくださっただけでも有り難く思います。寧ろ、アメリカに頼らなければならない我が国の実情こそが、情けなく歯がゆいばかりです。
国連敵国条項がなければ、強行手段も選択肢の一つにできたのですけど。

英:憲法九条じゃないのか?

日:所詮、憲法など、個々の国でしか意味がないものではありませんか。日本が憲法違犯を犯したからといって、どの国が処罰できるというのですか?
 でも、国連敵国条項はそうはいきません。あれは最早形骸だと言われても、何処ぞの国は、あの条項を利用しようと手ぐすね引いて待っているのですから油断はできません。
 あの条項さえ無ければ、いつかアメリカが、北朝鮮に囚われた自国民を助け出す為に軍艦を差し向けたように、我が国も海自や空自を差し向けることができたでしょうに。本当に悔しくてなりません。

普:あれはドイツにとってもイタリアにとっても悩みの種だ。連合国の奴ら、面倒くせえことしてくれたもんだぜ。

英:……

日:でも、ドイツはボスニアを始めアフガニスタンなどに派兵し戦闘行為を行っているではありませんか。

普:NATO(北大西洋条約機構)という枠組みでだけどな。

日:ええ、そうでしたね。
必ずしも戦闘行為を望むものではありませんが、我が国にはそうした枠組みさえありません。

普:日米軍事同盟じゃ不満か?
日米豪印のダイヤモンド構想は、China封じ込めが主たる目的だったな。
俄(にわか)海洋国家同盟か、枠組みとしちゃあ弱いかもな。

日:日米軍事同盟は二国間同盟にすぎず、国内事情が変わればどうなるかはわかりません。
我が国にとって、アメリカ一国のみの軍事同盟では、不安定で仕方がないのです。
NATOのような多国籍の強固な軍事同盟を必要としているのです。
*続きはこちらからお読みいただきたいhttp://mblg.tv/42411914/entry/4297/

 
 私は、ちはやさんの文章から伝わってくる、崇高な信念に圧倒されている。さらには、現実の歴史や国際舞台に対する洞察能力にも敬服している。
 いつかきっと、ブログという空間から飛翔し、国際時事妄想小説家として多くの読者を確保するようになるだろうという、強い予感がある。・・・昨日は、入浴剤をクッキーと間違ってしまったが、本件に関しては迷うことなく確信を持っている。


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by hirune-neko | 2018-06-19 00:34 | 創作への道 | Comments(2)

シンガポールから愛を込めて〜金正恩委員長の高笑いが聞こえる

A Time for Love by Shirley Horn

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 最初にお断りするが、今晩の私は妄想力全開モードである。したがって以下の記事の途中まで読まれて、「ああ、それが真実だったのか」と早合点し、大騒ぎをされないようにお願いしたい。くどいようだが、以下はネット上に散乱する様々な情報の断片を、妄想力によってつなぎ合わせただけの、妄想ストーリーである。

(妄想ストーリー開始)
シンガポールから愛を込めて〜金正恩委員長の高笑いが聞こえる」

 シンガポールにおける、米国・トランプ大統領と北朝鮮・金正恩委員長の、歴史的会談が終了した。会場となったホテルの周辺は、厳重な警備で固められ、屋外からの狙撃、ヘリコプターやドローンを含む空からの攻撃をも想定し、文字通りネコ一匹ですら入り込めないほどだった。・・・だったのだが、私は先祖から受け継いだ特殊能力を駆使し、会談で使用された部屋の片隅で一部始終を見守っていた。私の特殊能力は、トランスポーテーションといわれる瞬間空間移動能力、そして肉体から抜け出て視認できない霊体として存在することができる能力である。これらは、昼寝ネコ一族に伝わる能力のほんの一部である。

 さて、会談前には米国国務長官を始め、多くの人々が北朝鮮の即時の核兵器廃棄を主張していた。生物化学兵器も同様であり、拉致された日本人被害者の解放までも会談の合意事項として盛り込む意気込みだった。しかし、結果はどうだったろうか。
 多くのメディアが報じるように、米政府が求める、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄(CVID)」の文言は盛り込まれなかった。生物化学兵器も、日本人拉致被害者の件も同様である。

 一体、あの自信に満ちたトランプ大統領に、何が起きたのだろうか。秘密会談だったので、メディア記者が知り得ない、トランプ大統領と金正恩委員長の二人しか知り得ない会話があったのである。・・・いや、正確にいうなら、二人に加え、この私を含む三人しか知り得ない、信じられない、そして決して公表できない重要な会話があったのだ。その結果、世界最強の軍事力を持つアメリカ大統領といえども、ある意味で無力化されてしまったのである。

 当時の模様を、ごく簡潔にお伝えする。

 高圧的で自信に満ちたトランプ大統領の、ある意味では一方的なオファーが一巡した頃、金正恩委員長はそれぞれの通訳に退席を求めた。英国アクセントではあるが、流暢な英語を話すのを確認し、トランプ大統領は通訳の退席に同意した。
 そのときのトランプ大統領は、二人だけになったら、金正恩委員長が自分に土下座して額を床にこすりつけ、体制維持の保障と、CVID実施の時間的余裕を与えてくれるよう、懇願するだろうと考えていたようだった。

 しかし実際はそうはならなかった。すべてを詳細に記すと、膨大な文字量になってしまうので、概要だけを以下に記すことにする。

 金正恩委員長は、驚くほど流暢な英語で話し出した。ほぼ理解できたので、日本語に訳して記載することにする。

 「ミスター・プレジデント、あなたは『金策(キムテク)という人物をご存知だろうか。おそらくご存知ないだろう。金策は元々、陸軍中野学校出身の残置諜者の畑中理(おさむ)という名の日本人だった。太平洋戦争終結前に、畑中理は日本に帰らず北朝鮮に渡り、金策という名の朝鮮人として生きることにした。そして原爆で日本の無実の一般市民を大量に虐殺したアメリカに対し、いつの日か、その原爆でアメリカに報復するという固い決意を胸に秘めていた。やがて、その金策はロシアから帰国した、私の祖父である金日成を教育訓練し、北朝鮮独自の軍事力を組織することになった。
 豊富なウランを埋蔵し、大型ダムによる電力にも恵まれていたため、金策はアメリカへの報復のための原爆開発を指導した。金日成を中心に据えて北朝鮮を育て上げ、アメリカに報復するという怨念で、北朝鮮の軍事強化に生涯を賭けた人物だった。今日の朝鮮の発達に対する功績があまりにも偉大だったため、今日でも金策市、金策製鉄所、金策工業総合大学、金策軍官学校、金策航空大学、金策号という名前を付けているほどの、大変偉大な功労者だった。

 トランプ大統領、貴殿は我が国近海に強大な海軍力を派遣し、空軍力も飛来させ誇示している。軍事的威圧によって、我が祖国を、偉大なる金策が創り上げた朝鮮国を支配下に治めようと恫喝し続けている。今秋の中間選挙に向けて、功績を誇示したいのだろうが、そのような短絡的戦略が通用するとお考えだろうか。我が朝鮮は、陸軍中野学校で厳しい訓練を受けた畑中理・金策による、遠大な報復戦略に基づいてその成果を積み上げてきている。かねてから、アメリカに対して未曾有の攻撃を加えると、何度も警告を重ねた事実をお忘れだろうか。高高度での核爆弾破裂が引き起こすEMP攻撃は、ほんの序章に過ぎない。
 金策は当初から、核爆弾の開発と並行し、その小型化、さらには超小型化を優先目標としていた。我が国の優秀な科学者たちは、かなり以前にスーツケース原爆の開発に成功し、我が国の工作員の手によって、すでに全米数百カ所に秘匿し、いつでも遠隔操作で起爆できるようになっている。超小型化はさらに進み、全米中の建造物の基礎部分に埋め込まれている。ある自動車メーカーのラインには、部品に擬した超小型核爆弾が生物化学兵器と連動する形で、自動車に組み込むよう稼働している。今や、数え切れない無数の核爆弾が、アメリカ国内で待機しているのだという事実を、謹んでお伝えしたい。それでもなお、大統領は我が国に対して変わらぬ恫喝、軍事侵攻を企てるなら、私がお伝えしたお話が事実であることを、大統領ご自身がその耳目で確認することになると、改めてお伝えする。

 先の大戦で、貴国の原爆によって、軍属ではない一般市民が大量に虐殺された。アメリカは、未だにその人々の悲痛な運命を忘れてはならない。金策・畑中理の怨念は、今でもなお、彼の血を受け継ぐ我々にも引き継がれていることを、決して忘れないでいただきたい。アメリカに対する原爆による報復は、金策・畑中理によって創られた朝鮮国の当然の権利だと、我々は考えている。」

   *   *   *   *   *

 この会話は、どの報道機関も察知しておらず、従ってこのやりとりを知るのは、二人の国家元首、そして私の三人だけである。これが、大きく内容が後退した共同声明、そして突然の米韓合同演習中止の核心的理由であることは、誰も知らない。

 さて、以下の画像をご覧いただきたい。二人の表情を見較べていただくと、一目瞭然なのではないだろうか。今でも、シンガポールから金正恩委員長の高笑いが聞こえるような気がする。愛が込められているかどうか、そこまでは判断できない。
c0115242_02282390.jpg

合意文書を交換し、握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領=12日、シンガポール(ロイター)
(妄想ストーリー終了)

 しつこいようだが、再度申し上げる。あくまでも私の目撃情報というのは、妄想物語に過ぎない。国際政治の世界は、かくも深い闇の中である。しかし、懸念していることがある。あくまでも私の妄想の産物にしか過ぎない内容なのだが、もし仮にこれが実際にこの二人の国家元首の間で語られた内容に限りなく近かったとしたら、そしてそれがいつか後日証明されるようなことがあったなら、私はおそらく、世界中の政府や情報機関から、要注意の特殊能力者として監視対象になってしまうのではないだろうか。そうなってしまったら、おそらくだが、ノーベル文学賞候補にノミネートされる可能性はゼロになってしまうと思うと、至極残念である。せっかく、現時点の可能性が0.00001%もあると思っているのに。本当に残念である。


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by hirune-neko | 2018-06-15 01:52 | 創作への道 | Comments(2)



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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