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昼寝ネコの雑記帳

昼寝ネコの「大人の恋愛講座」進入禁止編その2

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(これもカトリ〜ヌ・笠井さんの作品です。ちょっと自信喪失し、自閉気味の用心深いネコです)

人間が、一生涯で体験する恋愛回数は、
どれぐらいあるだろうか。
それに較べて、映画、小説、演劇、
オペラやミュージカルに
登場する恋愛シーンと、そのプロットの種類たるや
膨大な数にのぼってしまうのだから、
自分が足を踏み入れていない、
胸ときめかす未知の恋愛が
まだまだ存在するに違いない・・・
そう思っても当然至極なのである。

だがしかし、BUT、ちょっと待てよ。
著名な恋愛作品をざっと思い出しただけで、
West Side Story、アイーダ、トスカ、
ラ・ボエームだってカルメンだって・・・
結局は最終的に死が状況を美化して
終わっているではないか。
あるいは、ふたりは愛し合って結ばれ、
その後幸せに暮らしましたとさ・・・。

では、アイーダその後の物語を想像してみたい。
ラダメスは愛に殉じ、その咎で
岩をくり抜いた地下牢に閉じこめられた。
頭上の入り口は巨大な石で塞がれ、
二度と地上に出ることは不可能だった。
明かりのない、絶望的な深い闇の向こうに人の気配が・・・
それはラダメスが逃がしたエチオピア王の娘、アイーダだった。
アイーダは、いずれこの地下牢に閉じこめられる運命の
ラダメスを待つために、自ら地下牢に隠れてラダメスを待った。
運命に引き裂かれ、二度と会えないと思っていたアイーダに、
この絶望的な環境で再会した。
それは死を賭した再会だった・・・。
アイーダとラダメスは、暗闇の中で
たとえ二人に死が訪れても、
魂は空高く昇り、二人の愛は永遠に、
という二重唱のアリアを歌い、
舞台は感動の余韻を残して幕となる。

ヴェルディの重厚なオペラ「アイーダ」は
かくして聴衆の心奥深くに、愛の感動と
永遠不滅の愛を残す。
聴衆はカーテンコールに
スタンディングオベイションで応える・・・。

さて、普通なら満足感を胸にオペラハウスを
後にすることだろうが、昼寝ネコの妄想はこれで終わらない。

古いお話しなので実は記録に残っていないのだが、
アイーダとラダメスが二重唱を歌い終えて
甘美な死を覚悟して程なく、
マグニチュード8.5の大地震がエジプトを襲った。
城壁は崩れ、至る所に大きな地割れが走り、
ついには地下牢の入り口を塞いでいた
巨大な岩が、地震の衝撃で転がってしまった。
驚いたアイーダとラダメスは地表に出たが
逃げまどう人々でごった返し、見張り番の兵士の姿もない。
二人は手に手を取り、エジプト郊外へと避難していった。

さて、早いものであの大地震から
あっという間に30年の歳月が過ぎ去ってしまった。
純愛に殉じた悲劇のヒロイン・アイーダのその後を尋ね、
昼寝ネコは現地取材を敢行した。

村人たちに「アイーダ」と「ラダメス」の名を尋ねたが
誰も知らないという。決してかくまっているのではなく、
追っ手を逃れるために、名前を変え、身分を隠してしまったので
誰も知らないのだろうと思った取材班は
質問の内容を変えてみた。
「エジプトの大地震の後、見知らぬ女性と男性が
二人でこの村に住み始めた記憶はないか?」
村人はこう答えた。
「あのときは、エジプトを捨ててこの村に来た人は
たくさんいたからねえ、ちょっと難しいなあ」
「でもね、女性はエチオピアの王様の娘だから
気品があって美人だったはずなんだけど、知らない?」
「ああ、エチオピア出身のおばさんなら、近所にいるよ」
「おお、きっとその人だ。すらっとした美人でしょ?」
「いやあ、昔はどうだったか知らないけど、
そのおばさんは、高血圧でメタボリックだって
いつもこぼしているよ。自分のこと、
三段腹の二重あごで、昔の面影はなくなったともいうね」
「もう少し詳しく教えてくれる?」
「ああ、いいさ。あのおばさんは8人の子持ちでね、
旦那さんは元エジプトの将軍かなんかだったていう噂だけど
毎日、朝から酒臭くてさ、仕事もずいぶん前から
止めて家でごろごろしてるんだよ。あれじゃあ
奥さんも大変だよね」
取材班は、その後もいろいろな話を聞き、
そのおばさん夫婦が、間違いなくアイーダ夫婦だと確信した。
その結果、アイーダのあの甘美なラストシーンのイメージが
ぶちこわしになるのを恐れ、取材班は
独断で取材を打ち切って帰国してしまった。

さて、こういう続編を考え、しかも文章にすることは
ヴェルディやプッチーニに対する冒涜だろうか。
私は決してそうは思わない。
どんな人にも、人生の絶頂期といわれる時代は存在する。
しかし、大概は外見や能力など、目に見える基準で
絶頂という時期を測定してしまう。
しかし、目に見えない価値というのは
年月の流れによって流失することはなく
かえって輝きを増すことが多い。

もし人が恋愛を考えるとき、相手の資格や経歴、
資産や社会的地位、知識の量、外見や容貌などを
優先基準として考えるのなら、そういう人たちのためにも
やはりもう一度ヴェルディに墓から出てきてもらい、
無理矢理にでも「アイーダ・その後の三段腹」という
続編を作曲してもらうべきだと思う。
おそらく今は、これらを恋愛の基準と考える人が
多く存在する時代なのだと思うが、
そういう恋愛はまさに「進入禁止」なのだと
昼寝ネコ村では教えられている。
人を愛することも幸せだが、人から必要とされ
慕われることも幸せなことだと思う。
純粋な愛は、時として人格を高め、
品位をも浄化するものだと思う。

サン=テグジュペリの「星の王子様」の1シーンで
ただ1本の花の世話をしていたら、
こんな花は、別の星に行ったらたくさんあるよといわれ
「ぼくには、この1本がかけがいのない花なので
一生懸命世話をしてるんだよ」・・・というような
表現をしていたのを記憶している。

本心をいえば、私は恋愛を否定も肯定もしない。
ただ、魂が触れ合える、心の深い交流というのは
そう簡単に得られるものではなく、貴重だということ、
それと、心を開き重心を移し合うということは、半面
自分自身の人生に、脆弱さを作り出してしまうという
ことにもつながるので、諸刃の剣であるということ・・・
それさえわきまえれば、大人の自己判断であり
自己責任の範囲内のことなのだと思っている。

なんとか「進入禁止」の真意を語り尽くせたように思う。

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by hirune-neko | 2008-07-18 22:53 | 現実的なお話し | Comments(4)
Commented by バオバブ at 2008-07-18 23:23 x
サン=テグジュペリの一輪の薔薇に恋をしている星の王子さまはいいました。
『誰かが何百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花が好きだったら、その人はたくさんの星を眺めるだけで、幸せになれるんだ。そしてぼくの好きな花がこの星の何処かにあると思っているんだ』
ここ,,,好きなんです。恋愛ってそういうものだと思うんですよね、バオバブといたしましては。
Commented by オランダシシガシラ at 2008-07-19 00:42 x
進入禁止を強行突破して「大人の恋愛」地区に行くには「求めない」「与えない」「頼らない」の標識があります。


「大人になりきれない人の恋愛」地区で「求めすぎ」「与えすぎ」「頼りすぎ」「他人と比べすぎ」の違反キップを切られた人は、いつまでたっても「大人の恋愛」地区には入れません。私は免停中です。
Commented by hirune-neko at 2008-07-19 01:30
>バオバブさん

はるか学生の頃に読んだきりで
星の王子様は記憶の彼方なんですが、
そんな言い回しがあったんですね。
最後に、サハラ砂漠で毒蛇に「咬ませ」
崩れ落ちるシーンに、涙した
ナイーブな学生でした。
Commented by hirune-neko at 2008-07-19 01:33
>オランダシシガシラさん

おやおや、免停中なんですか?
停止明けには、また急発進して
違反切符の可能性がありそうですか?
なかなかの情熱家のようで、
羨ましい限りです。
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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