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昼寝ネコの雑記帳

曖昧な表現が許容される、日本語の難しさ

Bill Evans Trio at the Montreux Jazz Festival - Mother of Earl
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 冒頭に掲示したのは、ビル・エヴァンスが演奏する曲である。アルバムの邦題は「モントルー・ジャズフェスティバル」として記憶に残っていた。調べてみると英語の原題は、「Trio at the Montreux Jazz Festival」のようだ。

 調べると、どうやら1968年にモントルーのジャズフェスティバルで演奏されたのを録音したもののようだ。実に、半世紀以上前のことである。

 1968年は、私が高校2年生だった時で、学校を抜け出して毎日ジャズ喫茶に通っていた悪ガキだった。高校生でジャズの初心者だったのに、どういうわけかビル・エヴァンスの演奏に引き込まれた。

 あの頃から、すでに半世紀が過ぎた。実に、あっという間の人生である。

 最近になって、ダウンロードした数十枚の、ビル・エヴァンスのアルバムの中に、このモントルーのジャズフェスティバルのを見つけたので、懐かしくて聴いてみた。

 その中で、とても魅力的な雰囲気の曲があるのを、初めて認識した。何度も聞いたアルバムのはずなのに、初めて聴くような印象だった。おそらく、ビル・エヴァンスのファンであっても、この曲はそんなに知られていないのではないだろうか。

 しかし、高校生のときの感性と、すでに高齢者になっている今の感性との違いなのだろうか。この曲のメロディーが、耳について離れない。今日など、ほぼ第3京浜まで往復したのだが、この曲だけをリピートしてずっと聴いていた。全く飽きない曲である。

 ダウンロードしたアルバムには、11曲が収録されていた。そのうち、英語で表記されているのは2曲だけで、他は全て日本語だった。

 この曲の邦題は「伯爵の母」である。先日、この曲をブログで紹介しているが、YouTubeで探すのに大変苦労した。というのも、日本語のタイトルでは検索に引っかからなかったからだ。そこで、Montreux・ Bill Evans・Motherで複合検索し、ようやく英語のタイトルを探し当てることができた。

 日本語の「伯爵の母」というタイトルを目にした時、「伯爵であるお母さん」という意味なのか、あるいは文字通り「伯爵である方の母親」という意味なのか、一瞬判断がつかなかった。

 無知な私だが、伯爵というのは、もしかして男性に与えられる爵位なのだろうか。もしそうだとすると、私が抱くような疑問は無意味なことになる。

 英語のオリジナルタイトルを確認したら、「Mother of Earl」となっていた。これだと、明らかに、ある伯爵の方のお母さんという意味に取れる。というか、そうとしか解釈のしようがない。

 少々理屈っぽくなってしまうかもしれないが、例えば「酔っ払いの母」という表現を聞いたとき、「酔っ払っている人のお母さん」なのか、あるいは「酔っ払っているお母さん」なのか、明確に識別ができないと思う。

 日本語は、前後関係などから類推し、判断するという、ある意味では曖昧で許容範囲の広い言語なのではないだろうか。

 先日も書いたように、私の英語の先生はアメリカ人だが、新約聖書を英語で読むと、意味を明確に理解し難い部分があるそうだ。そこで、新約聖書のオリジナル言語である、ギリシャ語と英語で併読していると言っていた。

 おそらく、外国人で日本語を学ぶ人たちは、かなり大変な思いをしているのではないだろうか。私たち日本人にとっては、ごく自然に使い分けている日本語だが、アメリカのある公共機関によれば、世界中の言語の中で、最も難解なのは日本語だそうだ。

 今日歩きながら、そしてビル・エヴァンスのこの曲を聴きながら、近未来に向けて視線を向けながら、あれこれ考えた。

 この場で具体的なことは書けない。なぜならば、読まれた方は呆れて大笑いされるだろうことが、目に見えるからだ。

 しかし改めて思った。実務的な作業ばかりに追われ、あるいは趣味だけに耽溺していたのでは、決して静謐なイメージが湧き上がることはないのではないだろうか。

 ときには、何にも煩わされることなく、1人で静かに、イメージを増幅させて思考することが、とても重要だと感じた。

 人間にとっては、何が一番大切なのだろうか。書生論のようになってしまうかもしれないが、一気に話題の人となったカルロス・ゴーンさんのように、奥さんに豪華クルーザーを買い与えるような、財力のある人もいる。おそらくは、かなりの費用を払って、ベルサイユ宮殿で結婚式を挙げたのだろう。

 誰にとっても、一定水準の経済力があるのは、とても良いことだと思う。しかし、財力を持ったときに、それをどのような目的で使うか、という部分でその人の真価が問われるのではないだろうか。

 私自身は、あと何年生きられるか、皆目予測もできない。しかし、遥か彼方の道標であったとしても、方向性を見失わず、そして見誤ることなく、自分の得心の行く生き方を、最後まで貫きたいと感じた。

 私の歩く道は、決して哲学の道ではない。夜の時間帯に歩くと、向こう側から歩いてくる人が、ほぼすれ違う位まで視界に入らない。知人からは、暗い夜道は歩かないようにと言われている。そうかもしれない。しかし、思索に集中するという意味では、人通りの少ない、暗い夜道が、私にとって格好の場である。

 そして、ある種の形而上学的な思索をするときは、どうやら、ビル・エヴァンスの演奏が最もしっくりくるように思う。

 改めて、Bill Evansとは半世紀ぶりの再会したような、懐かしさを感じている。

 参考資料として、冒頭のモントルーのジャズフェスティバルのアルバムに関する情報を、以下にご紹介させていただきたい。

・本作は、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルの名前を世界的に広めた傑作ライヴ盤。ジャック・ディジョネットの参加によって、ビル・エヴァンス・トリオの作品の中でも、よりクールで躍動感が漲るアグレシッヴな演奏となった。心に沁みるソロ演奏も聴きどころ。1968年録音。 (C)RS J0MD (2015/06/12)
・お城のジャケットで有名な1968年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ作品。ドラマーにジャック・ディジョネットが参加していることも見逃せない。グラミー受賞作。 (C)ANCHOR タワーレコード (2002/10/10)

・「伯爵の母」(Mother Of Earl)。 今日は母の日なので、母に捧げたジャズの曲として有名な曲を取り上げてみました。この曲を作曲したアール・ジンダーズが彼の母に捧げた曲だそうです。ビル・エヴァンス・ …(以下は判読できず)

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by hirune-neko | 2020-02-07 00:55 | 心の中のできごと | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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