時の流れに身を任せながら・・・Avec le temps 時間は確かに流れている。目には見えないものの、全ての人が時の流れには抗えないでいる。たとえ不本意な方向であったとしても、しばしはその流れに身を任せ、鋭気を養いつつ、行き着くべき目的地を心の目で追っている。 人の人生を、崇高な目的を追い求める、巡礼の旅になぞらえるなら、巡礼者にとっての道標は目に見えず、心で感じるものであるに違いない。 遠い彼方に微かに見える目的地を、心の目で追う巡礼者にとっては、財力、地位、名誉、権力、名声などは、いつかは朽ち果てる墓石のように映っているのではないだろうか。 陽が傾き、どこからともなく闇の中から現れる、原色の女達。ゆったりした艶やかな衣の内側に、人の魂を死へ誘う隠微な香りを満たし、巡礼者を深紅の唇から出る甘い言葉で誘う。 富と名声が地上における至上の資産だと誤認させ、人の純真な心を徐々に蝕む魔術師達が、鷹の目のような鋭い視線を、通りを行き交う巡礼者達に向けている。 眠れない夜は、遙か遠くに忘れ去っていた情景が、突如悔悟と罪悪感とともに甦る。そのとき、悪魔が傍らでそっと囁く。お前は罪深い人間だ、心は穢れてひび割れ、決して元に戻ることはできない。 心が重くなってしまった巡礼者の心に、今度は天使が囁く。人間は誰しも意志が弱く、善悪を隔てる境界線を、容易に踏み越えてしまうことがある。罪悪感には、人の心を鎖で縛り上げてしまう拘束力があるが、生まれながらに心に具わっている力で、その鎖を断ち切るなら、やがて心は平安と安息に満ち、さらに巡礼の道を進んでいけるだろう。 どんな悪人にも善人にも、夜明けが訪れる。新しい一日が始まるように、日に日に古い衣を脱ぎ捨て、新たな自分という衣を身に纏い続けるなら、長い長い上り坂を歩き続けていつか振り返ったとき、眼下に広がる眺望に驚きと感動を与えられるだろう。 古代の知恵者や預言者と言われた人たちによって、今の時代を生きる私たちに対して語られた言葉が、数千年を経た今の時代に甦り、誰にも止められず、方向すら変えられない巨大な流れとなっている。 水煙の彼方で轟音を轟かせている。大瀑布に至る大河が、今では徐々に勢いを増しつつある。 久しぶりにレオ・フェレのAvec le temps(アヴェク・ル・タン)〜邦題・時の流れに、を聴いてみた。何を書くか何もイメージが無かったのだが、聴いているうちに、人生という旅、巡礼者に置き換えられる人間の存在・・・そんなイメージが湧いたので、感じるままに書いてみた。 大瀑布が近づいていることを想起させるような、変化の流れの速さが、ここ東アジアで起きつつあるように感じている。さて、何をすべきだろうか、と優先順位を考えている。
by hirune-neko
| 2019-03-06 01:18
| 心の中のできごと
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・1951年
小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。 ・1969年 中央大学経済学部入学 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。 ・1974年 同大学卒業 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。 ・2006年 現在に至る プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。 ・2010年 宇宙の旅 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。 ・現在 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。 お気に入りブログ
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