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昼寝ネコの雑記帳

贅沢なひととき〜感性の帰巣本能を感じている

Bill Evans Trio - Young and Foolish

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 ここ最近はずっと実務的な作業に追われ、何かを深く考えるということができなかった。今日は土曜日でもあり、一息つける時間を過ごしている。まだ明るい昼間だというのに、すっかり寛いでしまっている。

 仕事上のあるテーマについて考えている。考えながらビル・エヴァンスの演奏を聴いている。ここ何年もアストル・ピアソラを好んで聴いていたのだが、最近はどういう訳かビル・エヴァンスが聴きたくなり、高校生の時以来、実に半世紀ぶりに再会し対面している。感性の帰巣本能とでも言って良いのではないだろうか。

 高校生の時の私は、もしかしたら少々感性が早熟だったのかもしれない。と言うよりは、はみ出し高校生だったのではないだろうか。朝、学校に行って出席をとると、窓から教室を抜け出してバスに乗り、繁華街から少し外れた坂の途中にあったジャズ喫茶に行くのが、日課になってしまった。店の名は「伊吹」だったと思う。

 制服を着た高校生が午前中からジャズ喫茶に行き、弁当を食べながら夕方過ぎまでの時間を過ごすのだから、明らかに異常な姿だったと思う。常連客はコアなジャズファンの大人たちだった。しかし、誰1人として私に対し、学校サボっちゃいけないよ、というような説教はしなかった。仲間の1人として迎え入れてくれた。もしかしたら、彼等の高校時代と二重写しになったのかもしれないと、今になってはそんな気がする。

 そこは港町だったので、外国の船が入港するのか、店の片隅にアメリカ人が座っていることがあった。当時の私は好奇心が旺盛だったのか、決まって側に行き、話しかけた。話しかけたといっても、高校初級程度の構文しか知らなかったのだから、たわいもない会話だった。それでも、外国語で対話するという経験をしたせいか、特に英語に対する興味は深まったと思う。そういえば、英語の授業の時、先生から発音が良いと褒められたことがある。褒められて悪い気はしない。それもそのはず、朝から夕方までずっとジャズボーカルを聴いていたのだから、聞き取りの訓練をしていたようなものなので、ネイティブの発音が少しは身に付いたのではないだろうか。

 そういえば、以前も書いた記憶があるが、大学に入って第二外国語はフランス語を履修した。先生は、NHKのフランス語講座の講師でもあった朝倉季雄先生だった。当時の私は、出席日数不足でフランス語は再履修を繰り返し、とうとう5年間習うことになった。朝倉先生はクラスの中をゆっくり巡回し、一人一人に短文を音読させた。私の番になり、少々読みにくい内容の文章を口にした。Je me suis levé・・・今でも憶えている。すると先生は少し驚いた表情になり、「君はフランスに住んでたことがありますか?」と訊かれた。素直に嬉しかった。フランス語の発音がいいとしても、フランスに住んでいた訳ではなく、繰り返し繰り返しシャルル・アズナヴールの歌を聴いていたため、耳からフランス語の発音のエッセンスを吸収していたに過ぎない。

 毎月定額で音楽アルバムを好きなだけダウンロードできる、アップルミュージックに登録している。アルバムを聴いていると、下の方にそのアーティストの別のアルバムが表示される。ビル・エヴァンスのアルバムを聴いていると、他のアルバムが表示されるので次々とダウンロードしてしまった。改めて数えてみたら、なんと42枚もダウンロードしてしまっていた。高校生の時に聴いたビル・エヴァンスは、ほとんどが著名でポピュラーな作品だった。40枚以上のアルバム全てを丹念に聴いてはいないのだが、時々初めて聴くバラードの、なかなかいい曲と出会うようになった。ようやく曲名も覚えられた。

 たまたま昨日、初めて見るジャケットがあったので曲名を確認してみた。すると、いろいろなアルバムに散りばめられていた、気に入ったバラード曲が特集されているようなプログラムだったので、ためらわずダウンロードした。アルバムのタイトルは、「Plays for Lovers」だった。

 その中から1曲を選び、冒頭でご紹介した。曲名は「Young and Foolish」・・・私流に和訳すれば「若気の至り」で、まさに私の青春時代そのものである。・・・いや、今でもどうやらその気質は、まだ色濃く残っているような気がしている。


 ビル・エヴァンスの生涯については、ほとんど知識が無い。しかし、ずっと薬物中毒であり最後は自殺だったように記憶している。あるいは勘違いかもしれない。

 彼の演奏スタイルから感じるのは、言葉で表現するのは難しいが、「感性的孤高さ」だろうか。物質世界や世俗性を超越した、内省的・自省的視点も感じる。周囲とは距離を置いた冷厳な価値観も感じる。

 お恥ずかしいのだが、ピアノは片手でしか弾けず、両手で同時に別々のメロディーを弾ける人の能力が信じられない。そんな私だが、ビル・エヴァンスの音楽的世界、それと何の脈絡もないのだが、アルベール・カミュの感性的世界の両方に郷愁を感じている。

 青春時代から、すでに半世紀を生きてきて、再びあの頃の世界に対する郷愁と寛ぎを感じてしまっている。どうやら私の感性には強い帰巣本能があるようで、これはもう今更変えられるものではないと観念している。

 ピアソラ自身は、マイルス・デイビスとビル・エヴァンスを高く評価していたと、知人が教えてくれた。ピアソラの作品に対しても強い共感を感じるのは、そのせいもあるかもしれない。いずれにしても、音楽ほどその人の感性を雄弁に語るものは無いのではないだろうか。

 珍しく、今日は私にしてはとても早い時間のブログ更新とさせていただく。もう数年生きられれば、いつの間にか深夜のブログから早朝のブログに変貌しているのではないかと思う。


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by hirune-neko | 2018-10-06 19:22 | 心の中のできごと | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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