昼寝ネコの雑記帳

半世紀ぶりのコルトレーン〜テロリストの憂鬱

John Coltrane Quartet - Say It (Over and Over Again)

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 数日前、Facebook友だちから、ジョン・コルトレーンの未発表曲が発見され、アルバムになるらしいと教えてもらった。へぇ〜とは思ったが、高校を卒業してからコルトレーンはあまり聴かなくなっていたので・・・というよりは聴けなくなっていたので・・・それほど体力と気力を消耗する、まるで呪詛のような曲想なので、聴くこと自体が重荷になっており、無視していた。

 あの夜、寝る前にいつもの習慣でiPad Proを開き、音楽を聴こうとしたら、ジョン・コルトレーンの未発表曲のアルバムが、どういうわけか私へのお薦めとして表示された。iTunesではコルトレーンを一度も聴いていないのに、不思議なこともあるものだ。半世紀前、おそらくは、眉間に皺を寄せながら、忍耐強くコルトレーンの演奏を、受験勉強そっちのけで聴いていた自分の姿が、懐かしく思い起こされた。しかし、コルトレーンは、ジャズにおける最も旧い友だちなので、再会を祝して聴くことにした。

 あの夜は驚愕すべき出来事が起きたので、それを記念して、初めてこのブログでコルトレーンの演奏を紹介しようと思った。しかし、いきなり初めてコルトレーンの演奏をお聴きになると、人によっては気分が悪くなり、船酔いならぬ音楽酔いしてしまう可能性が高いので、最も穏やかで誰にでも聴きやすいバラードを選んだ。この曲はピアノトリオとの協演で、ピアノ:マッコイ・ターナー、ベース:ジミー・ギャリソン、ドラム:エルビン・ジョンズというメンバーと一緒に、コルトレーンがテナーサックスを吹いている。半世紀経っても、彼等の名前をは鮮明に憶えていた。もしかしたら、私がアルツハイマーかもしれないというのは、考えすぎだったかもしれない。

 男性ジャズボーカリストのジョニー・ハートマンとの協演アルバムで、同じく「バラード」というタイトルのアルバムにも、確かこの曲が収録されていたはずだ。懐かしい思い出だ。しかし、ソプラノサックスの演奏は、初めての方はお止めになった方がいい。軽い精神錯乱を起こしてしまう危険性があるから。(コルトレーンがこっちを睨んでいる)

 さて、やっと本題である。私の身に何が起こったかを記録したいと思う。口外しないよう厳しく口止めはされたのだが、書き残してはいけないとは言われていないので、ブログに残すことにする。お読みになった方は呆れ顔で、どうせまたいつもの妄想だろうとスルーされると思う。それでいいのだ。是非そうしていただきたい。

 詳細を記述しようとすると、朝になってしまうと思うので、概要を簡潔に書くことにする。・・・それでも少々長くなってしまうと思うが。

(口止めされた出来事〜書き止めはされていない・・・始まり)

 懐かしいコルトレーンの音色を味わううちに、私はいつしか眠りに落ちてしまったようだ。

 閉じた目にも強烈な眩しさを感じ、我に返った。目を開けると部屋中いっぱいに光が満ち溢れていた。少し目が馴れると、前の前に誰かが立っているのが分かった。何やら微かな金属音がする。その男性は銀色の奇妙なデザインの衣服で、何やら言葉を発した。まったく聞き覚えのない言語だった。怪訝そうな私の表情を察し、男はベルトのダイヤルを回した。すると英語や中国語、韓国語と思われる言語に変わり、ようやく日本語で話し始めた。おそらくは、自動翻訳機を身につけていたのだろう。少々文語調の日本語だったが、十分に理解できた。話の概要は以下の通りだ。

 「こんな深夜に突然現れて、さぞかし驚いたことと思う。私は時空を超越して往き来できる使者である。いよいよこの地球にも悪逆が満ち溢れ、終焉が近づいている。宇宙全体を管理している宇宙評議会で、これから重要な局面にさしかかる地球にとって、献身的に奉仕してくれる人材の人選に当たっていたが、慎重に協議した結果、大和の、いや日本の昼寝ネコが最適だという結論になった。それで、私が送られてきた次第だ。いや、突然のことであり、しかも常軌を逸した申し出なので、言葉が出ないのは当然だ。しかし、地球の多くの尊い人たちの生死に関わることなので、是非協力をお願いしたい。」

 大体このような出だしの話だった。私は夢を見ているのだと確信したが、その割にはとてもリアルで・・・ときどきリアルな夢を見るので、やはり夢だと思ったのだが、なかなか覚めない。もう観念して、訳の分からない話ではあるものの、現実だと受け入れることにした。

 さて、どのように説明すればいいのだろうか。簡潔に説明することは困難だが、なんとか努力したい。
 男は私に、分厚く黒いカードを手渡した。専用の黒いベルトを腰に巻き、そのカードを所定の場所に収納するよう指示された。そのカードは私のIDカードであり、宇宙GPSによって常時所在場所が特定できる。付随したイヤホンと切り替えチャンネルで、地球上の全言語だけでなく、彼等の話す宇宙語?でも、自動翻訳機能で会話できるという。そのカードが、宇宙評議会からの任命書も兼ねているという。さらに驚いたのは、これから瞬間空間移動装置で、一緒にアインシュタインに会いに行き、特殊な兵器であるIVMWの操作方法をマスターしてほしいという。そのIVMWを地球のために使用するのが、私の使命だという。

 質問すると、IVMWというのはどういう訳か英語であり、InVisible & Merciful Weaponの略称だという。直訳すると、「慈悲に満ちた目に見えない兵器」ということになるそうだ。私の頭はますます混乱し、夢ならそろそろ覚めてほしいと切にに願った。しかしやはり、どうやら夢ではなかったようだ。

 ほぼ数秒で、私は地球の建物とは思えない建造物の中にいた。さらに驚いたことに、入口から入って来たのは、本でしか顔写真を見たことのない、アインシュタインそっくりの男性だった。その男性は驚く私を見透かしたように、やはりベルトに固定されたダイヤルを廻し、日本語で話し始めた。彼は正真正銘のアインシュタインだという。

 法律には自然法というのがあることは私でも知っている。アインシュタインの説明によれば、宇宙全体には、摂理と称して一定の規範があるそうだ。その規範によると、地球上の圧政や陰謀・謀略などによって落命する人の許容数が、そろそろ限界に達しているという。これまでの長い歴史で、戦争や自然災害、不慮の事故、事件などで亡くなった人たちはすべて、その命を再生されて宇宙空間に存在するという。しかし、地球ではこれ以上の理不尽な、人命を軽視した実質的「殺人」は、その摂理からは許容されないという。

 そこでアインシュタインは、評議会の要請に応じて、IVMWなる兵器を発明したのだそうだ。Invisible〜なぜ見えないのか。IVMWは小さなドローンのような物体に組み込まれており、特殊な宇宙物質でできているため、レーダーで捕捉することもできないし、肉眼で目にすることもできない、透明体なのだそうだ。

 Merciful〜なぜ慈悲溢れる兵器なのか。アインシュタインによれば、評議会が攻撃対象と認定した要人を、通常兵器によって攻撃し抹殺するのは容易なことだそうだ。しかし宇宙の摂理によれば、どんな悪人であっても命を絶つことは許容されていない。従って、人格や性格、感覚、感性、判断力などを強制的に変質させ、穏やかで柔和な人格者に変貌させるのだそうだ。それでMerciful〜慈悲溢れる、という言葉が使われているという。

 なんとかことの次第は呑み込めた。しかし、一体私に何ができるというのだろうか。そこが一番腑に落ちなかった。

 アインシュタインによれば、地球上の全ての人間の妄想力をスキャン調査した結果、私が最も妄想指数が高かったそうだ。喜んでいいのか悲しむべきなのか・・・私には分からない。しかし、地球上のあらゆる圧政、陰謀、謀略などの全データは評議会が把握しているらしいのだが、目に見えないIVMWは、生体操作といい、機械的に動かせるものではないというのだ。つまり、最終的には妄想力、換言すれば特殊な想像力と洞察力を有する地球人との生体同期ができなければ、この兵器は正常に機能しない可能性が高く、攻撃対象者が逆に、かえって凶暴で残虐な性格になってしまう危険性をはらんでいるという。いかにアインシュタインといえども、そこまでが現時点での限界だとのことだった。

 さらに驚いたのは、評議会が決めた私のコードネームは、「憂鬱なテロリスト」だという。は?テロリストですか?という質問に、アインシュタインは笑うだけで何も答えなかった。地球上で使われるテロリストという言葉と、宇宙評議会のテロリストとでは意味の違いがあるのだろう、きっと。

 最後に、地球から瞬間移動で連れてきてくれた男が、私に質問した。どのような報酬を希望するか、という内容だった。あまりにも非現実的な時間を過ごしたためか、混乱した私は馬鹿なことを言ってしまった。ずっと以前に亡くなったネコのシロに会いたい、と言ってしまった。他に無いのか、と念を押されたが、何も思い浮かばなかったので、黙って頷いた。・・・そのとき、何やら白い小さな生き物が鳴き声を上げながら、足許に駆け寄ってきた。見るとなんと、まだ小さかった頃の姿のシロだった。こんなに嬉しい、感動の再会は無かった。

 そんなこんなで、今私は「憂鬱なテロリスト」として、地球上で待機している。宇宙評議会からの攻撃指令が来たら、生体同期させたIVMWを瞬時にターゲットのすぐそばまで空間移動させ、目視しながらゆっくりとスイッチをオンにするだけだ。

 あとは、翌日の新聞やテレビ、インターネットが発信する情報を確認するだけだ。すべての報道機関は、驚きをもって発信するだろう。多数の人間を銃殺し、暗殺したあの残虐非道な国家元首が、にこやかに微笑み、路上のホームレスを見れば歩み寄って自分の上着を差し出した・・・などなどである。

 私の存在を知る人は、この地球上には一人も存在しない。あの男とアインシュタイン、それと評議会メンバーだけである。・・・いやいや、忘れるところだった、かわゆいかわゆいシロにゃんも、私を遠くから見守ってくれている。

 誰にも明かせない秘密を持ってしまった、本当に憂鬱な私である。

(口止めされた出来事〜書き止めはされていない・・・終わり)

 もし、どこぞの国家元首が真人間の人格者になったとか、あるいは日本国内で政権や国家転覆を企てていると見られていた人たちが、突然憲法改正大賛成、安倍ちゃん大好き、などと言い出したら、それは私の「兵器」の効果だと、密かに思っていただきたい。


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by hirune-neko | 2018-07-22 01:30 | 創作への道 | Comments(0)
<< 旅行などとは縁の無い生活だが、... かなり殺気立った一日が、ようや... >>



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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