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昼寝ネコの雑記帳

自分自らを葬った後の余命を生きている


Astor Piazzolla - Muerte (Lumiere)

いつもクリックしてくださり有難うございます。とても励みになっています。


私の周りには、いろいろなテーマ毎に
深く詳しい知識を有する人たちが何人もいてくれて、
心強く思うことが多い。
ピアソラについて、ガルデルについて、タンゴについて、
フランス語について、スペイン語について、将棋について、
ギター演奏について・・・。

なのでこの作品のタイトルに疑問を持ったとしても、
その中の誰かが教えてくれるだろうと考えると気が楽だ。

ピアソラの作品のタイトルはスペイン語、イタリア語、
フランス語、英語などと多彩なようだ。
この、MuerteとLumiereという二つの言葉が並記されているのを
目にしたとき、ほんの僅かな知識しか持っていない私では、
Muerteがスペイン語で「死」を意味し、
一方でLumiereはフランス語で「光」を意味するのでは、と
思ってしまう。
同じ意味の言葉を、異なる言語で並記するのなら理解できる。
しかし、もし「死」と「光」という対極の意味の言葉を
並記しているのなら、そこには何か深い哲学的な意味が
あるのではないかと、つい考えてしまう。

昨日は長時間の外出で、しかも酷暑の中の大渋滞に巻き込まれた。

ようやく夜になって帰宅したのだが、珍しく変調を来した。
氷枕で後頭部を冷却し、目覚めたときには氷そのものが
すでに融けてしまっていた。
でも、体調と思考力はすっかり快復していた。
あれはもしかして、熱中症もどきだったのかもしれない。

つい今しがた、知人が主催するブログを久しぶりに覗いてみた。
テーマは神学・宗教であり、主にキリスト教に関するものだ。
31ものコメントが連続投稿されている記事があったので、
興味があり、ひととおり読んでみた。
記事のタイトルは「ゲツセマネの園と十字架」だった。
意見を述べ合ううちに、徐々にヒートアップし、
ついには相手を冷笑し、否定し、無知と罵倒する人もいた。
醒めた視点から何か書こうかとも思ったのだが、止めた。

言葉とは意味や知識を共有するためには便利なツールだ。
しかし、ひとつの言葉から共有できる表層の部分もあるものの、
仔細に定義していった先には、解釈の違いが厳然と立ち塞がる。
なので、一見便利そうに思える言葉には、実は不正確で
凶暴な要素も内包されている。そう思う。
なので昔から、論争は好まない。

先日、2・3歳の小さな男の子が、たどたどしく質問した。
「いくつなの?」
「3,016歳だよ」
そう答えると、子どもは理解不能の様子でうつむいたが、
一緒にいたお母さんは吹き出していた。

そうだった。
私はとっくの昔に、哲学的自殺・・・というと
格好をつけているように聞こえるかもしれないが、
そう表現するしか言葉が見当たらないので、敢えて自分では
哲学的自殺と思っている。
一度、自分自身の存在を払拭して無に帰せしめ、
今は死してなお、現実社会で余命を生き続けている。

なので周りの全てに現実感を持てず、3Dの世界で
通信機器を通じて対話しているようなイメージだ。

神学をテーマに議論に熱中し、仮にそこで合意が形成されても
それはあくまでも人間同士の自己満足の共有に過ぎない。
学問の世界では、知識や言葉を駆使して体系を構築するのだろうが
こと神学・宗教に関しては、おそらく生きているうちに
極め尽くすことは不可能だと思っている。

一度自分を埋葬してしまった人間として、
新たに死者の視点から、再度世の中の人の営みを傍観し、
さらにはその渦中で、ともに現実に生きる者として
永続しうる価値観・人生観を体系化したいと願っている。

あらかた全てを放棄した人間にとっては
それぐらいしか生きる動機を見出せないようだ。

改めて思うが、ピアソラの作品には、
死の予感と生への執着が不可分に湛えられ、
虚飾を排した陰影が見事に表現されているように感じる。
一連の、天使の組曲と悪魔の組曲を聴いていると、
言葉による空しい神学論争を超越した、ピアソラ独特の
死生観を感じる。

ピアソラ自身と神聖な世界とを隔てる幕は、実は
とても薄かったのだと思えてならない。
真に音楽的感性を授かった、希有な作曲家だったと思う。


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by hirune-neko | 2015-07-21 21:47 | 心の中のできごと | Comments(0)
<< 人間の存在にとって、本当の危機... そういえば、旅行なんて久しくし... >>



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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