昼寝ネコの雑記帳

久しぶりにクレモンティーヌがやって来た


Retrato Em Branco E Preto...♪Clémentine♪

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ん?
何やら香水の匂いがするぞ。
記憶にない香りだ。おかしい。怪しい。

そっと振り向くと、何もいわず顔いっぱいに
笑顔を拡げたクレモンティーヌが立っていた。

「なんだ、お前か」
「おじさんは、いつだって『なんだ』が決まり文句の
挨拶なのね。『おお、会いたかったよ』とか、もっと
気の利いたセリフをいえないの?」
「すまんすまん、考える前に口から出てしまったよ」
「おじさん、どうして腰痛ベルトを胸に巻いてるの?」
「長時間座ってると、最近、背中がつらいんだよ」
「せんぜん歩いてないんでしょ。血圧はどうなの?
血糖値はどれぐらいなの?もう、あんドーナツは
止めてるの?」

やれやれ、口やかましいのがもう一人現れたよ。
なんとか話題をそらさないと、かなわない。

「お前、もう浅草に行って来たのか?」
「うん、行ってきたわよ。梅園に行って
あんみつを食べて、舟和に行って芋羊羹を食べて、
雷おこしも食べちゃった。もう、とっても満足」
「そのためにわざわざフランスから飛んでくるなんて、
お前は本当に変人だね」

なんとか話題を変えるのに成功したようだ。

「そんな私的な用事のために、世界会議が
経費を負担してくれるはずがないでしょ?
ついでに浅草に寄っただけよ」
「ついで?なんのついでだったんだ?」
「決まってるでしょ、理事会が決めて議長命令で
おじさんの動静確認と、健康状態の把握、それと
東アジア情勢の詳細を、おじさんにレクチャーして
今後の対応を相談して来いっていうわけ」

本当にクレモンティーヌは災害と一緒で
忘れた頃に突然やって来る。

「おじさんの動静?おじさんは今年で3,016歳。
そろそろ隠居したいと思っているんだよ。
健康状態はだね、まあ小康状態かな?
でも来月からスポーツジムに行くことにしたんだよ」
「知ってるわ。息子さん夫婦と一緒に三人で
入会したんでしょ?」
「げっ!なんでお前、そんなことまで知ってんの?」
「だからいったでしょ。おじさんはすでに24時間
監視体制で言動が把握されているって。忘れたの?
大した神経ね。その割にはずっと品行方正で、
議長秘書の私も、恥をかかなくて済んでるの。
てっきり監視されてるから言動を慎んでると
思ってたのに、呆れたわね。忘れてたの?」
「ああ、すっかり忘れてたよ。最近は
思い出すことが多すぎてね」

久しぶりの登場なので、クレモンティーヌの名を
初めてお聞きになる読者のために、簡単に
説明しようと思う

クレモンティーヌは姪ネコで、私と同様、ときどき
人間の姿で行動する。
フランス・パリに本部がある「世界昼寝ネコ大会議」の
議長秘書を務めており、その大会議はヒマそうな私に
白羽の矢を立てて、とくに日本在住のネコたちが
安寧に暮らせるよう、協力を要請してきている。
いや、もっと正確にいうとクレモンティーヌが来ると
協力要請ではなく、命令口調の強制になってしまう。

クレモンティーヌはもともと、
フランスの避暑地ドゥーヴィルで生まれた。
産まれてすぐ母親が病死し、しばらくは私が独りで
面倒をみていた。
ああ、また当時のことを思い出すと気が重くなる。
とにかく、クレモンティーヌは私のことを
叔父だと思っており、そう思っているのが
一番いいと思っている。

「で、東アジア情勢がなんだっていってるんだい?」
「おじさん、ネコネット情報をちゃんと把握してるの?」
「一応毎日チェックしてるさ」
「じゃあまず、中国情勢から確認ね。中国が主導して
アジアインフラ投資銀行の設立を目指してるけど、
とうとうアメリカも激怒して、習近平総書記の側近の
不正蓄財の可能性を、アメリカの新聞に報道させたの。
汚職撲滅で国民的支持を拡大し、かつ
政敵を抹殺しようと目論んでいた習近平総書記には
大打撃よね。さらには、総書記の身内がかなりの
資産を保有していることも暴露されてるし。
中国経済の指標は官製なのでなのでアテにならないけど
かなり厳しい情勢であることは間違いないようね。
韓国の今年第一四半期の外国人直接投資額が3割近く
減ってるの。海外からの投資資金が、韓国情勢への
強い不安を反映してるわけね。
日本が6割減、欧州が8割減。驚いたのは
韓国すっかり頼り切っている中国もなんと、
8割減というとんでもない数字なの。・・・」

ソルボンヌ大学の大学院博士課程で、
国際政治経済を学び、首席で卒業しただけのことはある。
母親は音楽家だったが、誰の血を引いたことやら。

要約すると、
「日本を取り巻く国際情勢が
緊迫の度を深めているので、片時も目を離さず
緊急事態の発生に備えてね。野良ネコといえど
ちゃんと守ってあげてちょうだいね」
というのがクレモンティーヌの、
いや昼寝ネコ世界大会議の
理事会からの要請だということだ。
いや実際は、クレモンティーヌの厳命ということだ。

どういうわけか私は、クレモンティーヌに
頭が上がらない。
頭が上がらない女性が、実は他にも何人かいて
その無理な姿勢のせいで、背中がつらい状態に
なってしまうのではないだろうか。

いいたいことをいい終わると、クレモンティーヌは
さっさと引き上げてしまった。
本当に台風娘だ。

まだ香水の香りが辺りに漂っている。
香水を替えたようだ。
意中の男性でも現れたのだろうか。
それにしても、いつまで独身でいるつもりだろうか。

叔父の立場でも、心配のタネになっている。


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by hirune-neko | 2015-05-03 00:16 | インテリジェンス | Comments(0)
<< コンサートレベルの発表会だった ネコでも入学させてくれる大学院... >>



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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