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昼寝ネコの雑記帳

可能性を秘めた小さな男の子たち


Astor Piazzolla y Roberto Goyeneche - Chiquilin de Bachin

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クリスマスの小さな夕べを思い浮かべている

夜になると、駅前の通り沿いに青白く光る樹木がきれいだ。
無数の小さな電球に飾り付けられ、しばし目を奪われる。

ふと、ある家族のことが思い浮かんだ。
家庭内暴力が原因で離婚し、お母さんが一人で
小さな男の子二人を育てている。

お兄ちゃんが暴力の対象になっていたらしく
すっかえり心を閉ざしてしまっている。
まるで心の中から感情が消え失せてしまったような、
固い表情が今でも記憶に残っている。

クリスマスの時期には、街並みが新たな生命を
吹き込まれたかのように、表情を変える。
底冷えのする季節に、クリスマスツリーを飾り
プレゼントや温かい食べ物を囲んで
家族の明るい表情が弾んでいる。
どこの家にもありそうな、そんな光景の向こう側に
ひっそりと過ごす家族が目に浮かぶ。

サンタクロースが運んでくるプレゼントは
彼らの家を素通りするのだろうか。
それとも笑い声が部屋中に響くのだろうか。

10年後、20年後の男の子を想像してみた。
今の年齢で理解することは難しいかも知れないが
無事に成人し、社会人になり、やがて結婚して
自分自身の家族を持ったとき。
そして過ぎ去りしクリスマスの時期を思い出したとき、
彼の心には何が残っているだろうか。

本や暖かいセーターもいいだろう。
特大のクリスマスケーキもいいかもしれない。
でもなぜか、彼の心の中に残る何かを
プレゼントしてあげたいと思うようになった。

そうだ。
北極圏にほど近い北欧に、サンタクロースを養成する
子どものための学校があったことを思い出した。
あのストーリーは大人向けに書いたのだが、
設定を子ども向けにアレンジし、彼の名前を登場させて
読み聞かせてやろうではないか。
そして、中綴じの簡単な小冊子をちゃんと製本して作り、
クリスマスプレゼントとして、家族3人に手渡そう、
そんな考えが思い浮かんだ。

物語の中に自分の名前があると、子どもはとても反応する。
読み聞かせの先生が、
そのようにいっていたのを思いだした。

もしかしたら、退屈そうな表情で聴くかもしれない。
意味だって、ちゃんと理解してくれないかもしれない。
でもいつか、20年後か30年後の彼が、自分だけのために
物語を作り、製本までしてくれた大人たちがいたと、
そんな光景を、ふと思い出してくれるだけでも
十分なのではないだろうか。

小さな子どもの可能性は、ある意味でとても大きい。
しかし、周りの大人たちの接し方ひとつで
あっという間にしぼんでしまうのも、残念ながら
事実だろうと思う。

たとえ僅かな時間でも、小さな出来事でも
いつか思い出して心を開くきっかけになってくれれば、
それだけで嬉しく思う。

まるで世の中から忘れ去られたような小さな存在を
視野の中に入れ、心に思い浮かんだことを行動に移す。
それがクリスマスの精神の本質なのではないかと
ふと思っている。

ピアソラも、このChiquilin de Bachinを作曲したときは
親も家も失った境遇の子どもたちを、
心の中で思い描いていたのだろうと思う。



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by hirune-neko | 2014-12-10 00:56 | 心の中のできごと | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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