昼寝ネコの雑記帳

昼下がりのジャズバー

Janice Borla - "Remembering The Rain" (Bill Evans).mov


「昼下がりのジャズバー」

思わず目と耳を疑ってしまった。

Bill EvansのRemembering the Rainに
歌詞をつけて、しかも大ホールで歌っている。

この類いの音楽は、コンサートホールで歌うものではなく
都会のメインストリートを少し外れた、
閑静な住宅街近くで、ひっそりと営業されている、
それも階段を下りた地下で開業されているような、
そんなジャズバーで演奏されるのが似合っている。
そんな先入観と偏見があるため、一瞬驚いた。

薄暗い店の真ん中にはグランドピアノが置かれ、
そのピアノを囲むようにカウンターがある。
スーツ姿のサラリーマン諸氏が、
課長から次長へ昇進できるだろうか、
あるいはヘッドハンターから、他企業への
移籍をもちかけられたか、あるいは
長年のお得意さんを競合相手に取られたか・・・
いろんな葛藤を鎮めるために、
警戒心と張り詰めた緊張感をほぐしに
こんな店にやって来る・・・のではないだろうか。

共通しているのは、自分の人生はこのまま
惰性の流れに委ねたまま進んでいいのだろうか、と
ふと振り返り、そして先を考えてみる。
日本では残念ながら、才能があって独立開業しても
そう簡単には行かないだろう。
結局は現状に妥協し、ときどき独りの世界に逃げ込んで
束の間の安堵感を味わっている。

この女性ヴォーカルは初めてだが、
孤高の物憂げな空間に良く似合う。
それと、このピアノトリオも、名前は知らないが
寛げる演奏だ。

これは内緒の秘密の話しなのだが、
私がこうして仕事時間中に、あれこれ思い巡らし
あるいはボランティア的なことに労力を費やしていても、
不思議な力が働いて、難しい営業を
私に代わってこなしてくれている。
そんなアホな、と思われても、これは厳然たる事実であり
現に、先刻、こうしてブログを更新している最中に
産婦人科を営業対象としている企業の営業マンが、
それも日本のトップクラスの企業の、旧知の営業マンが
電話をかけてきた。
あれこれ打ち合わせて、商談をひとつまとめた。
これが突破口となり、本社扱いで
全国展開される可能性が見込まれる。

人に説明したら、奇人・変人扱いされることは
間違いないのだが、複雑で難解なジグソーパズルを
時間をかけてゆっくりと組み合わせているような感じで
理論と努力だけでは乗り越えられない、
いわば、ある種のインスピレーションなしでは
開くことのできない扉の鍵を、不思議な方法で
与えられていることを実感している。
妄想し、非現実な世界を構築しているのだと思うが
振り返ってみると、妄想は着実に現実化している。

私は、決して人間に傾倒せず、
地位や名声に寄り頼まず、ある種の孤高さを
生きる上でも、仕事上でも基本ポリシーとしている。
世の中の、「仕事ができる」人たちからは
馬鹿にされ、嘲笑の対象になるかもしれないが
プッチーニのボエームで歌われるアリア
「コートの歌」のように、いかなる権力や地位に対しても
卑屈に妥協し、腰をかがめることのない
そんな孤高さが、自分のアイデンティティだと
今さらながら、自分の頑迷さに呆れるとともに
もう一人の自分は、そんな自分に称賛を送っている。

そうなんだ。
私はおそらく、知らないうちに分身しており
一人は机の前で思索を続け、
もう一方の私は、外に出て人の心を動かし
営業マンとして奮闘しているのだろうと
そう考えれば、それなりに辻褄が合うので
そういうことにしておこうと思う。

ここは、昼下がりのジャズバーなどではなく
仕事場の、雑然とした環境のまっただ中なのだが
目に映るのは、昔、時々行ったことのある
そして今はもう存在しない、六本木の
ジャズバーに置かれたピアノであり、
ピアニストの演奏風景である。

今朝届いたメールの宛名を思い出した。
「おじじネコ様」・・・
5歳の孫娘からではない。
30歳になった、実の娘からのメールである。
精神年齢を疑ってしまい、親としての責任を痛感している。
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by hirune-neko | 2013-03-07 16:00 | 音楽・映画・本の世界 | Comments(2)
Commented by El bohemio at 2013-03-16 23:07 x
昼寝ネコさん
あなたが変人扱い?
やつと貴書を読み終わりました。
ほのぼのとする何事にも思いやり
あふれた心使いがあちらこちらの
エピソードに現われています。
とても企業の猛営業をこなす
社長氏には見えません。
社員の方も安心して仕事
.に励めることでしょうね。
Commented by hirune-neko at 2013-03-17 00:17
El bohemioさん

有難うございます。
拙著をお読みになって、少しでも安堵してくだされば
それが一番嬉しいことです。
ヘタレ営業ですが、少しずつシェアを伸ばしています。
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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