2012年の年頭所感
Albert Camus
まだ3時間ほど早いのだが、年頭の所感として 嘘偽りのないところを述べるとすれば、 私には死の予感があり、その終焉の前に 全てを吐き出して、空虚な心のまま 自分を昇華してしまいたいという衝動に 突き動かされている。 私は本質的に感覚的な人間であり 論理性とは単に、目に見えない感性に 形状と色彩のある衣を与えたものに過ぎないと思っている。 突き詰めれば、どの言葉も究極的には曖昧であるが 感性は饒舌に真相を語るからだ。 「いま在るところのものであらず 在らぬところのものであるような存在」とは、 サルトルの「実存主義」の中核を構成するが 多感だった十代の後半に、決定的な影響を受けたのは アルベール・カミュだった。 未だに、カミュについては多くを知らない。 だが、カミュの世界を構築する感性の世界は 私にとって、実に居心地のいい空間だった。 あれから四十数年が経過した。 今でも、佳き作品との遭遇は至福の瞬間である。 現実社会で生きる以上、生存するためには 社会の一員として根を下ろさなくてはならない。 生活の糧という養分を摂取するために。 しかし、多くの人たちを包摂し、支えるべき その社会自体が、崩壊の危機に瀕している。 他者に依存することなく生きることは困難だが、 自分自身の理念にのみ依存して生きようとすることには ある種の安堵感と誠実さが伴う。 死とともに消え去るものは多いが、 死せる存在に伴って存続するものも、実は多い。 ただ、それらは感性の眼で見なければ見えず、 気づく人が少ないだけのことなのだ。 ・・・たった今、鎌倉から袋入りの鳩サブレが届いた。 ぎりぎりの領域で暮らす数人の方が、お礼にといって 数百円ずつを出し合い、送ってくれたものだ。 これからの私は、鳩サブレを見るたびに この、心のこもった贈り主たちのことを思い出すだろう。 それほど、特別な想いを味わうことができた。 聖書の「はじめに言葉があった」という部分は 様々に解釈されているが、 私の場合は「最後の最後まで言葉があった」 と、自分で納得できるよう、 言葉を発し続けていきたいと思っている。 無数にある言葉から、いくつかを選んで 組み合わせる作業だが、 そこには感性力が不可欠であり、 適切な言葉を選ぶ感性が与えられるよう 心から願っている。 自分だけの力により頼まず、 天啓の閃きが与えられるよう願って止まない。 多くの善良な人々が、ある日を境に突然 苦難を背負う時代になってしまった。 しかし、いずれ重荷を下ろし、平安と安息が得られる 人智を超えた摂理があるということを心の糧として、 命がある限り生き続けようと思っている。 お読みくださった皆さんに 心よりお礼を申し上げたい。 2012年は、間違いなく動乱の年となるだろうけれど 生き延びていつか、再会したいと願っている。
by hirune-neko
| 2011-12-31 20:51
| 心の中のできごと
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Comments(4)
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romarin
at 2012-01-02 07:55
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あけましておめでとうございます。
大変な決意を抱いての年頭の言葉ですね。 お風邪はよくなりましたか? やはり東日本大震災が日本人(だけではないですが)に課した 様々なことはこのまま放っておけないしこのままにしてはいけないものですよね。 私もなんだかどうしていいかわかりませんが、とにかく自分のことを 大事に、自分がいかに幸せでいられるかを考えて生きて生きたいと思っています。 自分本位のようですが、それが結果的にほかに波及していくはずだと思っています。 どうぞご健康でよい年となりますようお祈り申し上げます。
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hirune-neko at 2012-01-02 19:25
romarinさん
おめでとうございます。 ご心配いただき、有難うございます。 咳とクシャミがずっと続いて なかなか抜けずに困っています。 年頭の抱負も、一晩寝たらどこへやら。 まあ、その日その日のコンディションと気分で のらりくらりと生きてゆこうと思っています。 昨年は、連続コンサートでお疲れ様でした。 今年もご活躍を期待しています。
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バイバブ
at 2012-01-06 16:32
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あけましておめでとうございます。
哲学的ですねぇ~にゃんこ先生! 大丈夫ですか? 頭にハゲできてませんか? 今年は、わたくし、量より質。 好きなモノを、、、、、好きな事を、、、、とことん深~く考えてみることにいたします。 今年もよろしくお願いいたします。
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hirune-neko at 2012-01-06 17:24
バイバブさん
おめでとうございます。 今年も宜しくお願いいたします。 頭のてっぺんが薄くなったねって言われますが 仕方がないですね。 哲学者にハゲが多いのでしょうかね? まあ、適当にマイペースで生きていきますので 引き続きおつきあいください。
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・1951年
小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。 ・1969年 中央大学経済学部入学 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。 ・1974年 同大学卒業 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。 ・2006年 現在に至る プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。 ・2010年 宇宙の旅 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。 ・現在 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。 お気に入りブログ
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