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昼寝ネコの雑記帳

別に奇をてらっているのではなく



昼過ぎに玄関のチャイムが鳴る。
私「どちら様でしょうか?」
客「川崎北税務署ですが」
私「ちょっとお待ち下さい」

実は、朝から暑かったので、
そのままドアを開けられる格好をしていなかった。
税務署の急襲だが、なんらやましいことはない。
ん?もしかしてデンマークの富豪の親戚が
私に莫大な遺産を残してくれて、その税務調査かも?
いやいや、そんなはずはない。

私「いやあ、お待たせしました」
ドアを開けると、
微笑みをまったく浮かべていない
男性が立っていた。
客「昼寝ネコさんですか?」
私「はい、そうですが」
客「○○○○○○の件でお話しを伺いたいのですが」
私「ああ、はいはい。まあどうぞ、お入り下さい」

不意の客ではあるが、私ごときのために
わざわざ急戦を仕掛けてきたのだから
無碍に追い返すわけにもいかないではないか。
席に着くと、客人は黒いカバンから
分厚い書類のファイルを取り出した。
少なくとも10センチはありそうだぞ。

そのファイルをめくりながら
あれこれ質問してきたのだが
昼寝ネコが背中にネズミの
ジョセフィーヌを背負っている
お馴染みの、カトリーヌ笠井さん作の
イラストがチラッと、目に留まり、
思わずほほえんでしまった。
この客人は、ずいぶん苦心して
あれこれ調べ上げたんだな、
・・・努力に敬意を表したくなった。

客「昼寝ネコさんは、
  時代劇の舞台脚本に着手されてますね?」
ほう、そう来たか。意外な一手だな、と思った。
私「はぁ、よくご存知ですね、そんなことまで」
客「守秘義務の関係で、情報元は明かせませんが
  いくつか当局が注目している部分があります」
私「は?舞台脚本に税務当局が注目するんですか?」
客「ええ。今回の作品は江戸時代の設定だと聞いていますが
  間違いありませんか?」
私「いかにも、その通りですが」
客「作風は、池波正太郎スタイルではなく
  藤沢周平に近いとか?」
私「そうですね。藤沢周平テイストでないと
  成り立たないストーリーなんです。それが何か?」
客「いや、それならそれでいいんですが
  時代劇なのに、音楽はピアソラをアレンジするとか?」
私「いやあ、驚いた。よくそこまでお調べになりましたね。
  ピアソラに何か問題でもあるんでしょうか?」
客「租税特別措置法の第18条2項にですね
  時代小説には海外の作曲家の作品を使用してはいけないとか
  そういう規定は書かれていません」
私「はあ」
客「しかしですよ。江戸時代の作品に、なぜピアソラなんでしょうか」
私「それを言いに、わざわざいらしゃったんですか?」
客「いえ、本題に入る前に、この点だけは
  明確にしておきたいんです」
私「そうですか。分かりました。
  ときにあなたは、鬼平犯科帳という作品をご存知ですか?」
客「ええ、池波作品で、ほとんど読んでいます」
私「あれは大正時代のお話しでしたか?」
客「いいえ、もちろん江戸時代です」
私「うん。でも、江戸時代なのに、なぜフラメンコを
  使用してるんでしょうかね?」
客「はっ?フラメンコですか?」
私「ええ。エンディングでは
  ジプシー・キングの曲を使ってますよ。
  私も最初に聞いた時は、思わずのけぞりましたけど」
客「本当ですか?池波正太郎とフラメンコ?」
私「嘘だと思ったら、聞かせてあげましょう」

こうして私と客人は、しばし標題の曲に聴き入った。
・・・なんていうことがあるはずはない。
実際にはもちろん非常に現実的なお話しであり
ほったらかしにしてあった休眠会社の
処理方法について、あれこれ協議し
大体の方向性を出した、という訳だ。
でも、ファイルに昼寝ネコのこのイラストが
存在したのは紛れもない事実であり、
日頃から、税務当局の調査能力には一目置いているが
改めて感心した次第だ。
たっぷりと2時間はお相手したが
考えてみたら、お茶もドーナツもお出ししなかった。
非礼ななことをしてしまい、悔やんでいる。
c0115242_0304392.jpg

by hirune-neko | 2011-06-09 00:30 | 創作への道 | Comments(4)
Commented by shishi at 2011-06-09 04:08 x
いやはや、日本の風景にジプシーキングとは、恐れ入りました。
でも良い演奏ですね。
Commented by hirune-neko at 2011-06-09 10:55
shishiさん

そうですね。
映画化された、池波正太郎の鬼平犯科帳の
エンディングテーマが、この曲なんです。
最初は本当にのけぞりました。
Commented by 天然木 at 2011-06-09 15:52 x
JINというドラマは、現代の医者が江戸時代に訳も分からず
突然タイムスリップしてしまいます。坂本竜馬暗殺を食い止めたい!
彼は歴史を変えたいという不可能なことに挑みます。
この中でカッケの治療に使われるのがドーナツなんです!
アンコも使いアンドーナツさえも江戸時代の人に
ふるまいます。この時代に揚げ菓子をつくって披露するんです。
本当に効果があるんだろうか・・・・
Commented by hirune-neko at 2011-06-09 16:10
天然木さん

ああ、それはですね
ちょうどその頃、江戸に居合わせた
私のご先祖様が、ヨーロッパで流行っていた
ドーナツを日本流にあんドーナツにして
レシピを広めた・・・という言い伝えがあります。
おそらく、その影響なのでしょう。
<< へえ、こんな解釈もあるんだね Oblivionを離れて >>



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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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