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昼寝ネコの雑記帳

高価な絵本



わが社の商品アイテムのひとつに
完全100%オリジナルの「メッセージ絵本」がある。
特定の人に、特別な気持ちを伝えていただく目的の
とても高額な絵本だ。
普段は赤ちゃんの名前を差し替えるだけの
定価3780円のグリーティング絵本がほとんどで
時折、オリジナルのメッセージ絵本に興味を持って
問い合わせがあっても、製作費を告げると
そのまま連絡が途絶えてしまう。

だがこのたびは違った。
男性のお客様からメールによる問い合わせ。
文章は自分で書きたいという申し出だった。
もちろん、それがベストである。
読むと、来月21歳の誕生日を迎える女性へのプレゼント。
原稿にはその女性の生い立ちが綴られ
そっと見守る優しい愛情がよく表れている。
ああ、いいお父さんだなと感心していたのだが
とんだ勘違いだった。
お父さんではなく、ボーイフレンドだったのだ。
その女性の写真が1枚送られ、それを絵にして欲しいという。
彼女が海外に行く前に手渡したいので、と
無理なスケジュールであることを恐縮そうに告げる。
装丁家に事情を話して協力を要請し、引き受けることにした。
急ぎなので、夜遅くに見積金額をメールで送る。
深夜2時前に正式な依頼の返信があり
翌日の昼には全額振り込んだとの電話をいただいた。
1冊が7万円以上になる絵本である。
これでも相当良心的な価格設定をしているのだが
それでも1冊の絵本に7万円も・・・。

編集作業をしながら思い浮かんだのは「至上の愛」という言葉。
男女の性差と、さらに自分自身の身辺のわずかな経験を
思い巡らして、果たして男性と女性のどちらに
純愛傾向が強いか考えてみた。
これは多分、性別によらず人格と感性によるものなのだろう。
でも、反論を気にせずに言えば、女性の方がリアリストであり
男性の方がロマンチストである、というのが個人的な見解だ。

さて、「至上の愛」で思い出すのは、
ジョン・コルトレーンが1960年代に演奏した
そのままのタイトルの「至上の愛」。
聴き直してみたが、神経と体力がもたず、中断した。
次に多い浮かんだのは、ヴェルディのオペラ「アイーダ」の
ラストシーン。ラダメスとアイーダの二重唱だ。
だが、20歳代で初めて聴いたときの感動が甦らない。
で、結局は冒頭の曲に落ち着いた。
プッチーニのオペラ「トスカ」のアリア。
日本語では「歌に生き、愛に生き」だったろうか。
曲の最後がちょっと切れてしまうが
このたびのクライアント男性に贈りたい曲だ。

この高額な絵本を彼女に手渡し、
驚き感動する彼女に向かって、
彼はこうプロポーズするのではないだろうかと想像している。
「かけがいのない君を、帰国までずっと待ってます」
で、まさか彼女はこうは言わないと思うのだが・・・。
「絵本に7万円も払ったの?
そんなお金があるんなら
餞別にトラベラーズチェックを買ってくれた方が
よっぽど有難かったのに。無駄遣いばかりするんだから」
by hirune-neko | 2011-01-26 12:41 | 音楽・映画・本の世界 | Comments(5)
Commented by フォアグラ肝臓 at 2011-01-26 20:12 x
いいお話です。
依頼者の男性の想いが伝わる事をお祈りいたします。
Commented by hirune-neko at 2011-01-26 20:46
フォアグラ肝臓さん

そうなんですよ。
やっぱり男性の方がロマンチストですよね。
Commented by 津留崎 at 2011-02-11 06:03 x
アンゲラ・ゲオルギューとかくのかな。
久しぶりに聞きました。いいですねVissi d'amore, vissi d'arte。
その昔無名だった頃アラーニャと共演で「愛の妙薬」の録音をしました。

Commented by 津留崎 at 2011-02-11 06:07 x
絵本の話は、いいお話と思いたいですね。
Commented by hirune-neko at 2011-02-11 16:45
津留崎さん

この歌手は全然知らない方でした。
歌と顔の両方の表情がいいなと思ったのですが
途中でひょっとして「口パク」ではないかと
疑いの目で見てしまい、反省しました。
まあ、オペラ歌手に口パクはないとは思いますが
でも確か、マイ・フェア・レイディのヘップバーンが
口パクだったと聞いたような気がします。
そんなことを考えて音楽を鑑賞するなんて
ちょっとひねくれていますよね。

アラーニャ・・・存じ上げませんでした。
愛の妙薬は、全幕の録音だったのでしょうか。
それともアリアの部分ですか?
「人知れぬ涙」はよく聴きますが
全幕を通して聴いたことがないんです。
劇場で時々はオペラの全幕を観劇できるような
生活パターンになるといいな、と願っています。
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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