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昼寝ネコの雑記帳

斜陽館への放浪記



青森空港発の午後5時10分までは、かなり時間がある。
そうだ、ほぼ30年ぶりに津軽鉄道に乗ってみよう。
斜陽館は外観を眺めただけなので、一度ぐらい中に入ってみよう。
昨日、太宰作品を朗読しているポーコさんと話す機会があったせいか
太宰が私を招いているような気がしていた。
せっかくなので行ってみようという気になった。
でも結局は津軽鉄道は利用せず、五所川原で借りた
レンタカーで、カーナビに頼りながら金木に向かった。

斜陽館の近くで「津島家新座敷」という小さい看板が目に入った。
ん?なんだろう。なんとなく気にかかる。
「ガイド付き500円」という看板があり、お願いすることにした。
勘当された太宰が母親の危篤で家に戻る。
その母親が病に伏していた和室。
母と対面し、泣くために逃げ込んだ洋室。
26作品を書き上げたという和室。
なんの理由もなく、感動がこみ上げて落涙する。
太宰の魂と濃密に対話したような、妙な感情だ。

私の祖父は40前に他界している。
写真でしか見たことはなく、母から聞かされた話しでしか
祖父を知らない。だが、心の中ではずっと尊敬の念を持っていた。
その祖父は金木村の生まれで、今は五所川原市の一部になっている。
太宰の生家近くに住んでいたと聞いたように思う。
そのせいか、「走れメロス」ぐらいしか読んでいないが
太宰には親近感を持っていた。
太宰が作品を書いた和室に座り、太宰が使用したという
火鉢にそっと触れてみた。
まるで天啓の何かのような電流が走る。
心の原風景に戻って来たような不思議な衝撃だった。

津軽の人たちは、感情が細やかで情が深い。
津軽弁、津軽三味線、津軽塗り・・・。
わずか2泊3日の滞在だったが、自分の身体の中に
津軽の血が流れていることを実感した瞬間だった。
by hirune-neko | 2010-11-20 23:29 | 創作への道 | Comments(2)
Commented by 静御前 at 2010-11-23 22:10 x
斜陽館を見学して来られたのですね
何度かはまって 作品を読みました
独特の語り口に惹かれ 
作家本人の生き方、人生に興味を持ち
関連本を何冊も読んだ時期もありました。
一度訪れてみたいと思う場所のひとつで
羨ましいですね~ 
Commented by hirune-neko at 2010-11-23 23:05
静御前さん

太宰がお好きなら、一見の価値がありますよ。
「津島家新座敷」はずっと小さく、斜陽館の近くに
ひっそりと建っていますが、ああ太宰はここで
作品を書いたんだ、と実感できて特別な場所になりました。
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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