昼寝ネコの雑記帳

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暑中お見舞い申し上げます

Gidon Kremer-Piazzolla Seasons (Summer)



暑気払いに、ピアソラの
「ブエノス・アイレスの夏」をお届けします。

一時間で自動的にクーラーが止まるように設定して寝ます。
一時間経つと、じわじわと寝苦しさが増し、目が覚めます。
また、一時間だけクーラーを動かしますが、
寝苦しさで、また起きてしまいます。

浅い眠りで見る夢は、そのときはとてもリアルなのですが
醒めてみると、あり得ない虚構であることが多いので
大概は砂に書かれた絵文字のように、波が寄せて戻ってしまえば
跡形もなく消え去ってしまいます。

誰かを隣に乗せて、薄い黄色の
ロールス・ロイスを運転していました。
「ああ、キャデラックよりでかいね。
ハンドルの切れが良くないや」
縁石ぎりぎりにこするように、立体駐車場を後にします。

市街地は、交通量が多く
道は徐々に上り坂になるのですが
気がついたら、かなり急勾配になり、
しかもついに、ロールス・ロイスは
いつの間にか、はしごをぐんぐん上っています。
さすがロールス・ロイス、排気量が大きいので
ほぼ垂直のはしごの途中で止まっても
アクセルを踏み込むと、ちゃんと上っていきます。
もう周りには一台のくるまも見当たりません。
ここまでついてくることができないのです。

見ると、行く手には、灰色の縞模様のネコが3匹だけ。
はしごを一段ずつ器用に上っているのですが
その都度、一番上の段とネコが消えてしまいます。
ほぼ垂直なので、とてももう下りることはできません。

覚えているのはここまでです。
言葉で言えば、進退ここに窮まれり、
といった感じで、選択肢が消失したのに
どうにかしようと、必死で考えています。

普通、物語には脈絡があり、起承転結があります。
でも、夢にはものの見事に現実性がありません。
現実生活を営んでいるからといって
人の心の中も、必ずしも事象が理論的に整然と
堆積しているとはいえないのと一緒です。

フランスで一番自殺率の高い職業は
店舗のレジ係だと、何かで読んだことがあります。
機械的に、スキャナーをバーコードに当てれば、
あとはコンピューターが合計金額を自動計算します。
客から受け取ったお札をレジに入れれば、
おつりは自動的に出てきます。
おそらく、お札が偽札ではないことまで確認して。

馴れてしまえば、きっとレジ係の女性の多くは
手や視線は間断なく動かしているものの
頭の中には嫌な思い出が甦り、心の中の虚ろさまで
重さを伴って忘れ去ることができない・・・・・・
でも生活のために、その場に居続けなくてはなりません。
そんな葛藤や拮抗が、知らず知らず
心のバランスを崩しているのではないでしょうか。

仕事を辞めて自由な時間を確保できれば
きっと、心も平静さを取り戻せるのに・・・・・・
でも、今週末には家賃を払わなくては。
来週は電気代と水道代・・・・・・。
なのに、別れた夫は失業を理由に
子どもの養育費を払ってくれもしない。
その子どもも、まだ小学生なのに
隠れてワインを飲み、タバコを吸っている。
校長先生から、話し合いに来るよう要請が来ているし。

とまあ、パリ郊外の小さなスーパーで働く
会ったこともない女性の日常を想像してみました。
誰にでも、眩しく輝く時期はあったのです。
将来が闇に閉ざされて、方向感覚も無くなってしまった
そんな女性が存在するように・・・・・・男性だってどこかで
似たような、進退窮まった境遇にあるのかもしれない。

個人的には、ヴィヴァルディの四季・夏よりも
ピアソラの、ブエノスアイレスの四季・夏の方が
苦渋に満ちた人間のそばに、違和感なく
並立できるような気がして、久しぶりに聴いてみました。

私?
私は相変わらず、頭が疲れたら
足下の床に寝っ転がってうたた寝し、
夢の中の虚構の世界と大して違わない
現実生活にどっぷり浸かりきって
今日もなんとか一日を終えようとしています。
お気楽な人生です。
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by hirune-neko | 2012-07-30 23:08 | 心の中のできごと | Comments(4)

この曲は知りませんでした

Bill Evans "Peace Piece"


知らなかったというより、印象に残っていなかったのでしょう、きっと。

演奏時期は調べないと分かりませんが
ビル・エヴァンスにしては、ずいぶん珍しい
フレージングの曲だと思います。
敢えて、普段絶対に使わない、前衛的な音階で
演奏しているのは、驚きでありまた新鮮な印象です。

人生が、何年周期で終息するのか考えたことはありません。
途中で雲散霧消してしまう人生もあるでしょう。
60歳という年齢は、ある意味の大きな節目かもしれません。
定年で仕事を辞め、年金生活に入る人も多いようです。

それまでの人生を振り返る時期でもあるのでしょう。
曲のタイトルはPeace Piece(ピース・ピース)で
まるでおやじギャグですが、おそらくは
平穏なひととき、というような意味合いなのではないでしょうか。
体力や精神力・気力のピークを過ぎて
できれば穏やかに人生を過ごし、
可能ならば静かに一生を閉じたい、
それは誰でもが、晩年に望む姿だと思います。

世界大不況で資産を喪失したとか、
国際的な大事件に巻き込まれて、政治生命を失うとか、
そういう類いのリスクを負うのは、晩年には似つかわしくない、
そのように思います。
肉体的な衰えは、避けがたいことですが、一方で
内面や感性の充実というのは、誰にでも
可能性のあることだと思います。

世俗や欲得を離れて世の中を眺めると、
実に身が軽く感じられ、洞察力も増すものです。
子どもにも領分があるように、
晩年の大人にこそ、ふさわしい領域が存在すると、
最近、思うようになりました。
とくに、人生の終焉が視野の一部にでも入って来たなら
真摯に人生を終えるために、必要か不要かの
判断は、より容易になるように感じます。

まだまだ多忙な日が続きそうですが
内省し、創作するに必要な時間を確保できるよう
願うばかりです。
・・・まだまだ雑念も相当に多くはありますけど。
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by hirune-neko | 2012-07-29 18:00 | 音楽・映画・本の世界 | Comments(0)

独房生活者の手記

Astor Piazzolla - Soledad


「独房生活者の手記」というタイトルが思い浮かんだが
確かドストエフスキーが、
似たような名前の作品を書いていたっけ。
あれは確か「地下生活者の手記」だったような。
それがどうしたと言うんだ。

初夏の朝は、ひんやりした独房も
背中から汗ばんでくる。
専用の便器に、専用の寝床と、そして専用の格子窓が
来る日も来る日も、唯一の見慣れた風景だ。

あれは去年の今頃だった。
看守からの通告があった。
模範囚として長期を過ごしたので、
朝は冷え切った食パンの代わりに
こんがり焼いてバターをたっぷりつけた
イギリスパンにしてくれるという。
ふむ。
それは有難い。
食べた気がする。
以来ずっと、毎朝、希望通りに
火傷しそうなぐらい、熱く焼けた
イギリスパンが届けられている。

しかしあの時、ふと疑問に思った。
一体どこが模範囚なのだろうと。
脱獄を諦めたから?
それとも、毎日欠かさず刑務所の敷地内を
決まって40分ウォーキングするから?
別に模範囚になろうと考えたことはない。

何年も独房生活をしていると
記憶が風化してしまう。
一体なんの罪を犯して
裁判にかけられたのだったろうか。
凶悪犯なわけはない。
政治犯?
いやそんなこともない。
思想犯?
自分の信念を曲げずに生きることが
思想犯だというのなら
甘んじて、その汚名を引き受けよう。

今はもう、誰も訪ねては来ない。
カードも手紙も手にしてはいない。

罪状はともかく、刑期は終身で保釈は無し。
付則がひとつあり、紙とペンを支給してはならない・・・。
なので、言葉を書き留めることは許されず
もちろん、投獄当初から手紙に返信することも
禁じられて、今日に至っている。

誰を恨むわけでもなく
自分の境遇を呪うわけでもなく
毎日、その日のみを生きることを日課にしている。
このまま死を待つのかと考えたこともあるが
ある日、眩しく輝く光りの訪れを見た。
人間は、いや人生というものは
死んで全てが終わるわけではない。
死してまた、そこから死後の人生が始まる。
突然、視界が開けるように
人生観が一変した。

毎年この時期に、何か特別のことがあるのか。
看守がやって来て、
まるで皇帝陛下の指示のように尋ねた。
何か欲しいものがないかと。

欲しいものなんて、考えたこともなかった。
自由?
たとえ独房に閉じ込められていても
魂は十分に自由だと思っていた。
洋服も不要だし、何もかもが
自分には無縁の世界に思えたから、
執着を感じるものは何もなかった。
看守が耳馴れない言葉を発した・
「アイパッド」なら支給できるという。
「肩パッド」なら分かるが、
なぜ眼にパッドが必要なんだ?
看守は笑って何も答えなかった。

翌朝、届けられたのは
「eye pad」ではなく、「iPad」だった。
先月の空調工事の際、
模範囚の独房にだけはwifi機器が設置され
おかげでこうして、ブログを始めることができた。
当初の付則は、国王の厳命によるものであり
その死後も変更できない決まりらしく、
未だに紙とペンは支給されていない。

しかし、今はこうして自由に文章を書き
すでに亡くなった作曲家の作品も聴ける。

来る日も来る日も、
冷たく重い石壁と対峙して生きてきたが
今はこうして、わずか10インチ足らずの、
格子の入らない窓から
世界を見ることができる。

独房の中で、
時間と空間の制約から逃れ
世界を脳裏に刻んでいる。
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by hirune-neko | 2012-07-17 22:37 | 心の中のできごと | Comments(2)

へえ、ビル・エヴァンスがお好きなんですか?

Bill Evans - Sometime Ago


あららら、もう2週間もブログを放置していました。
酷い日は、一日16時間連続就業で、脇見をすることも
できない状態が続いています。

2週間ほど前、子育て中の親向けセミナーがあり、
ボランティアで小さい子供の「託児」を手伝いました。
ドアの前にどっかと座り、子どもが出たがると
「どこいくの?」
「トイレ」
こんなやりとりを約2時間続けたのですが
段々子どもも飽きてきて、やがて集団脱走をするわけです。
追いかけて連れ戻してみるものの
また集団脱走の連続で、小さい子の
エネルギーは、常時充電中のようです。

託児を手伝ってくれた、ある男性が
ジャズファンだと誰かから聞いていたので
立ち話のついでに
「ジャズがお好きだと聞いていますが?」
「ええ、夫婦でライブを聴きに行くんですよ」
「とくに好きな演奏家はありますか?」
「パット・メセニーです、ギターです」
「ああ、最近の方ですね、聞いたことがあります」
「もう50歳ですよ」
「私が聴いてたのは、バーニー・ケッセルとか
ケニー・バレルや、ウェス・モンゴメリーですよ。
みんなもう化石でしょうね」
「パット・メセニーもオクターブ奏法で弾きますよ」

ん〜、なかなかマニアックな方だと分かりました。
「ビル・エヴァンスも好きですよ」
「へえ、そうなんですか。私もですよ」
「ワルツ・フォー・デビーは必需品です」

その、私は彼にメールでブログの中の
ビル・エヴァンスについて紹介した記事を送ったんです。
エリアナ・イリアスのヴォーカルと
エヴァンスのピアノ演奏で、たまたま
同じ曲を2曲、欲張って紹介した記事でした。
すぐに返信がありました。

「ジャズ研究会でも作りましょうか?」
「楽しそうですね」

こんな風に、人生なんて何が起きるか分からないものです。
人生なんて、予測がつかないものです。
私の全然知らないところで、仕事にとっても
プラスな事態が徐々に醸成されているかもしれないですし。
もともとは厭世的な人間を自負していますが、
もまれもまれているうちに、気がついたら
楽観的というか、達観的になってしまっているようです。

仕事が本当に忙しいと、頭も神経も目も手も、
本当に仕事一色で、何も視野に入りません。
ちょっと一段落して、ちょっとだけほっとしています。
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by hirune-neko | 2012-07-06 01:35 | 音楽・映画・本の世界 | Comments(6)



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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