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昼寝ネコの雑記帳

池田クレモナ・モダンタンゴ五重奏団のピアソラコンサート

Che Tango Che - Astor Piazzolla (cover)

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 なんとか無事にコンサートを終えることができて、ほっとしている。

 フルート、ソプラノサックス2本、ホルン、ファゴットの五重奏で演奏したのは、以下の曲だった。

1. Fugata(作曲:A.ピアソラ)
2. Adios Nonino(作曲:A.ピアソラ)
3. Ave Maria(作曲:A.ピアソラ)
4. 神の子です(教会の子どもの歌)
5. 神は造り主(教会の賛美歌34番)
6. cafe 1930(作曲:A.ピアソラ)
7. Duo de amor(作曲:A.ピアソラ)
8. Oblivion(作曲:A.ピアソラ)
9. Libertango(作曲:A.ピアソラ)

 教会のホールを貸していただいたこともあり、教会の子どもの歌と賛美歌が組み込まれた。子どもたちは生の管楽器の演奏を背にして歌った。緊張したようだったが、いい経験だったのではないだろうか。

 ピアソラの演奏を数多く聴いてきたが、その多くが人生の徒労を引きずり、歩みを止めて視線を虚空に漂わせているかのようだ。あるいは絶叫調の演奏もある。ピアソラの曲想をどのように再現するかは、演奏家の技術的水準というより、感性や心象風景によるところが大きいように思う。

 冒頭の「Che Tango Che」と同じタイトルのアルバムをリリースしている、池田クレモナ・モダンタンゴ五重奏団のメンバーは、全員が女性であり、しかも現役音大生、あるいは音大を卒業してまだ年数が経過していない、という圧倒的に若い世代である。ピアソラを歌う歌手を思い浮かべると、人生経験が豊富であり酸いも甘いも味わい尽くした「年輪」を感じてしまう。

 その点クレモナのメンバーは、この先に人生の起伏が待ち受けてはいるものの、無垢で清楚な魂のままピアソラの空間に飛び込んでいるかのようだ。音楽の演奏には、最低限の演奏技術が必要とされるのは言うまでもない。しかし、これはあくまでも私の持論なのだが、音楽には言葉と同様に聴く人間の心を開き、共感、感銘、感動を、その心に到達させる使命がある。奇をてらった間の取り方、表面的な形だけの技巧などは、音楽的感性を持つ聴き手に容易に見透かされ、空虚さだけが際立ってしまう。

 さりとて、若き女性たちが今すぐに、シャーリー・ホーンやレオ・フェレのような、時間経過を必要とする達観を身につけることは不可能だろう。今日、ステージの真横で演奏を聴きながら感じたことは「胎動」だった。何かが新たに生まれ、中心部分で膨張しつつあるという、ある種の予感だった。具体的なイメージは像を結ばなかったが、私の感覚は何かを捉えることができたように思う。

 音楽的表情・表現に深みとリアリティを与えるには、どうすればいいのだろうか。人と話しているときに、急に感情がこみ上げて言葉に詰まることがある。感極まってしまい、声が上ずることもある。数日前にYouTubeの動画を掲載した、レオ・フェレのアヴェク・ル・タンでは、感極まり言葉に詰まった表情を見るうちに、感動が大きなうねりとなって伝わってきた。

 池田クレモナ・モダンタンゴ五重奏団には、梶野元寛さんという音楽監督が存在する。五重奏団が脱皮を続け、成長することを見守り叱咤激励している。私自身は何もお手伝いできないが、何が変貌のきっかけになるだろうかと考えている。今日ひとつだけ思い浮かんだのは、演奏者の感情が溢れ出し、ちょうど言葉に詰まるように自然に間が空いてしまう・・・そのような表現が加われば、音楽的表情に深みと厚みが増すのではないか、そして聴き手に対するメッセージが増幅するのではないか、という付加価値だった。

 私にとっては念願のピアソラ作品のみのコンサートだった。プロデュースと司会を務めさせていただき、晩年の人生の佳き思い出となった。以下に、今日の出演者の皆さんのお名前を残し、記念とさせていただく。またさらに成長し、ピアソラに清楚に反逆する彼女たちの演奏を聴きたいと願っている。

【池田クレモナ・モダンタンゴ五重奏団】
・フルート:森脇 佑季/大阪音楽大学4年
・ソプラノサックス:上野 舞子/関西(かんせい)学院大学4年
・ソプラノサックス:山本 桃実/相愛大学4年
・ホルン:松田 あやめ/大阪音楽大学卒業
・ファゴット:久保田 ひかり/京都市立芸術大学卒業
・音楽監督/編曲:梶野 元寛/

 ああそういえば、司会者の特権で音楽監督の梶野さんの、恋愛遍歴をお訊きしようと思っていたのに失念してしまった。残念なことをした。


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by hirune-neko | 2017-11-26 00:22 | 音楽・映画・本の世界 | Comments(0)
<< 何事も一朝一夕ではできないだろ... 改めてピアソラと向き合う時間を持った >>



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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