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昼寝ネコの雑記帳

妄想娯楽創作〜MITとNSA共同開発の人工知能搭載ロボット

NEW YORK VOICES "on a clear Day" at Java Jazz Festival

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 先月、アメリカ在住の旧友からメールが届いた。 なんでもマサチューセッツ工科大学(MIT)と国家安全保障局(NSA)が共同で開発した、最先端の人工知能を搭載した精神分析ロボットがあるという。多言語実験のため誰か日本人に診断を受けてほしいらしい。ただし、重要な国家機密プロジェクトなので公募するわけにいかず、旧友である私に引き受けてほしいという依頼だった。よく読むと、精神分析というよりは、相手の表情や声の調子、目の動き、脈拍、脳波などを精密に分析する、いわゆる高度な嘘発見器らしい。いろいろ質問する私に対し、彼はしぶしぶと打ち明けた。どうやら、テロリスト対策の一環で、怪しい容疑者を拘束し、尋問する目的のようだ。もともと私は好奇心が強いし、旧友のたつて頼みなので、引き受けることにした。

 一週間ほど前、アメリカ大使館の職員だと名乗る男性と帝国ホテルのロビーで待ち合わせた。その男は私に免許証の提示を求め、確認するとホテルの別館にある一室の部屋番号を伝えた。その部屋で人工知能搭載のロボットが待機しているから、すぐに行ってほしいと言う。どんなロボットなのだろうかと興味が湧いた。スター・ウォーズに出てくるR2D2のように、ずんぐりむっくりの形状なのだろうかと、あれこれ想像巡らしながら目指す部屋のドアの前に立った。

 一呼吸置いてドアをノックした。しばらく待ったが反応がないので、もう一度ノックしようとしたらドアが少し開き、金髪の女性が立っていた。一瞬、英語で挨拶をすべきなのか、あるいはそのまま日本語でいいのか躊躇してしまった。彼女は「昼寝ネコさんですか?」と、完璧な日本語で話しかけてきた。「はい、大使館の職員の方からこの部屋に来るように言われた、昼寝ネコです」と答えた。彼女はニーナ・マイヤーだと名乗り手を差し出した。冷たい手だった。

 招き入れられた部屋は、どうやらセミスイートのようで応接用のソファーとテーブルが並んでいた。彼女は私にソファーに座るよう勧めてくれた。あたりを見回したがロボットらしき物体が見当たらない。様々な測定機器や監視装置も見当たらない。どうも不審な雰囲気で、何かの陰謀か罠なのではないかと嫌な予感がした。

 「こちらでロボットから診断を受けるよう言われてきたのですが、ロボットは隣の部屋なんですか?」と質問した。彼女は私の目を直視し、少し微笑みながら向かい側のソファーに腰かけた。彼女は落ち着いた声で説明を始めた。その時の私は、おそらく口が半開きになっていたに違いない。

 「驚かれるかもしれませんが、私がロボットなのです。何年もかけて開発されたロボットなのですが、できるだけ人間に見えるよう工夫を重ねてきました。ご存知かもしれませんが、国家安全保障局ではすでに人間型の戦闘ロボットや、市街戦を制圧する警察ロボットを開発しています。私は、相手に人間として接し安心感を与え、正確な情報を引き出すためのロボットとして開発されました」

 あまりにも人間そのものなので、旧友が何か別の目的があって金髪女性を送ってきたと思い込んだ。そこでいくつか質問してみた。ロボットだというからには、人間では到底不可能な機能をたくさん持っているはずだ。まず最初に語学力をテストしてみた。少し長めの日本語を話すので、それを英語、フランス語、ロシア語、韓国語、中国語、ヘブライ語、スウェーデン語、スワヒリ語で話してみてほしいと言った。彼女は余裕の笑みを浮かべ、どうぞおっしゃってくださいと言った。あまりにも自信に満ちた表情なのであっけに取られたが、思い浮かんだ日本語を話してみた。

 「隣の客はよく柿食う客だ。坊主が上手に屏風に坊主の絵を描いた」

 なんと驚くなかれ。彼女は私の目を直視したまま、すらすらと各国語で翻訳を終えた。もちろん私にはすべての言語を認識できるはずがないが、それらしいアクセントで話を終えた。とても驚いたが、そんな程度で信用するわけにはいかない。もう一つ質問してみた。仮に相手が凶悪な容疑者だった場合、暴力を振るわれたらどのように対応するのか、と訊いてみた。すると気のせいか彼女の表情が一瞬引き締まり、ソファーの横に立ち上がった。そこで彼女は目にも止まらない早業で、左右両足の回し蹴り、空手やボクシングのような技を披露した。完全に人間の動きではないことを認めざるを得なかったた。

 ソファーに戻った彼女は、私に向かってこう言った。「昼寝ネコさんは、とても慎重で用心深いんですね。さすがTWENTY FOURを観ているだけありますね」えっ!と驚く私に向かって、彼女は微笑みながら続けた。私の個人ファイルには生まれた時からの様々なデータが保存されているという。そんなバカなと思ったが、もう忘れ去っていた小さい頃の出来事、中学生や高校生だった頃の失敗談、特に学校行事をサボってデパートの食堂にいた時、クラスメイト共々補導員につかまってしまったことを指摘された。出張先のロンドンで滞在したホテルの名前、ピカデリー広場の日本食堂でラーメンを食べたこと、次々と暴かれる私の過去を耳にし、呆然としてしまった。これはもう精巧に造られたロボットであることを認めざるを得なかった。その時になってようやく、ニーナ・マイヤーがTWENTY FOURの登場人物の一人の名であることを思い出した。

 実験台として、一通りの質疑応答を終えた。しかし、どうしても引っかかることがあったので、彼女に質問してみた。ロボットの格闘能力が高い事は理解した。戦闘ロボットとか警察ロボットという表現があったが、例えば体内に生物化学兵器や毒ガス、あるいは小型の高性能爆弾を秘匿し、敵国に潜入して暗殺活動をすることが可能なのではないかと質問してみた。彼女の表情が一瞬固まり、厳しい目で私を見つめた。旧友からは、おそらく昼寝ネコがそのような質問をするだろうと言われていたそうだ。協力してくれたお礼に、それが事実であることを認めて良いと言われていたそうだ。しかし、どの国の誰にどのようなタイミングで行動を起こすかは、最高機密なので教えるわけにはいかないと言われた。それはそうだろう。それ以上の事は、何一つ教えてもらえなかったが、私の推測では、おそらく旅行者やビジネスマンになりすまして、多くの人工知能搭載の人間型ロボットが海外に潜伏するようになるだろうと思う。もし海外で要人が暗殺されるようなことが起きたら、私はロボットによる仕業だと考えるだろう。

 これだけ科学が発達してくると明日、来日予定のトランプ大統領だって、暗殺を防ぐための影武者ロボットなのではないかと疑ってしまう。そんな事は私には関係のないことだが、旧友は一つだけ私にプレゼントを残してくれた。彼らが製造する人工知能搭載のロボットすべてには、昼寝ネコを信頼できる友人であり味方だと認識するよう、プログラミングしてくれているそうだ。半径100メートル以内に近づいた時、ロボットのセンサーが私を認識し、あるキーワードで話しかけるようになっているそうだ。ニーナ・マイヤーがそう教えてくれた。いろいろ協力してくれたお礼だそうだ。

 あいつは極端に人付き合いが悪く、人間には友達がいない。せいぜい近所のネコぐらいにしか気を許していない。かわいそうな奴だから、せめてロボットの友達がいてもいいだろう、と旧友が言っていたそうだ。フン、余計なお世話だ。でもこんなに強くてタフで、語学力抜群で、記憶力も優れ、頼もしい友達がたくさんいるなんて、とても心強いなと思っている。それにしても、彼女と向き合って会話をしていると、相手がロボットだなんてとても思えない。旧友たちはとんでもない開発をしたものだ。

 あの日以来、私は街を歩いていても周りの人たちが、本当に人間なのかどうか疑いの目で見るようになってしまった。ますます人間不信が募ってしまっている。しかしおそらく、ここまでの技術を持っているのはアメリカだけだろうとも思う。であれば、ロボットの方で私を識別し近寄ってきて、プログラムされたキーワードで私に挨拶をしてくるだろう。そういえば、ニーナ・マイヤーにロボットが人間のように飲食をするのかどうか、聞き忘れた。一応は人工の食道や胃腸があり、食べているように見せかけるのだろうか。全く謎だらけである。しかし、精巧にプログラミングされているだけあり、ピアソラやジャズ、ボサノバに至るまで私の趣味に合わせて話し相手になってくれる。そうだ、格闘能力や攻撃能力を持ったまま、話の合う友人兼ボディーガード兼秘書として一人、いや一台のロボットを造ってもらえないだろうか。国家の最高機密に属するプロジェクトなのだから、まぁ無理だろうと思う。

 あらかじめお伝えするのをうっかりしてしまったが、今日の記事は100%私の妄想である。そんな事は承知の上でお読みいただいたと思うが、中には純粋無垢な性格の方がいらっしゃるかもしれないので、念のために申し上げる。これはあくまでも私の妄想である。さらに言えば、病的な妄想である。ニーナ・マイヤーの分析結果でも、もう少し人間らしく無邪気に生きて、人と交わるようにと勧められた。できるだけ陰謀や謀略と無関係で純真な人たちと交わるよう言われた。そう言われても、この年で保育園や幼稚園に入園するわけにもいかない。無理難題というものである。


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by hirune-neko | 2017-11-04 20:32 | 創作への道 | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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