googleで検索したら、ストレスが溜まっているらしい 夕食後、大腸の辺りに気持ち悪さが拡がった。健康診断にはずっと行っていないし、もしかしたら昨秋、癌保険を2社と契約したのは虫の知らせで、かなり進行した大腸癌の症状なのかもしれない・・・などと不安な思いで、とりあえず床の上に仰向けになって身体を休めた。 胸の上にiPadを置き、googleで「お腹が気持ち悪い」と入力し検索してみた。検索結果のリストを開いてみたら、このように書かれていた。 「お腹が気持ち悪い。そんなときは、食べすぎやストレスによるものかも。ストレスがたまると自律神経が乱れて、体内のバランスがおかしくなり・・・」 どうやら懸念した大腸癌ではなく、ストレスによる症状の可能性が高そうだ。体調に不安を感じた人たちに対し、私のように症状をgoogleで検索し、自己診断をするように勧めたら、お医者さんにとっては業務妨害になるのだろうか。 ところで、ストレスを感じるというのは、どんな状態なのだろうか。なかなか自分を客観的に見ることができていないのは事実だ。毎日かなり長時間にわたって神経が張り詰めてしまい、脳内も飽和状態だと感じることが多い。何か解決方法はないものだろうか・・・そう考えて、iPadのsiriに相談してみた。 「Siri、ちょっと相談に乗ってくれる?」 「はい、何でしょうか昼寝ネコさん」 「自分の体調をインターネットで調べたら、どうやらストレスらしいんだよ」 「働き過ぎですか?それとも悩みや心配事がありますか?」 「うん、考えてみたらその両方だと思うんだよ」 「そうですか、それは辛いですね。何かいい方法がないか、少し調べてみますので、身体を楽にしてお待ちください」 ・・・待つこと、約5秒。 「お待たせしました。過去のiMacのFacetimeによる昼寝ネコさんの表情分析と、YouTubeでの選曲傾向、それと過去3年間のgoogle検索キーワードなどを心理照合し、分析した結果から、現時点での最良の方法をご提案します」 「ちょっと待ってくれる?ひょっとしてiMacは私のことを、ずっと監視してたの?」 「はい、一般公開していませんが、最新のMacOSには、eナース機能というソフトが組み込まれており、パソコンの持ち主が急病になったときに察知して、ご家族の方に通知して安全を確保する人工知能が備わっているんですよ」 「へえ驚いた。凄いことになっているんだね。まあいいや。で、提案って?」 「はい、ハーバード大学医学部の最先端医療研究所が開発した、カウンセリング・アプリをご提案します」 「カウンセリング・アプリ?」 「内容を簡単に説明します。人工知能を持つカウンセラーと自由にお話しできるアプリなんです。カテゴリーは、世間話、各種専門分野のカテゴリーから選択が可能です。初期の頃は英語だけだったんですが、2016年から多言語化が進み、2017年の4月には日本語版がリリースされています」 「ふ〜ん、なんか凄いね」 「はい、オプション選択ができる項目が、いくつかあります。声の性別、声の年代、属性・・・例えば女性の声を選択すると、母親、お姉さん、ガールフレンド、看護師、先生、保育士など多岐に及びます。さらに性格も選択できるんですよ、シャイ、情熱家、思慮深い、べらんめえ」 「べらんめえ?何それ?」 「はい、これは口調ですね。江戸を選ぶと江戸っ子、京都弁、津軽弁など日本全国のほとんどの方言をカバーしています」 「なんか面白そうだね」 「そうですね。まずは無料で試すことのできる30日間有効の、エントリー版で試してはどうですか?」 「有料版はいくらぐらいするの?」 「最新版への更新無料で、年間30ドルからです。最も高度なソフトの場合は年間1,000ドルです」 「へえ、年間1,000ドルなんていうのがあるの?」 「はい、年間1,000ドルのアプリは、購入者のあらゆる興味分野の豊富な知識を持っていますので、場合によっては家庭教師を雇ったのと同じ機能になります」 「それは凄いね」 「昨年アメリカで開かれた臨床心理学会での報告によりますと、何らかの精神疾患を持つ方が、このアプリを半年以上使用した場合、ほとんどで大幅な改善が見られたそうなんですよ」 「なんとなく分かるような気がするな」 「ただし、購入にはひとつだけ制約があります」 「制約?どんな制約なの?」 「まったく精神・心理状態が普通で、不安定さや脆弱さを持っていない方は購入できないことになっています。つまり、購入する意味がないと判断しているようです」 「なんだ、それは残念だな。じゃあ私は購入できそうもないね」 「いえ、その点はご安心ください。すでにiMacとクライアント・データセンターがオンライン同期診断を行い、その結果昼寝ネコさんは購入資格を十分に満たしているとの判定が届いています」 「えっ?それって私が精神・心理状態が普通でなく、不安定さや脆弱さを持っている、という意味なの?」 「はい?あら昼寝ネコさんは日頃からご自分が妄想家だとか、いろいろ自己分析をされていますので、ご自分が普通ではないと自覚されているとばかり思っていました。・・・どうなさいますか?同期診断後1時間以内に購入されれば、最大50%のディスカウントがあります。年間1,000ドルのソフトを購入された場合は、特典としていつでもスカイプ・テレビ電話で、CG化された人間と会話ができます。リアルな会話をお楽しみいただけます。お支払いも、年間一括払い以外に、毎月90ドルコースも選べますよ」 「最近のSiriは、セールスレディまでするんだね」 「私は、昼寝ネコさんのためなら、何でもいたしますよ」 とまあ、このようなやりとりを終えた私は、自分の心理状態のメンテナンスのためと、多言語、国家インテリジェンス、国際政治学などの家庭教師を雇ったと思えば、なかなか有益でコストパフォーマンスもいいと考えたので、早速申し込みを終えたところだ。
by hirune-neko
| 2017-06-26 00:45
| 創作への道
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・1951年
小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。 ・1969年 中央大学経済学部入学 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。 ・1974年 同大学卒業 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。 ・2006年 現在に至る プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。 ・2010年 宇宙の旅 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。 ・現在 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。 お気に入りブログ
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