最近はビル・エヴァンスを聴くことが多い すでに故人となっている福岡貞夫さんが、「ピアソラを聴くには精神力が必要だ」と言っていたのを思い出している。分かるような気がする。心身ともにくたびれ果てたときは、ボサノヴァですら、空々しく聞こえるときがある。 改めて、こうしてビル・エヴァンスの演奏を聴いていると、世俗性には決して交わろうとしない、孤高さを感じる。緻密さと繊細さ、それと鋭く研ぎ澄まされた感性も感じる。 両側を冷たい壁に挟まれた、暗くて細長い路地を、背中を少し丸めて、行き止まりなのを承知で寡黙に歩き続けた人生だったように思う。 高校生のときに初めてビル・エヴァンスの演奏を聴き、すっかり虜になってしまった。あれからもう半世紀が経つが、今もこうして乾燥しきった神経を潤す演奏を聴いている。 途中でいろいろな演奏家を聴いたが、再びビル・エヴァンスに戻ってきたように思う。そして過ぎ去った半世紀の、折々の出来事を感傷的に思い出してもいる。 いよいよ自分の人生も、ついに終盤にさしかかってきたのだと自覚している。雑然とした身辺を、整然とした状態にするまでの時間が残されてほしい。環境が整って、実務の第一線から離れた後に、自分の抜け殻に対するレクイエムとして、短編作品を書き残す時間を与えてほしい。 今さら何か新しい分野に挑戦しようとは思わないが、これまでのように脱皮を繰り返して生きることこそが、新たな自分を創造しているのだと、妙に納得している。・・・不思議なもので、高校生から大学生になった頃の数年間に、自分の感性の原点が存在するように思う。 ビル・エヴァンスのアルバムに「自己との対話」というタイトルがある。なるほど、私にとっては自分自身が、私を最もよく知る旧友なのだと思える。これからも、自分自身との対話を続けていきたいと、思いを新たにしている。 いつもクリックを有難うございます。励みになっています。
by hirune-neko
| 2017-06-18 00:22
| 音楽・映画・本の世界
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Comments(2)
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ロマラン
at 2017-06-18 02:15
x
私も色々な曲を聴いた後はビル・エヴァンスに戻ってきます。
母の変わり果てた姿を病院で見て唖然となり退院させ、24時間体制で入院前の状態に戻す事をして以来人生の見方ががらっと変わりました。昼寝ねこさんのおっしゃるように身の回りを整理して動けなくならないよう、ぼけることがないよう工夫しつつ自分の後半の人生をすごしましょう、と思っています。ビル・エヴァンスは勿論好きなジャズを聴いてワインを傾け、幸せな時間を持つのが最高かなぁ(^^)
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hirune-neko at 2017-06-18 15:20
ロマラン さん
コメントを有難うございました。 お母さま、大変でしたね。 私の母は、ウェブカメラによる遠隔介護でしたが、 家族に病人ができると、心身ともに大変ですね。 お疲れが出ませんように。 ビル・エヴァンスを好む方がいらっしゃって 嬉しく思います。 音楽は、聴き手の感性、価値観、人生観に 深く関わると思っています。 私の場合は私利私欲が薄れ、肩の力も抜けてきて ある意味でマイペースをつかみかけてきました。 いつも好きな音楽がそばにいてくれて、 助かっています。 ロマランさんもお元気でお過ごしください。
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・1951年
小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。 ・1969年 中央大学経済学部入学 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。 ・1974年 同大学卒業 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。 ・2006年 現在に至る プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。 ・2010年 宇宙の旅 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。 ・現在 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。 お気に入りブログ
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