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昼寝ネコの雑記帳

生まれて初めて、中国語学習を体験した


Julia Zenko Chiquilín de Bachín


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 かつて大空を自由に飛翔していた鳥が、今ではすっかり老いてしまい、大きな幹の中に作った巣に閉じこもってばかりの日々を送っている。少し目がかすみ、方向感覚も鈍っているように思えたが、ある日、何を思ったか昔のように大空を羽ばたけると思ってしまった。

 老いた鳥は巣から出ると、そっと枝沿いに進み出た。試しに羽を拡げ、バタバタと動かしてみた。掴んでいた枝から足を離し、空中に飛び立とうとした瞬間、飛び方が記憶の彼方に消え失せてしまっているのを自覚した。愕然として身動きできなくなってしまった。自分の中枢機能が失われている・・・一瞬、記憶喪失者になり、現実感を失ってしまった。

 それが今日の私の姿だった。

 中国語会話教室の開講初日の案内を受け取り、どういう訳か試しに行ってみようと思った。いつか中国に行ってみたいと思っているわけではないし、将来、中国語を必要とすることがあるという予感もない。せっかくのお誘いだし、好奇心も手伝って足を運んだ。

 約90分の授業だった。講師は中国人女性で、標準語である北京語を教えてもらった。簡体字は初めて目にするので、まったく読めなかった。日本語でいうところの読み仮名には、どういう訳かローマ字が使われるらしい。初めて耳にする中国語独特の発音とアクセントに神経を集中した。

 模擬レッスンで、実際に中国語で自己紹介、他己紹介をさせられたが、頭の中が真空状態になってしまった。見馴れない文字聞き慣れない発音。自分の吸収力が大幅に退化していることに愕然とした。

 かなり時間が経った頃、もう一人の中国人女性が参加した。高校から日本に留学し、日本の大学を卒業しているというだけあって、とても流暢な日本語を話す。質問を受けてくれたので訊いてみた。

 「日本やアメリカでは、意見を自由に述べることができるが、中国では政府が検閲を行っていると聞いている。大多数の一般国民は、そのことをどのように捉えているのか」

 すると即座に、その日本に留学していた女性が、私の質問を遮るように言った。

 「その質問は、授業の内容とは直接関係がありません」

 ふーん、なるほど。そういう対応をするのか、と思った。私にはこれまで、中国人と接触を持った経験がない。従って、平均的な中国人が、自国をどのように評価しているのかを知りたかった。ずいぶん以前だが、アメリカ行きの飛行機で隣に座った韓国人に、政府の国家運営の手法が正しいと思うか、と質問したことがある。するとその女性は一瞬、「Yes」と言ったきり、怯えたような硬い表情になってしまったのを、今でも憶えてる。

 この中国人女性は、中国の情報機関に所属する人物かもしれないし、そうではないかもしれない。逆に私が、中国共産党政府当局の意向を受け、日本に滞在する中国人の思想調査を行っている人間だと警戒し、話題をそらしたのかもしれない。

 お互いに腹の探り合いになったのかも知れないが、ある意味ではそれぐらいの警戒心があってもいいのではないだろうか。 私は比較的、何気ない会話から、その人物の背景を探り出す嗅覚を持っている方だと思っている。そのせいか、必要以上に個人的な人間関係を増やす気にはなれない。本質的に、警戒心が強いのかもしれない。

 自分で勝手気ままに人物像を創り上げ、創作の世界に浸りきっている方が、遙かに居心地がいい。おそらく、雑踏には出て行かず、ひっそりと静かな部屋にこもって、売れるか売れないか知れない短編作品を書いているのが、最も性分に合っているのだと、今さらながら自覚している。
 
 負け惜しみを言うようだが、フランス語かスペイン語、あるいはイタリア語かドイツ語だったら、ずっとましな対応ができたという自信はある。ヘブライ語もロシア語も、さらにはアラビア語も、今では視野の外に追いやっているが、どういう訳か不思議と語学に対する関心度は高い。自由な時間に乏しいのが、つくづく残念で仕方がない。

 でも、いつまでも好奇心旺盛でいたいと思うし、どれだけ老化しても、仮想空間では自由に飛翔できると思い込んで、妄想世界を大事にしたいと思う。

 途中で、コップを倒してしまい、キーボードが使用不能になってしまった。このキーボードは、かなり以前、やはりコップの水を被ってしまい、使用不能になっていたものだが、捨てずに取っておいた。なんとか代役を務めてくれて、有難く思っている。


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by hirune-neko | 2017-05-11 02:35 | 心の中のできごと | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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