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昼寝ネコの雑記帳

Webマーケティングを凌ぐ感動のマーケティング手法

Isn't it a Pity - Shirley Horn


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 どの企業も、商品をいかに多く売るかに腐心しているはずだ。一定水準以上の売り上げがなければ、企業は徐々に衰退しやがては活動を停止せざるを得ない。

 マーケティングという言葉は、ずっと昔から存在する。ここ数年はインターネットを活用した、ダイレクト・レスポンス・マーケティング、最近はWEBマーケティングと称して、FacebookやTwitterあるいはGoogleを活用したマーケティング手法を勧める企業が増えている。

 中には、ちょっと首をかしげる誘いのメールが頻繁に入る。クリックするだけの仕事で、月に何十万円とか何百万円の収入になる、と説明されている。いわゆるアフィリエイトといわれる、仕組みなのだろうと思う。

 そのような、いくつものハイテクなマーケティングと比べ、ローテクを通り越して伝統的というか、古式豊かというか、実にユニークなマーケティング手法を目の当たりにし、新鮮な感動を覚えた。

 昨日、知人から電話があり千歳船橋を歩いていたら、りんごの行商をしているトラック(実際はリヤカーだったと指摘あり)があったので、購入して送ってくれたと言う。今時、行商なんていうやり方で、物を売る人が存在するんだと驚いた。確かに私の住んでいる街でも、時々露店で何かを売っている人たちがいる。しかし、行商と書いてこれを正しく「ぎょうしょう」と読める若い人がいるだろうか、と思うぐらいだ。

 そのりんごが今日届いた。5キログラム入りの平べったい箱で、送り状を見ると送り主はりんご屋さんであり、知人の名前はなかった。ずいぶん気の利かないりんご屋さんだと思った。

 箱を開けると、手書きのメッセージカードが入っていた。なんだろうと目を通したら、りんごの行商をしていた人からの挨拶だった。ずいぶん丁寧な人だなと思って、読んでみて驚いてしまった。以下に、その原文を固有名詞を伏せ字にしてご紹介する。

(行商人の方からの手紙コピー開始)
 「世田谷の路上で行商中に、Sさまとご縁がありまして、C社さまへりんごのギフトのご注文を頂きました。大変格好の良い、素敵なS様の懇意のC社の皆様も、感性の光る愉快な方々なのだろうとお見受けします。そんな皆様にぴったりの、丁寧な仕事でみずみずしく育ったりんご、どうぞお愉しみください。クリエイションのお供となれましたら幸いです。また、別紙に保管方法と商品説明、当店のパンフレットを同封しました。一度お目通しくださると、いっそうりんごがお楽しみいただけると思います。 ムカイ林檎店 世田谷店 藤原」
(行商人の方からの手紙コピー終了)

 印刷された挨拶状なら分かる。私たちも、発送する絵本のパッケージには、産婦人科クリニックの院長先生のお名前で、挨拶状を作り同封している。もちろん、名前は1枚ずつ異なるが文章は共通である。

 この行商人の方は、知人であるSさんの名前だけでなく、わが社の名前も記載し、なおかつSさんの風貌やわが社の業務内容にも少し触れている。まさしく、オリジナルの手紙である。

 私自身は、全国に約5,000カ所程度存在する、産婦人科クリニックすべてに営業コンタクトをする準備をしている。できれば、院長先生の目に触れるアドレスを探し出し、ニュースレターの形で営業メールをお送りする予定だ。インターネット機能なしには考えられない手法である。もちろん、説明コピーはそれなりに工夫をするし、一度送って終わりではなく定期的にフォローアップする仕組みも考えている。

 以前から、WEBマーケティングをコーチングしている会社から、ほぼ毎日複数のメールを受け取っている。ある程度の基本は学んだつもりだが、セールスコピーライティングのテクニックなど、詳細なところまではまだ研究ができていない。相手が興味を持ちそうな文章を羅列し、最後に申し込みをさせるよう上手に動機付けをする。価格も、どーんと高く提示し、すぐにかなり割り引いた値段を示して興味を引く。最後は48時間限定の特別価格、といって画面上に残り何十時間何分何秒まで表示する。アメリカで確立された、セールステクニックなのだろう。

 興味を引き、関心を高め、あらゆるテクニックを使って購入させようとする。そこにはある種のパターンや公式があるのだろう。それと比較し、この行商人の方の挨拶状には、ハイテクの要素が見当たらない。しかし、手書きであり、顧客である知人の容貌や雰囲気に触れ、しかもわが社の業務内容も多少は分かった上で、なかなか憎い文章を書いている。

 この挨拶状を読みながら、正直に言うなら新鮮な感動を感じた。相手の心をつかみ、相手の心に訴える、相手の心を開く・ ・ ・計算しつくされた手法ではなく、素直に心に感じたままを書いたと思っている。私は即座にこの行商人の藤原さんのファンになった。

 とうとう藤原さんの携帯に電話は繋がらなかったが、会社の方から連絡があり、聞くとこのりんごの産地は青森県の大鰐だという。残念ながら、りんごの販売時期はもう終わりだそうだ。次は10月ぐらいまで待たなければならないという。

 そんな話を聞きながら、もうかなり前のことだが青森県の板柳町に何度も訪れたのを思い出した。板柳町は別名りんごの町と呼ばれている。りんごの産地であり、町をあげてりんごの生産と販売を支援している。りんご専用のまるで倉庫のような大きな冷蔵施設があり、年中出荷できる体制を作っていたと記憶している。

 藤原さんには、コピーライターとしての感性があると思う。芸術家としての素養がある人だと思う。調べると、この会社は京都にも販売店があるようだし、インターネットからも注文ができるようだ。しかし私は、リンゴを購入するときは藤原さんに電話をして、買わせていただこうと思っている。

 長年にわたって、営業が苦手な私はあれこれ苦労を重ねてきている。しかし今日は、りんごの箱に入っていた挨拶状を読み、マーケティングといわず、敢えて販売手法と呼びたいのだが、その原点を教えられたような気持ちだ。りんごに付加価値のついた贈り物だった。

 Sさん、どうも有難う。


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by hirune-neko | 2017-03-25 01:40 | 現実的なお話し | Comments(2)
Commented by 日本晴れ at 2017-03-25 02:08 x
お疲れ様です。

リンゴの行商やら、マーケティングのお話やらで、興味深く読ませて頂きました。

自分も思い当たるところで、夜のちょっと冷え込んだ時間に回ってくる焼き芋屋さんがいるんです。
「焼き芋〜♪」の放送を聞いて、ちょっと試しに表に出て買ってみたら、焼き芋のおじさんが「このお芋は栃木の農家の方から、JAにも出さないとっておきのお芋を仕入れているので、本当に甘くて美味しいんですよ」なんて口上を真顔で聞かされると、ついつい買ってしまうんですね。
実際に感動するくらい美味かったんですが、焼き芋のおじさんの自信に満ちた表情と、口上に語られる‘ストーリー’が惹きつけるんですね。

どんな業種でも、顧客にストーリーが伝わると受け入れられやすいというか、顧客はストーリーを欲している、ってところは強く実感します。

お師匠のライフワークも、‘ストーリー’を伴って上手く実を結ぶといいですね。 楽しみにしております。
Commented by hirune-neko at 2017-03-25 15:43
日本晴れさん

 コメントありがとうございました。その焼き芋とても美味しそうですね。この辺には、そういえば最近は焼き芋屋さんが出没しなくなっていますので、残念です。

 私自身は、長い間ずっと種まきばかりしてきたような気がします。でもさすがに、ようやく芽が出てきてとりあえずは、若気に育ちそうな予感があります。方向性はここまでくると、ぶれる事はありませんので、後は自然発生的に、共感の輪が広がることを望んでいます。

 引き続き、ご協力をよろしくお願いいたします。
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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