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昼寝ネコの雑記帳

創作「王家の憂鬱とネコの欠伸(あくび)」


Astor Piazzolla, Aconcagua, II. Moderato

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かつて、東ヨーロッパの東端に、
王政の国がひっそりと存在していた。
ヨーロッパ列強諸国による、
長期にわたっての領土拡張政策の影響を受けずに、
文字通り、目立たずに存在し
領土を侵されることはなかった。

地政学的には、周りを軍事的強国に囲まれており、
常に侵略・支配される可能性が高い国だった。

王家は世襲制だったが、代々の国王は皆、人格者であり
知恵に富んでいると同時に有能な戦略家でもあった。
入り組んだ峡谷が、天然の要塞にもなっていたが、
何よりも、国民の王家に対する敬愛の情が強く、
有事の際には、全国民が一致結束して戦った。
なのでいつしか、周辺の列強国はこの王国に
畏怖の念を持つようになり、どんな武将でも敢えて
戦いを挑むようなことはしなかった。

その高齢の国王が、原因不明の病に倒れた。
王家や臣民、国民の願いも空しく、
国王は還らぬ人となった。
国全体が、何日も喪に服したが、悲痛な悲しみは
いつまでも空しく国全体を覆っていた。

王国では、国王にもしものときは、第一子の男児が
王位を継ぐ習わしになっていた。
すでに五十歳を過ぎて間もない新国王は、
幼少の頃から病弱であり、国の政には関心が薄く、
ずっと独り身で過ごしていた。
音楽の才能を有し、楽を奏で作曲にも秀でていた。
後継者の、およそ統治者らしからぬ姿は、
亡き国王と王妃にとっての、唯一の心配であり続け、
国の先行きを思う、家臣たちにとっても
暗黙の憂鬱となっていた。

亡き国王には、何人もの忠実で有能・勇猛な家臣が仕えていた。
彼等は、この隙に乗じて他国の軍隊が攻め入ってくることを
懸念し、王妃に進言することになった。

新国王は幸いに、頭脳明晰であり直感力も鋭かった。
なので、家臣達は進言を受け容れた王妃の勅命により
連日、国の統治、諸外国との交易、国の防御などについて
新国王に進講することになった。

新国王の隠れた才覚に期待し、家臣達は心血を注いだ。
代々の国王の血筋である新国王には、やはり
受け継いだ才覚があり、徐々に頭角を現し始めた。
国内外の情勢を的確に把握し始め、ときに発する
鋭い問いかけに、家臣達が返答に窮することもあった。

いつしか新国王には威厳が具わるようになっていた。

進講を受けるとき、王座に座る新国王のヒザの上には
いつもネコがねそべっていた。
ネコはときどき退屈そうに欠伸した。
全身を白毛に覆われているのだが、両眼の周りだけが
真っ黒という、非常に特長ある顔立ちだった。
緊迫した内容の進講を受ける、威厳ある新国王と、
悪戯描きしたようなネコの顔つきは、
いかにも不釣り合いだったが、人との接触を好まない
新国王が、生まれたての頃から気を許し、可愛がっていた
ネコであることをよく知る家臣達に、違和感はなかった。

家臣達の努力の甲斐もあり、王国は平和裡に年月を重ねた。

ある日、新国王は家臣を集めて問い質した。
亡き国王に対する国民の、敬愛の情が深いことは
実感していたのだが、経験も浅く非力な自分に対して
国民がどのような気持ちを抱いているの知りたい、
ついては何か名案はないのか、と問い質したのである。

どの家臣の進言も、新国王が得心できる内容ではなかった。

現存する記録によれば、王国の起源はかなり古く、
紀元前の時代、ネブカデネザル王の捕囚を逃れた人々が
東へ東へと流浪の旅を続け、今の地域に定住することで
国を興したとされている。
古代イスラエルの時代に倣い、王国には代々世襲の
知恵者が仕えていた。

新国王はある日、その知恵者に謁見を許した。
新国王は、家臣と同じように問い質してみた。
すると知恵者は、このように答えた。

「王よ、この先、末永く国を治めるためには、
身分を隠し、誰にも悟られぬよう姿を変えて
民の中で3日の間、お過ごしになるといいでしょう。
その3日の間に、王はご自分にとって最も貴重で
得がたい宝物を得ることになるでしょう」

知恵者の言葉を、新国王は由とした。

*  *  *  *  *  *  *

その翌日、市場の外れにある古井戸の近くに
みすぼらしい身なりで、すり切れた布袋を担ぎ、
力尽きて座り込んだ男の姿があった。
道を行き交う人々は皆、せわしなく通り過ぎ、
誰も男に関心を払う人間はいなかった。

突然、小さな男の子が叫んだ。
「見て見て、このネコ。面白い顔だよ」
同じぐらいの年格好の女の子が続けた。
「ほんとだ。なにこの顔?ねえおじさん、
このネコの名前はなんていうの?」

無邪気な子どもたちの言葉に苦笑しながら
男は答えた。
「この子はね、アヒトペルという名前なんだよ」
アヒトペルは眼を開いて子どもたちを見たが、
迷惑そうな表情で大きく欠伸すると、
また寝入ってしまった。
余程ネコの顔が滑稽に思えたらしく、
子どもたちは男の側を離れなかった。

その時、男は視線を感じ顔を上げた。
女は観察するような視線を男に向けていた。
意志の強さが瞳に現れていた。
男の子も女の存在に気づき、いった。
「お母さん、このネコの顔、見て・・・」
「子どもたちが失礼をしました」
女は男に詫びの言葉を述べた。

最初は迷惑そうだったアヒトペルも、諦めたように
子どもたちの相手をしていた。

「この辺りではお見かけしませんが、旅の方ですか?」
「ええ、旅はまだ始まったばかりなんです」
「お疲れのようですね」
「馴れない旅を続けていますので、
まだまだ馴染んでいないようです」

明らかにみずぼらしい格好の男に対し、
意外にも女は、自分の家で休むように勧めた。
思いがけない申し出に男は驚いたが、
素直に従うことにした。

女と子どもたちの住む家は、質素で小さかった。
女は手際よく小麦をこねて瓶の油を混ぜ、
パンを焼いてくれた。
一緒に出された干しイチジクと一緒に、
焼きたてのパンを存分に食することができた。
様子を見ていたが、カメの粉は残り僅かであり
瓶の油も少なかった。

「ご親切にお礼を申し上げます。このような身なりの私に、
ご厚意を示してくださり、感謝の気持ちをお伝えします」
男は本心からそういった。
「この国では、寄留の人と旅人には親切を施すことが
昔からの伝統になっているんです。
国王や王家の方々も、率先してそのようにしています」
「ほう、国王ご自身も?」
「数年前に国王はお隠れになりました。
ご立派な方でした」
「国王が亡くなられたのですか?」
「ええ。今は新国王がこの国を治めておられます」
「新国王が?」
「王家の血筋のご子息ですから、立派に統治されると
誰しもが期待しています」

陽が傾いてきたので、男は礼をいい旅を続けようとした。
ところが女は制止した。
「失礼ながら、体力が弱っていらっしゃるようです。
亡くなった兄の部屋が使えますので、今晩ひと晩
ゆっくり休んでから出発なさい」

男は一瞬戸惑ったが、女に促されその厚意に従うことにした。

*  *  *  *  *  *  *

翌朝、男は礼をいい旅立とうとした。
どういうわけか、女はまた引き留めた。
余程不健康そうに見えるらしく、しきりに体力を案じ
せめてもう一日だけ休むよう強く勧められた。
本心から心配してくれる女の言葉に従うことにした。

女は少し出かけるといい、小さな包みを持って家を出た。

アヒトペルは、子どもたちにすっかりなついてしまい、
かわいがられていた。

しばらくして女は戻ってきた。
野菜や果物、粉や油、肉が入った包みを抱えていた。
自分の大切な何かを売り払い、市場で買ってきたのは
明らかだった。

女は決して多くは語らなかった。
しかし、兄が戦死してしまい、残された義理の姉が
失意と育児の疲れが元で伝染病に負け、亡くなったこと。
そして、残された小さな子どもたちを自分が引き取り、
育てていることを、ぽつりぽつりと語った。

国のために戦死したのだが、国王に対する不満はいわず、
かえって、国民のために犠牲になれたことを
誇りに思うと語った。

やがてまた陽が傾いた。
水浴を勧められ、亡くなった兄のものだがといいながら、
着替えを用意してくれた。
素直に従うことにした。

明日の朝は早くから仕事に出てしまうので、
ゆっくりしてお好きな時間に出発なさい、と
女はいった。
旅の途中で食べられるものを用意して、
テーブルの上に置いていきますから、ともいった。

*  *  *  *  *  *  *

朝起きると、すでに女の姿はなかった。
子どもたちはまだ寝ているようだった。
テーブルの上には、女がいったように食べ物が置いてあった。

男は紙を取りだし、お礼の言葉を書き留め
銀貨3枚を一緒に置いた。

すり切れた布袋を肩にかけ、ネコを抱き上げると
その家を後にした。

しばらく歩くと、男は振り返り、しばしその家を
懐かしんだ。

*  *  *  *  *  *  *

その夜、新国王は寝所の窓から明かりが点在する
街並みを見下ろし、何やら思案していた。
なかなか寝付かれず、早朝になり空が白み始めた頃
ようやく眠気に包まれた。

新国王は、数日前の知恵者の言葉を反芻してた。

「王よ、この先、末永く国を治めるためには、
身分を隠し、誰にも悟られぬよう姿を変えて
民の中で3日の間、お過ごしになるといいでしょう。
その3日の間に、王はご自分にとって最も貴重で
得がたい宝物を得ることになるでしょう」

最も貴重で得がたい宝物・・・。

新国王はその瞬間、珍しく非理性的な行動に出た。
使いの者を、あの女の家に向かわせ、子どもと一緒に
謁見しに来るよう命じる手紙を持たせたのだ。

いきなり国王からの使者がやって来て、
謁見するよういわれたら、さぞかし驚くだろうが
新国王は論理的に考えられず、このときばかりは
直感的な行動に出てしまっていた。

女が謁見に来たとして、果たして何をいおうというのか、
自分でも判断がつかない状態だった。

やがてしばらくして、女が子どもたちを連れて
謁見に来たとの報せがあった。
女と子どもたちは、緊張の表情で謁見の部屋の
床に跪いていた。
国の習わしで、国王に謁見する時は決して国王に対し
視線を向けてはならなかった。
なので三人とも、顔を下に向けたまま
新国王の到着を待っていた。

新国王は、謁見の部屋に向かいながら、依然として
何を伝えたらいいのか決めかねていた。

新国王の到着を待って、謁見の部屋の扉が開けられた。
新国王は、女と子どもたちの姿を認め、
謁見の椅子に向かった。

彼が席に着くと、侍従の者が声を発し、女と子どもたちは
深々と頭を下げた。

新国王は家臣たちが見守る中、一体自分が国王として
目の前の国民に対し、何をいうべきなのか、
まだ逡巡していた。

そのとき、いつものように新国王の膝の上で
眼を閉じて寝そべっていたネコが、突然予想外の行動に出た。
新国王の膝から飛び降りると、そのまま駆けだして、
床に跪き頭を下げている二人の子どもたちに向かったのだ。
さらには子どもたちに擦り寄り、甘えた声を上げた。

家臣たちはすっかり驚き、一瞬どのように対応していいか
我を失ってしまった。
子どもたちも何が起きたのか、分からなかったのだが、
全身が白い毛で覆われ、両眼の周りが真っ黒の
特長あるネコを見て、思わす声を上げてしまった。

「お前はアヒトペル!」男の子が叫んだ。
「どうしてお前がここにいるの?」女の子も叫んだ。

さすがに女は視線を新国王に向けた。
あのみずぼらしい男の姿と、謁見の椅子に座す
新国王の姿を重ね見て、ようやく得心がいった。
どのような理由で、なんのために身分を偽り、
姿を変えて街中に現れたのか、
その理由は分かろう筈もなかったが、
今、目の前で何が起きているのかは理解することができた。

*  *  *  *  *  *  *

「その3日の間に、王はご自分にとって最も貴重で
得がたい宝物を得ることになるでしょう」
という知恵者の言葉どおり、新国王は国を治めるという
難事業の佳き助け手と出会うことができた。

長い間続いていた、王家と家臣の憂鬱はいつしか雲散霧消し、
王国は今もなお、東ヨーロッパの東の外れで
ひっそりと、しかし平和な国として存続している。

それと、ネコのアヒトペルは未だに長寿健在であり、
日に何度も欠伸をしながら、新国王夫妻の子どもたちの
遊び相手をしている。
・・・決まって迷惑そうな顔をしながら。


*直後の追記:最後までお読みくださり、お礼を申し上げる。
 ようやくできあがったものの、
 きちんと推敲しようとすると、公開がいつになるやら
 皆目分からないので、誤字脱字を気にせずに、
 とにかく公開を優先することにする。
 なかなかまとまった時間がとれない日が続き、
 難儀をしていたが、久しぶりに創作短編を書くことが
 できたので、何よりも嬉しく思っている。
 とりあえずは出来不出来よりも、書き上げられたことに
 満足したいと思う。


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by hirune-neko | 2015-06-19 02:03 | 創作への道 | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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