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昼寝ネコの雑記帳

初めて訪れた八王子の母校


Charles Aznavour L'amour C'est Comme Un Jour

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卒業証明書と成績証明書が必要になったので、
八王子に移転している母校に初めて行って来た。

立川で多摩モノレールに乗り換え、
目指す「中央大学・明星大学前」駅で降りると、
そこはすぐ大学のキャンパスで、守衛さんが立っていた。
事前に電話で学部事務室の所在位置を聞いていたが、
念のため、道順を教えてもらった。
キャンパスの一番奥だそうで、かなり歩いた。
多摩丘陵なので階段が多く、降雪の跡がまだ残っていた。

腰痛はまだ完治していないが、腰痛ベルトをきつく巻き、
ゆっくりと歩き始めた。

申請してしばらく椅子で待たされたが、無事に
証明書2通が発行された。
「ああ、ちゃんと卒業してたんですね」
というと、事務の若い女性がおかしそうに笑った。

大学に入学したのは、70年安保闘争のピーク時で
東大の入試が中止された1969年だった。
大学はロックアウトされ、機動隊が囲んでいた。

授業なんてロクに出席しなかったし、試験は
ほとんどレポート提出で評価されたので、
しかもほとんどは寮生仲間に作成してもらったため、
一体何を勉強したのか皆目思い出せない。

なので、成績証明書はカフカ(可と不可)全集だろうと
チラッと目を通してみた。
意外と可が少なく、優と良だったので驚いた。

フランス語が優だったので笑ってしまった。
出席日数が不足したため、再履修の連続で普通は
2年間で修了するところ、休学期間を含むと
5年間履修したことになる。
最後の年は、NHKフランス語講座の講師だった
朝倉季雄先生の授業だった。
手を抜かない先生で、教室内を歩きながら、
学生にフランス語を音読させた。

私の前で朝倉先生が立ち止まり、読むようにいわれた。
「je me suis lève」(という文章だったと思う)
フランス語は動詞の格変化が多いので、もしかしたら
インチキ文章かも知れないが、「音」は確かに
こんな内容だった。今でも鮮明に憶えている。

私のフランス語(もどき)を聴かれた先生が、
私を覗き込むように、意外そうな表情でおっしゃった。
「キミはフランスに留学していましたか?」

笑いをこらえるのが大変だった。
当時の私は、カミュからサルトルに傾倒しながら、
アズナブールに聴き入る毎日だったので、
割合と耳だけは良かったように思う。
アメリカ人からは、私の英語がフランス語訛りだと
不思議がられた。
あるとき、フランス人に新聞を読んでみろといわれ
(スラスラと?)読んだところ、意味はちゃんと
理解できてるんだろう?と質問された。
いや、まったく意味不明だと答えると、
信じられないという表情になったのを、
今でも懐かしく憶えている。

お茶の水の当時の喧噪とは、比べものにならない
多摩丘陵の自然溢れる静謐さの中、いつのまにか
空がすっかり暗くなった帰り道を辿りながら、
46年前に入学してからの、自分の人生を振り返っていた。

誰だって悔いのない人生はないだろうと思う。
私は実に間違いだらけの人生だった。
同時に、居直り続けてきた人生でもあった。
でも、地位や名誉、権力や財力には腰をかがめず
正体と意味不明の自分の哲学を持ち続けてきたと、
それだけは自信をもっていえる。

そして、どんなに失敗しても挫けそうになっても
ずっと前方を見つめながら前進してさえいれば、
失敗も挫折も、自分自身の心の養分となるのだと
今この歳になって実感している。

現代という逼迫感の強い特異な時代を生きるには、
これまでの思想・哲学の知識だけでは
乗り越えることが困難であり、何か別の要素が
不可欠だと思っている。

大学生の頃も40数年を経た今も、自分の本質が
まったく変わっていないなと実感できた一日だった。

少しばかり、感傷的な気分になりながら、
モノレールを降り、立川駅のコンコースで、
キャラメル味のポップコーンを見つけ、買ってしまった。

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by hirune-neko | 2015-02-03 22:32 | 心の中のできごと | Comments(0)
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妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在

by hirune-neko
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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