昼寝ネコの雑記帳

石狩街道に雨が降る



Astor Piazzolla - Il pleut sur Santiago (Bandoneon) (3 - CD3)



人気ブログランキングへ

石狩街道に雨が降る

あっという間に、3泊4日の日程が終了し、
夕方の便で、新千歳空港から羽田に向かう。

この数日の間に、何人の人たちが
母に差し入れを持ってきてくれただろうか。
秋田県産の、「もろこし」というお菓子、
佐賀県産のごまサブレ、夕張メロン、洋菓子屋さん
特製のオムレツ、煮たカレイに焼いたカレイ、
炊き込みご飯、ポテトサラダ、自家菜園で採れた
ホレンソウ、みつば、グリーンアスパラ・・・
もうこれ以上は思い出せない。
実に有難いことだ。

独り暮らしの母には、たくさんのサポーターがいる。
なぜか?
それは母の人格を慕ってのことではなく、
いい年をしてもまだヨタヨタして頼りない息子の
私のことが心配で、なかなか死ねない母に
同情してのことだ。と、そのように思う。
たぶん、そうなのではないだろうか。
もしかして、そうかもしれない

だって、母の日も何もしない私に代わり
何人もの人が、生花や鉢植えを贈ってくれた。
私は戸籍上の息子ではあっても、いないも同然の
不肖の息子だというのが、皆さんの共通認識のようだ。
まあ、当たらずとも遠からず、だ。

昨日定期検診に連れて行った病院は、
産婦人科病棟で、私の文章の絵本「大切なわが子へ」を
採用してくれている。なので、ついでになってしまったが、
物流管理課の担当者の方と、病棟に挨拶に行ってきた。

呼吸器の先生は、「う〜ん、あんまり変わってないねぇ」
と、レントゲン写真に映る、肺のがん細胞について説明する。
息苦しさを訴える母には、
「年とると、みんなそうだからねぇ」と、慰めてくれる。
「状況が悪いと、酸素ボンベだけど、まだ大丈夫だね」
先生からそういわれると、大丈夫な気がする。

ペースメーカーの機能検査を終えて、
循環器の先生は、
「まだ5年以上、寿命がありますね」といった。
母の寿命ではなく、バッテリーの寿命だ。
ここでも母は、去年よりずっと息苦しくなったと訴える。
先生は、「ペースメーカーはちゃんと機能してますよ」と
断言する。
いや、ペースメーカーの機能より、心臓の機能が心配だ、
となおも食い下がる私に、
「では、エコーで心筋の収縮力を検査しましょうか?」
「はい、お願いします」・・・というやりとりで、
近々、検査を受けることになった。
母は、「お前は私に断りもなく、なんで勝手に決めるんだ」
と小言をいっているが、そんなのお構いなしだ。

一応は目立って悪化しているところもなく、
あとは年齢相応に、徐々にゴールに向かうことになる。

年に一度の定期検診で札幌に来ているが、
毎年決まって、来年も来る機会があるだろうかと考える。

今も母は台所で洗い物をしている。
あれもこれもと満腹の私に、次々と食べ物を出してくる。
ついには、出し忘れたカシューナッツを持ってきて、手を出す私に
「これだけ食べたのに、まだ食べるの?」と驚く。

食卓のおかずも、食べる順番にまで口を出す。
あとで片付けようと思っていたのに、さっさと手を出し
「高齢で病気の母親に、こんなことまでさせて、親不孝者」
と憎まれ口をきくことしばしば。

初日には、あと何泊しなければいけないのかなと考えたが、
こうして最終日は、あっという間にやってくる。
本当に、来年まで寿命があるのかなと、ふと思う。
これが89歳の母との、今生の別れになるのかもしれない。
そう思うと、なんとなくセンチメンタルな気持ちになる。

口を開けば葬式の話題だし、もうすでに
他界するのが現実的な視野に入りつつある。
人の気配がなくなったこの家に、いつか私が独りで来るときには
それなりの喪失感を感じるのだろうなと、そんな気がしている。

葬式を出しに来るだけの体力に自信がないから、
当分はまだ生きててくれ、というとケタケタと笑っている。
いよいよ出発の時間が迫ると、妙に懐かしさが甦る。
もしかしたら、本当に今日で今生のお別れなのかもしれない。
いや案外、これから乗る飛行機が事故に遭い、
私の方が先に他界するのかもしれない。

人生なんて,いつ何が起きるか分からないものだ。
誰が死んでも、人の心には雨が降るのだろう。





人気ブログランキングへ
[PR]
by hirune-neko | 2014-05-20 10:28 | 心の中のできごと | Comments(4)
Commented by El Bohemio at 2014-05-20 11:18 x
昼寝ネコさん、

親孝行を充分に出来ましたね。
Commented by hirune-neko at 2014-05-20 11:43
El Bohemioさん
母がため息をつきながら、「私の方が上手だから」と言いながら、荷造りをしてくれています。お前は私の子どもみたいでない、だらしない、とブツブツ言いながらストレス解消をしています。
Commented by 静御前 at 2014-05-20 15:59 x
日ごろ手を焼く人がいないので、本当はやりがいを感じて
いると思いますよ。  ある意味親孝行ですかね~?
ハグして名残を惜しんだことでしょう。

年齢を考えたら 後ろ髪を引かれるおもいですね。
またお元気な内に顔を見せてあげられるよう
お身体大切に そしてお仕事頑張って下さい。
Commented by hirune-neko at 2014-05-20 22:06
ハグですか?そんな行動に出たら、お互いに気色が悪い感じです。孫娘となら喜んでしちゃいますけど。りんごせんべいを有難うございました。青森だけでなく、岩手でも作っているんですね。母と一緒にいると、母の尺度でビシビシいわれますので、これでもかなり気を張っているんですよ。じわじわ疲れが出てきました。
<< ニュートラルなくつろぎの時間 羽田〜新千歳空港フライト幻想曲 >>



妄想から始まり、脳内人格を与えられた不思議な存在
検索
ライフログ
最新の記事
最新のコメント
日本にいれば是非行きたい..
by ロマラン at 02:40
日本にいれば是非行きたい..
by ロマラン at 02:39
Nonnieさん ..
by hirune-neko at 11:53
きいろ香さん ひさ..
by hirune-neko at 02:12
ご無沙汰しています。 ..
by きいろ香 at 22:59
記事ランキング
以前の記事
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
お気に入りブログ
ファン
ブログパーツ