昼寝ネコの雑記帳

クリスマスの遺言


Astor Piazzolla - Choral, Suite Punta del Este


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クリスマスの遺言


このクリスマスの時期に、私は自分の殻を脱ぎ捨て、
新たな自分として生き直そうと考えた。
きっかけはなんとでもいえる。

ひとつは、ピアソラの少々長いこの曲を
じっくり聴いてみたことによる。
この世が終わり、廃墟と化したかつての栄華の街々。
取り憑かれたように人を押し分け、辿り着いた虚空。
灰燼に帰した不毛な栄誉と虚言。
果てしなく拡がる静謐な空間に独り立ち尽くすと、
誰もいないはずの背後に視線を感じる。
そこには悲しみを湛えた物言わぬ黒い瞳。
見捨てた人々の心の痛みが一気に押し寄せる瞬間。
全てが終わったはずなのに、終わってはいない。
ここが残酷な出発点となることを知る人がいる。

もうひとつは孫娘に贈った絵本の一シーン。
旧約聖書では、たくさんの種類の動物がひとつがいずつ
箱舟に入れられる、と説明されている。
絵本に描かれているのは、箱舟に招かれずに
残された動物たちが、方舟に入っていく仲間を
寡黙に見送る後ろ姿。
その後に襲う洪水に覆い尽くされることを
知っていたのか、あるいは感じていたのかは知らない。
多くの屍を乗り越えて突き進む勝者の足許には、
名も知らぬ人々の涙と苦痛が溢れている。

さらにもうひとつは、目に見えない使者の囁き。
それは勧告であり、あるときは警告でもある。
助言であり、励ましであることもある。
私の魂が、世俗から厭世的に離れて久しい。
あるときは息が苦しくなり、体中を不安が駆け巡る。
脈絡のない覚醒が、先鋭化した論争や
不毛な営みを遠ざけてきた。
ひとつひとつの空虚な道標に導かれ、
ある日突然視界が拓ける予感を持ちながら
くる日もくる日も、新たな遺言を胸に刻んでいる。


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by hirune-neko | 2013-12-24 22:07 | 心の中のできごと | Comments(0)
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昼寝ネコのプロフィール
・1951年
 小さいころ、雨ざらしで目ヤニだらけの捨てネコを拾ってきては、親から小言をいわれる。小学校低学年の音楽と図工は通信簿が「2」。中学からバスケを始めるも、高校2年で部活を止め、ジャズ喫茶通いが日課となる。授業が退屈でがまんできず、短編小説を書いては授業中のクラスで強制的に回覧させ、同級生の晩学を妨げることしばしば。早く卒業してほしいと、とくに物理の先生が嘆いていたようだ。ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンに心酔。受験勉強をすっかり怠り、頭の中は浸水状態。

・1969年 
 中央大学経済学部入学
 まぐれで合格するも、東大安田闘争・70年安保闘争などの影響で神田界隈はマヒ状態。連日機動隊がやってきて大学はロックアウト・封鎖の繰り返し。すっかり希望を失い、大いなる時間の浪費が始まる。記憶に残っているのは、ジャズを聴いたこと、大学ノートに何やら書きなぐったこと、ぼーっと考えごとをすること。数限りなく、雑多なアルバイトをやったこと。一応は無難にこなした・・・はずだ。いろいろ本を買いあさったが「積ん読状態」で、ただ、アルベール・カミュの作品には衝撃を受ける。それと、寮生活だったので、嫌いだった納豆を食べられるようになったのは、収穫だった。

・1974年 
 同大学卒業
 1年留年し、5年かけてなんとか卒業。理由は単位を落としたからだが、結局5年間の学生生活で授業に出席したのは、おそらく数十日ではなかったろうか。毎回レポート試験で単位をいただいたが、ほとんどは寮生仲間に「餃子ライス」を報酬に、作成を代行してもらった。今さら卒業証書を返還せよといわれても、もう時効だろう。白門同窓生の恥部であることは、重々自覚している。
     
・2006年 
 現在に至る
 プロポーズしたら1週間待ってくれという。そんなに待てないといったら、翌日ハート型のケーキを焼いて待っていてくれた。世の中には奇特な女性がいるものだ。おまけに4人も子どもを産み育ててくれて・・・育児放棄の夫に寛大な女性で・・・おまけに子どもたちは・・・三人の息子と息子のような娘が一人なのだが・・・父親を反面教師として、なんとか実社会に順応している。大したものだ。わが家には、「親の七光り」など存在せず、「子の七光り」で恩恵をいただいているようなものだ。

・2010年 宇宙の旅
 人生も、それなりに辛抱して生きていれば、悪いことばかりではないなと思っている。2010年には、どこで何をしていることやら。宇宙のチリになっているのか、地中に埋もれているのか、はたまた相変わらず時間を見つけては昼寝三昧なのか、こればかりは全く予測がつかない。

・現在
 このブログを始めた頃、2010年なんてずっと未来の存在だった。でも、気がついてみたら2010年はすでに過去のできごとになってしまった。2013年になり、もうじき2014年になろうとしているこの時期に、改めてブログに書き残された何編もの雑文が、自分の心の軌跡という遺産になっていることを感じている。6年前に「昼寝ネコの雑記帳」という単行本を出版した。最近は「続・昼寝ネコの雑記帳~創作短編集」を発刊しようと、密かに機会を窺っている。
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